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60話 土と正体の件

 平野部に作られたコンテナ群。


 カンカン


 「エルン男爵、お伝えしたいことが………」


 俺の家代わりのコンテナに、チョビが真っ青な顔をして入ってきた。


 「どうかしたか?」


 「あの、昨日ジャガイモの収穫ができるようになったので、全て収穫したのですが………」

 

 早くない?


 まだ、2週間くらいしか経ってないよ?


 「どうだった?豊作だったか?」


 「は、はい。おおよそ3000tほど収穫できました」


 すごい量だな。


 景虎はヤワチ人は自分たちで食料生産をすると言っていたので、農業公社が生産しなければいけない食料は、約5万人分。


 他の作物もあるし、この収穫ペースでいけば元レンツの兵士の分はしばらくは大丈夫そうか。


 「で、本当に伝えたいのは、そのことじゃないんだろう?」


 「はい。土が死にました」


 「は?」


 「土に栄養が一切残っていません!」


 そんな馬鹿な!


 俺らは、どうやって農地を確保したと思う?


 森を焼いたんだぞ?


 つまり、草木の灰のおかげで、ジャガイモを植える前は栄養満点だったはず。


 それが、一回の収穫で栄養が枯渇?


 これはいかん。


 肥料をどうしよう。


 下水を焼却処理して、肥料にできるか。


 いや、肥料を用意したところで、土に馴染むまでに時間がかかる。


 最短でも、1ヶ月は土地を休ませなければいけない。


 どうしようか。

 

 いっそのこと、三圃制にするか?


 いや、食料消費を考えると、四圃制の方がいいかもしれない。


 それで、休耕地にクローバーでも植えれば、窒素は大丈夫だな。


 リンは?


 カリウムは?


 え?


 詰んだ?


 『マスター。ヤワチの人間を頼るべきですよ』


 ヤワチの人間を?


 「なにをさせるんだ?」


 『彼らは、漁業をやっています』


 うん。


 知ってるよ?


 いくらかタンパク源として、魔道駆逐艦を使ってこっちに送ってもらってるからね。


 「まさか、作物がとれない間は魚だけを食えと?」


 『流石、私のマスター。ギャグセンスは一流ですね(笑)』


 案外、真面目だったんだが?


 「じゃあ、どうするのさ?」


 『干鰯ですよ。ヤワチ人に干鰯、できれば〆粕も作らせましょう。それらは非常に強力な栄養源になりますよ?』


 ………。


 天才だな。


 江戸の知恵ってもんか?


 陸の栄養がないなら、海から持ってくればいいのだ。


 俺は急いで紙に干鰯と〆粕のレシピを書く。


 「チョビ。俺は今から、元収容所に向かう。とりあえず、ジャガイモを収穫した後の土地は放置しておくように」


 「了解です」


 これで、何とかなって欲しいな。


 ヤワチ人の元収容所。

 

 『マスター。お母様より返答が返ってきました』


 少し前に送った、「ヤワチ」を知ってるか否かについてのことか。


 「で、どうだって?」


 『手紙を読み上げます。「エルンスト。ヤワチは、私の元故郷です。私のヤワチでの名前は”九条院志乃”、あなたが生まれるよりも前、レンツ王国がヤワチに攻めてきた時にこの国から脱出した元王族です。ヴァントちゃんから、あなたが元ヤワチの統治者になったことを聞き、本当に驚きました。運命とは、不思議なものです。」』


 ………。


 九条院が王族か。


 なら、景虎は俺の親戚か。


 これは、皆には黙っておくべきか?


 もし俺が王族の子供だとバレたら、担ぎあげられて、独立することになる可能性があるか?


 いや、ヤワチの人間が俺に従いやすくなると考えれば、伝えておくべきか?


 とりあえず、景虎にだけは伝えておくべきか。


 干鰯のことも伝えておかないといけないし。


 えーっと、景虎の居場所は………わからないな。


 「殿ぉーー!」


 遠くから、俺を呼ぶ声。


 あ。


 景虎だ。


 ナイスタイミングだな。


 「この紙に書いてあるものを量産して、こっちに融通してくれるか?」


 「かしこまった」


 やったぜ。


 これで、少々は土事情が明るくなるだろう。


 「あと、景虎に聞きたいことがあるんだけど」


 「いかなる儀にても、某に問うてくだされ!」


 「九条院志乃に聞き覚えは?」


 その名を聞いた瞬間、景虎は腰の脇差に手をかけた。


 念の為、俺も剣に手をかける。


 「……何処でその名を?」


 「知っているんだな?」


 「何処でその名を聞いたかと申しておるのです!」


 凄まじい景虎の気迫。


 これは、すごい。


 もしかしたら、サーシャ以上かもな。


 「九条院志乃は、俺の母親だ」


 「なっ、戯言を!」


 「嘘じゃないぞ?真実だ」


 俺も、さっき知ったんだけどな。


 「ヴァント、お袋の画像ある?」


 『ありますよ』


 ブワァン


 …………。


 もうちょっと、いい画像を使おうよ。


 なんで、俺が寮出から帰ってきた時の通信の時のなんだよ。


 背景が、旗だらけで本当に怖い。


 「………志乃…………」


 景虎の目は、赤みを帯びている。


 それでいて、涙で潤っている。


 「志乃は、某の妹にござる。既にこの世にはなきものと諦めており申した……」


 なら、景虎は俺の叔父ってことになるのか。


 なるべく早く、この2人を会わせてやりたいな。


 2人の両親にも。


 「ヴァント。お袋をアルプトラウムに連れてきてくれるか?」


 『了解です。デウロ上空で待機している戦艦ヴァントごと移動させますか?』

 

 「いいや、戦艦ヴァントは待機させたままで。もしかしたら、デウロで使うことになるかもしれないし」


 『了解しました。クラースヌイ・オクチャーブリ級重巡洋艦2番艦、ヴェリーキー・オプロートをマート星から向かわせます』


 「それで頼む」

今度はラムラダの図(対空兵装を除く)を作ってみました。

https://drive.google.com/file/d/1cRFe3EOBDQHohFcNgxlYeU-gj6Qv-SpM/view?usp=drivesdk

アトランタ級軽巡洋艦をモデルにしました。

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