70話 vs切り裂きジョージな件
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☆
次の日の、まだ陽が昇りきっていない頃。
相変わらず熟睡しているソフィアを起こす必要はないと判断し、アカリだけに指示を出す。
「’アカリはソフィアと待機。俺は、行ってくる’」
「’あの町に行くの?やめた方がいいよ’」
「’『切り裂きジョージ』の正体がわかったからな。すぐに処理してくる’」
「’何でボクを置いていくのさ’」
「’ソフィアを守ってもらわないといけないからね’」
これが全てではない。
アカリは目立ちすぎること。
アカリとジョージは恐らく相性が悪すぎること。
その他諸々も考えた結果、おいていくことにしたのだ。
「’俺が夜までに戻ってこなかったら、王宮に帰ってくれ’」
「’そんな冗談言わないでよ!お兄さん!’」
アカリの目は湿っている。
冗談?
全然冗談ではない。
何事も、最悪な結果を考えておかないといけないからな。
「’まあ、死ぬつもりはないけどね。留守番よろしく’」
「’………いってらっしゃい。絶対に帰って来て’」
そんな顔で、そんな事を言うな。
フラグになるから。
出来れば、笑顔で送り出して欲しかったな。
☆
俺はジョージのいた建物に近づいた。
中に、人の気配はしない。
だが、確実にいる。
扉には鍵がかかっている。
俺はピッキングができないので、扉ごと壊す事にした。
剣でではない。
足でだ。
バギャン
カラン……カラン……カラン
ドアベルが地面で鳴っている。
カウンターの後ろに行き、床のカーペットを捲る
そこにあったのは、扉。
それを開けると、アカリは通れないほどの幅が狭い階段が地下にのびていた。
そして、漏れ出す少しの屍臭。
はあ。
始めるか。
シャァァァァキンッ
腰のロングソードを抜く。
そして、恐る恐る階段を下る。
階段の底には光がさしている。
そして、人影も見える。
『マスター!右ッ』
「え?」
グサッ
なぜか、横腹が熱い。
手で触れると、水気がある。
舐めて感じる鉄の味。
「………っ!やっぱり、お前か!」
「よお、兄ちゃん!」
俺は人影に気を取られすぎていた。
階段を下りきった先に、ジョージがいると思っていた。
階段の途中に窪みがあるなんて、気づかなかった。
俺は、横腹を押さえずに階段を下りきる。
狭い階段では、ロングソードを振れないからな。
「なんで、首を刺さなかった!それなら、俺を一撃で殺せただろう!」
「なんだい、兄ちゃん。自殺志願者かい?」
「違う!お前が人を刺す理由がわからないんだ!」
なぜ、人を刺すか。
大抵は、相手を殺すためである。
「人の苦しむ顔が最高だからに決まっているだろう?人が死ぬ前に見せる顔ほど、そそるものはない」
………。
だからか。
酒場のマスターがジョージだと知った時、俺らが寝ているうちに刺すはずだった思った。
コイツは、人を殺すのが目的なのではない。
人が死ぬ前の顔を見ようとした結果、副産物として人が死んでしまったというわけだ。
「昨日のは、自作自演だよな?」
「おうよ。俺の存在を嗅ぎ回ってる奴を町から追い出そうと思ってよ。まんまと引っかかってくれたなあ」
はあ。
もう、いいか。
「死ね」
ヒュンヒュン
「おっと」
ジョージは俺の斬撃を後ろに跳んで避ける。
そして、服の中からナイフを取り出し、俺に投げてきた。
そのナイフは毒付き。
1本でも刺さるとまずい。
もう、一回刺されているが。
おかげで、横腹からの血が止まらない。
失血死する前にやるしかないな。
俺は、ナイフを全て捌いた。
しかし、その間に距離を詰めてくる。
………。
ブォーン
俺は、ロングソードを投げた。
「おっと、危ないねえ。兄ちゃん!」
そして、床に落ちているナイフを拾う。
階段ほど狭い空間ではないが、ロングソードを振るには狭いのだ。
そして、ジョージに突撃。
ジョージは俺の胴にナイフを何本か刺すが、そのまま突撃。
そして、ジョージの首を狙う。
これは決して、冷静さを失ったが故に行った蛮行ではない。
ジョージの言った言葉が本当なら、俺を一撃で殺すことはしない。
長時間かけて殺そうとするはず。
つまり、突撃しても、致命傷は負わないはず。
グサッ
……刺したのは、肩。
ジョージは、地面に倒れた。
肩からは、俺の出血量を圧倒的に上回る量の血が流れていた。
深さ的に、肺に届いている。
「はぁ、はぁ。やるな、兄ちゃん」
文字の通り、虫の息である。
「じゃあな」
俺は、もう一度首元を狙う。
今度は、ジョージは止まっているので、確実に殺せる。
「待ってくれ!」
今更命乞いか?
「はぁ、そこの……机の上に鏡があるだろう?それで、俺に……俺の顔を見せてくれ……」
………ああ。
そういうことか。
俺は鏡を持ち、鏡面をジョージに向けた。
「ああ……。死ぬ前の俺の顔も最高に………」
ジョージは、鏡を見つめたまま死んだ。
気づけば、俺の血は止まっている。
きっと、ジョージが俺に刺したナイフの中に、血を止める作用をを回復させる薬を塗っているものがあったのだろう。
その理由は、ジョージしか知らない。
俺はジョージの瞼を閉じ、壁に縋らせた。




