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66話 4回目な件

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 比較的、2年生の最初の1ヶ月は平和だった。


 学校に登校して、授業を受ける。


 食堂で昼食をとり、また授業を受ける。


 ちなみに、昼食は平民用のを食べている。


 何でかって?


 周りの目ってやつだな。


 いつぞやの実践魔法演習から考えてわかるように、俺のことを「平民」の希望と考える人もいる。


 その希望が、貴族になったからって急に豪華な食事をとりだしたら、彼らはどう思うだろうか。


 少なくとも良い印象は与えないだろう。


 また、俺は成り上がり者である。


 俺の周りの人間は普通に接していてくれているが、他の貴族からすると狙い目でもあり、目障りな存在でもある。


 平民と貴族の両方を敵に回すわけにはいかないのだ。


 放課後は、素振りと弓の練習。


 素振りはもちろん、サーシャに勝つため。


 あれから一回も勝てていない。


 パーリェン村でのサーシャはどれだけ手加減をしていたのだろう。


 弓の練習は遠距離攻撃の手段を磨いておきたいからだ。


 銃なんか使うと目立ちすぎるからな。


 弓はこの世界でもまだ武器として使われているし、目立たないのだ。


 時々ストックが「俺に矢を撃て」と言う事がある。


 剣で矢を弾く練習らしい


 もちろん、ガチで狙う事はしていない。


 多分、脳天を貫通してしまうからな。


 ストックは、2週間くらいで認識した矢のほとんどを弾けるようになった。


 目が追いついてきたのだろう。


 すごいなあ。


 模擬宇宙戦は、なんというか………しょぼかった。


 俺は観客船から見ていたのだが、実戦を経験しているので、緩く感じた。


 観客が歓声をあげていた理由すらもわからない。


 所詮は、模擬戦なのだ。


 ただ、一つ言える事は、ラザフォードの装備の刷新が早いということである。


 模擬宇宙戦で用いられたほとんどの魔導船のファイヤーボールの射程は50kmだった。


 つまり、1年もしない内にレンツの技術を取り入れたということだ。


 早かったな。


 

 「エルン男爵。学園長室におこしください」


 俺は、学園長室に呼ばれた。


 多くて年に2人くらいしか呼ばれない場所に行くのは……4回目だ。


 今度は、何の用だろうか。


 最初は国王の謝罪の件で、他の2回はレンツ王国との戦いの件。


 二回目は呼ばれたのではないが。


 全て国の命運に関わっている。


 なんか、嫌な予感がするな。


 厄介事な気がする。


 コンコン


 「入っていいですよ」


 はあ。


 学園長も態度を変えたか。


 前は、「入りたまえ」だったのに。


 ガチャリ


 「男爵、よく来てくれたな」


 「はあ、またですか」


 そこにいたのは、国王。


 それと、ソフィア。


 学園長は相変わらず端の方にいる。


 「『また』とはなんだ。『また』とは」

 

 だって、そうじゃん?


 普通は、学園長室に国王はいないんだよ?

 

 俺の時がおかしいだけ。


 「貴方が、エルン?」


 ソフィアの声は、冷たい。


 まるで、俺を人間とすら考えてないような声。


 「メモメモ」と同じだな。


 「はい」


 「私、ソフィア」

 

 知ってるよ?


 「存じ上げております」


 「男爵、君にやってもらいたいことがあってな」


 そりゃ、ないなら呼ばれないはずだからな。


 「なんでしょうか?」


 「『切り裂きジョージ』の事件を知っているかね?」


 うわ。


 知ってる。


 「切り裂きジョージ」は、以前話した凶悪犯罪者のこと。


 確かに、そんな時期だな。


 あの事件を俺に対処しろと?

 

 いや、それならソフィアがここにいる理由がない。


 まさか………。


 「この事件の処理を娘にさせることにしたのだが、君には娘の補助兼護衛をしてもらおうと思ってね。その期間中は学園に行かなくてもいいから」


 俺に、メーア町の人間と敵対しろって言ってる?


 俺が補助についたところで、ソフィアは焼き討ちをするだろう。


 実際、隠れている人間を処理するには、隠れる場所をなくすのが手っ取り早いからな。


 これ以上に効率の高い方法をソフィアに言わなければいけないのか。


 もしくは、脅すか?


 巻き添えで俺も暗殺されるのはごめんだぞ?


 「それは、お願いですか?王命ですか?」


 「王命だ」


 断れないのか。



 国王は「2人で作戦を考えたまえ」とか言って、学園長と一緒に廊下に出てしまった。


 「エルン。メーア町を焼けばいい」


 ほぉら。


 始まったよ。


 ソフィアのこの意志を曲げなければ、俺も暗殺される可能性が出てくる。


 「いや。それはやめておきましょう」


 「何故?」


 保身のためです、とは言えないんだよなぁ。


 「町人から恨まれますよ?」


 「関係ない」


 「殺されるかもしれませんよ?」


 「私は私のするべきことをするだけ」


 自分が死ぬのも厭わないのか。

 

 普通なら、命惜しさに折れると思うのだが。


 なんて言おうか。


 ……ちょっと、名前を借りるぞ。


 「ソフィアが死んだら、ニックが悲しむのでは?」


 ブラコンなら、これでうまくいくこともある。


 どうだ?


 「構わない。兄様が生きていれば、私が死んでもいい」


 ………。


 勝ったのでは?


 「なら、町人の恨みを貴方だけではなく王家が買うとしたら?君の大好きなニックも殺されるかもしれませんよ?」


 「なら、メーア町に関係がある人たちも皆殺しにすればいい。死んだ人は、恨めない」


 そうくるか。

 

 これは、ブラコンの域を超えている。


 狂信者だな。


 「皆殺しにされた人の知り合いの恨みを買いますよ?」


 「それなら、その人たちも殺せばいい」


 こりゃ、ダメだ。


 「『六次の隔たり』って、知ってますか?」

 

 「何それ」


 「知り合いを6人辿れば、惑星の全員と繋がる事ができるという仮説です」


 「どういうこと?」


 今度は「関係ない」とは言わずに、食いついてきたな。


 もしかしたら、いけるかも。


 「Aという人間に、知り合いが50人いたとします。その50人にも、50人ずつ知り合いがいるとします。これを6回行えば、Aさんが繋がることができる人間は50の6乗、156億2500万人となる。そんな感じの説です。まあ、重複を無視しているので、必ず繋がれるわけではありませんが」

 

 「なら、私は、兄様に恨まれるかもしれないってこと?」


 そこに目をつけるか。


 デウロの人間全員殺すことになる、ってことを警告したかっただけなんだけどな。


 まあ、いいように使わせてもらうか。


 「そうです。そうなったら、君はニックを殺すのですか?」


 ソフィアの顔色が一気に悪くなる。

 

 「そんなの、嫌」


 「でしょう?なら、皆殺し以外の方法を考えて下さい」


 「分かった。考える」


 俺は、背中側でガッツポーズをした。

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