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71話 ジャックの居場所な件

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 「うっ。臭いなぁ」


 戦闘が終わり、鼻に入ってくる屍臭が目立つようになってきた。


 屍臭。


 つまり、この地下室にはジョージ以外の屍が存在する。


 俺は地下室の奥に進んだ。


 理由は特にない。


 屍を見たくなったわけではない。


 金目のものを盗ろうというのでもない。


 本当に、ただ、なんとなく。


 コツ、コツ、コツ


 地下はとても静かで、俺の足音を認識できるほどだった。


 いくらか歩くと、床にメモ帳が落ちていた。


 間には、ペンが挟まっている。


 それを拾って読む。


 それには、あまり重要なことは書いてない。


 誰を捕まえようとして、誤って殺してしまったか。


 どこで捕まえた誰をどのようにして死ぬ直前の状態にしたか。


 そして、どのような表情だったか。


 そんなことがまとめてあるだけだ。


 俺は最後の欄の次に書き加える。


 ジョージほど詳しくは書かない。


 “ 場所 メーア町の酒場の地下室

  人物 ジョージ

  方法 ナイフで刺す

  最後の表情 満足”


 『「満足」、ですか。随分と都合のいい考え方ですね』


 「そうだな」


 満足であってほしい。


 ただの俺の願い。


 俺はメモ帳をポケットに押し込み、先に進む。


 コツ、コツ、コツ


 ギュァァァン


 地下室の奥の扉を開けると、周りの雰囲気が一気に変わった。


 先程までとは比べ物にならない屍臭。


 両側には、刑務所のような鉄格子付きの畳二畳ほどの部屋が幾つもある。


 そして、ほとんどの部屋には、かつて人であったものが入っている。


 地下は湿気が多いため、屍には苔だのカビだのが生えまくっている。


 なぜ、死体の処理をしなかったのだろう。


 死体を処理した方が、沢山の人間を押し込むことができる。


 しかし、彼はしなかった。


 面倒だったのか。


 死体の表情も好きだったのか。


 それとも、死んだ人を忘れないという、彼なりの供養か。


 俺ができるのは推測のみだった。



 俺は階段を上がった。


 それでも、鼻についた屍臭はすぐにはとれない。


 酒場の外に出ようとすると、外には大量の人間がいた。


 当たり前か。


 俺は地下室に行く時、隠し扉を閉めていなかった。


 また、扉は壊したまま。


 中から漏れ出る屍臭。

 

 そして、何者かに壊された扉。


 明らかに、事件現場である。


 「中から男が出てくるぞ!捕えろ!」


 衛兵のような男が命令し、それに合わせて抜刀した何人かが俺に向かってくる。


 俺は彼らを地面に倒れた扉をぶん回して撃退。


 体調も精神も良くはない今の俺には、ロングソードを使って殺さない自信がなかったからだ。


 別の衛兵が俺を取り囲む。


 しかし、俺はアカリのいる方向に直進する。


 先程の扉による攻撃に恐れを抱いたらしく、俺が目の前に来ても、衛兵たちは攻撃してこなかった。


 「エルン。おかえり」


 夕方、俺は野宿地に帰ってきた。

 

 ソフィアが出迎えたのは意外だった。


 「アカリはどこ行きました?」


 「多分、狩りにいった」


 「そうか………」


 「で、『切り裂きジョージ』は殺した?」


 「ああ。これはそいつの持ち物です」


 ポケットの中からメモ帳を取り出す。


 「………エルン。お手柄」


 「そうか?」


 「うん」


 別に、手柄が欲しかったわけじゃないのにな。


 「エルン。臭いよ」


 俺の体には、屍臭が染み付いているのだ。


 臭くないわけがない。


 「……後で水浴びにでも行きますよ」


 「私が洗おうか?私、何もしてないから」


 違う。


 俺が何もさせなかったんだよ。


 自分のためにな。


 「遠慮しておきます」


 「そう……」


 「’あ!お兄さん!おかえりなさい!’」


 アカリが帰ってきた。


 うさぎを5匹持って帰っている。


 「’ただいま’」

 

 「’どうしたの?元気ないよ?’」


 俺は地下室で屍を見た時、何も思わないようにしていた。


 感情に飲み込まれそうだったから。


 今はその状態を解いており、遅れて感情が迫ってきている。


 元気なわけがない。


 「’いろいろ……あったんだよ’」


 「’そう……。お疲れ様’」


 それだけ言って、アカリはウサギを火魔法で焼いた。


 そして、1匹俺に差し出す。


 俺は、何も言わずにそれを食べる。


 ………そこまで臭くはなかった。


 いや、臭く感じなかった。


 ウサギ肉の臭さが屍臭にかき消されたのだろう。


 「’いけるな’」


 「’本当?よかった!’」

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