64話 サーシャと再戦な件
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☆
いやー。
まさか、模擬宇宙戦に出ることを禁止されるとは。
担任に色々聞いたんだけど、国王からの命令らしい。
俺は何だと思われているのだろう。
そんな危険人物か?
…………。
結構、危険人物だな。
相当な戦力を持ち、個人の武力も剣術大会で準優勝出来るほどにはある。
国王との繋がりなしにナイトメア星系に来たのなら、元宰相のグロックを取り込まれたことになる。
脅威以外の何者でもない。
まあ、出場禁止になったところで俺の学園生活が大きく変わる事はない。
修学旅行禁止とかよりは、全然マシだな。
ただ、勝負事という張り合いのあるものがなくなったのは少し悲しい。
張り合いは、自分がだらけないようにするのに大切だからな。
………。
確か、2年生以降の男子の必須科目に剣術があったはずだよな?
多分、教師はサーシャだろう?
とりあえず、本気のサーシャと打ち合って勝つことを目標にしよう。
近頃、バイクを乗り回してたり、弓を使いまくったり、統治が忙しかったりしていたため、剣をあまり握れていないからな。
リハビリにも良いかもしれない。
☆
2日後、剣術の授業。
学園のグランドの内側で、風に揺らされる赤髪。
「どうもこんにちは。みなさんの剣術指導を行う、サーシャと申します。頑張って皆さんの剣の腕を上げていこうと思いますので、よろしくお願いします!」
思った通り、剣術の教師はサーシャだった。
よかったよかった。
「では早速、剣に自信がある方と試合をしたいのですが、剣に自信がある方は手を挙げてください」
なるほどな。
自分の剣の腕を見せておくことによって、生徒を従順にさせるのか。
………。
誰も手を挙げないな。
一応、コイツらは社会見学の時にサーシャの腕を遠くからだが見ていたので、どうせ勝てないのがわかっているのだろう。
俺が手を挙げない理由?
剣に自信がある訳ではないからに決まっているだろう?
「あれ?いないんですか?平民の方たちは、結構挑んできていたのですが………」
「私がやってみたい」
手を挙げたのは、ストック。
剣術大会の閉会式のアナウンスを考えると、勝てると思って手を挙げたのではないだろう。
「ああ、ストックさんですね!実況の時はお疲れ様でした!私も有段者と剣を打ち合ってみたいとは思ってたんですよ!では、そこら辺に落ちている、刃の潰された剣を一本選んで下さい」
ストックが選んだのはロングソード。
それに対して、サーシャがポケットから取り出したのは………2本の果物ナイフ。
「舐めているのか?」
うん。
その気持ちわかるよ。
明らかに舐めてるよね。
「いえ、決して舐めてはいませんよ?では、始めましょうか」
ストックは中段。
サーシャは棒立ち。
………。
これでも、舐めてないと言えるのか?
「エルンさん。開始の合図をお願いします」
あ、俺?
「始め!」
ギャギィン
「なっ、参りました……」
その言葉を発したのは、首に果物ナイフを突きつけられているストックだった。
本当に一瞬だった。
ストックがスタートと同時に、剣を振り下ろす。
それをサーシャは片方のナイフで流し、もう片方のナイフで首を狙う。
………。
サーシャ、腕を上げてないか?
「うーん。最初から振り下ろしは悪手です。隙が大きいですよ。おそらく、2本持ちの相手と戦ったことが無いのでしょう。精進してくださいね!」
「はい……」
ストック、悔しそうだな。
「じゃあ、次はエルンさんですね!」
え?
俺?
おい。
ストックに慰めの一言でも言ってやったらどうだ?
まあ、いいんだけど。
「はい」
さーて。
剣を選ぼうか。
大会の時は、ロングソードだったんだよな。
でも、サーシャの本気を見て思った。
ロングソードは長すぎる、って。
サーシャの一番の特徴はスピード。
対処するには、少し短めの剣がいい気がするんだよな。
何なら、二本持ちもありかもしれない。
グラディウス・ヒスパニエンシスでいこうか。
「エルンさんは二本持ちですか!じゃあ、私は………」
そう言ってサーシャが地面から広い上げたのは、まさかのスパドーネだった。
いつも短剣を使っていたのに。
「先生って、両手剣を使えるんすね」
「エルンさんに『先生』って呼ばれるのは、くすぐったいです」
………。
で、結局、使えるのか?
まあ、いいか。
試合が始まったらわかるだろう。
「では、いきますよ!ストックさん、合図をお願いします!」
「……始め」
ブワァン
鈍い風切り音。
俺は思わず、後ろに跳ぶ。
「振り下ろしは、隙が大きいんじゃなかったんですか!」
「スパドーネにはリカッソがあるので、大丈夫です!」
スパドーネの恐ろしいところはそこである。
スパドーネの剣身には、リカッソと呼ばれる刃のない部分がある。
そこを握ることで、他の両手剣と比べて圧倒的に使いやすくなるのである。
ブワァン
今度は横薙ぎか。
ギャキン
何っとか防げた
だが、片手剣二本持ちはダメだったな。
サーシャの斬撃が重すぎる。
今にも手首がやられそうだ。
これはまずい。
「フンッ!」
ギャギ
俺は2本ともサーシャに向かってぶん投げた。
そしてサーシャがそれを捌いている間に、地面に落ちているロングソードを拾う。
剣の交換は、ダメとは言われてないからな。
「流石ですね!」
ヒュンヒュン
今度は、サーシャの突き。
両手剣のくせに、恐ろしいほど速い。
シャキィィィン
まあ、目では追えているので捌けはする。
だが、俺は気づいた。
防戦一方じゃないか。
剣術大会の時は、もう少し攻撃に出れたのに。
俺がそれだけ弱くなっているのか?
いや、まだだ。
まだやれる。
横薙ぎ。
これを、サーシャは捌かずに避けた。
なぜだ?
サーシャが避けた方向に振り上げを一撃。
ギャキン
これは、捌いた。
そのおかげで、スパドーネはサーシャの頭よりも上側にいった。
隙だらけだぞ?
今なら、懐に潜り放題………。
「それを待っていました!」
サーシャは、スパドーネを振り下ろした。
これは避けられない。
ギャキィィィン
ガン
俺は咄嗟に後頭部を守るようにロングソードを移動させたが、サーシャの斬撃をモロに受けてしまい、そのまま地面に頭を打ちつけてしまった。
「だ、大丈夫ですか、エルンさん!」
「大丈夫っす」
嘘です。
脳震盪でめちゃめちゃ吐き気がします。
「ああ、おでこから血が………」
「大丈夫ですって。剣の授業を受ける以上、これくらいの怪我は覚悟の上です」
この後も、授業は続いた。
自身の得意な剣の素振りをし、それに対してサーシャがアドバイスをするというものだった。
後に聞いたのだが、素振りをしながら打ちひしがれている生徒が2人いたという。
………。
誰のことだろうね!




