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61話 今年度終了な件

 ヤワチ人は魔法を使えない。


 つまり、多くの魔道具が使えない。


 レンツの兵士が魔法を使える人間が大部分だとはいえ、今のところ、約100万人中の約5万人しかまともに魔道具を使えないのは大問題である。


 外から魔法を使える移民を呼べばいいじゃないか、って?


 甘いな。


 移民を受け入れるのは良くない。


 その理由は主に2つ。


 1つ目、移民は多くが同化しない。


 もし、アルプトラウムの住民の大部分を占めるようになってしまったら、現在の日本的文化は無くなってしまうだろう。


 2つ目、魔法を使えない人への差別。


 どうして、今は魔法を使えないヤワチ人が差別されないのか。


 答えは簡単。


 今は、ヤワチ人の方が多いからである。


 そんな中、今の魔法至上主義的価値観を持った人間を外から大量に受け入れてみろ。


 確実に、ヤワチ人は差別されるだろうな。

 

 では、どうするか。


 「景虎。ヤワチの人間って、多分大半が読み書きできるよね?」


 ヤワチ人の時代観は、おおよそ江戸幕末。


 なら、寺子屋のようなものが存在しており、識字率が高いはずなのだ。


 「はっ。仰る通りで」


 やっぱりね。


 「読み書きができる、なるべく若い人間を100人程度集めてくれ。年齢、性別は問わないが、長男は避けるように」


 家の後継ぎは時間的余裕がなさそうだからな。


 「5歳ほどですか?」


 「15歳くらい。そいつらには、科学を学んでもらおうと思って」


 魔法が使えないなら、科学で対処するしかない。


 だが、技術を与えるだけではダメだ。


 基礎から学んでもらわなければ、自分たちで応用、発展はできない。


 「承知。早速集めて参ります」


 「おう、頼んだ。ってわけでヴァント、教科書作りを任せてもいいか?」


 『お任せ下さい。10年ほどあれば、私の持っている知識を教えることはできるでしょう。再現できるかは分かりませんが』



 約2ヶ月後、アルプトラウム。


 結論から言おう。


 アルプトラウムは少し発展した。


 まず、農業公社による食料生産。


 干鰯の効果は凄まじく、もうそろそろ土が元の状態に戻りそうなほどだ。


 食料問題は、多分どうにかなるだろう。


 そういえば、ヤワチ側でも干鰯を導入したらしい。


 もし、こっちで飢饉が起これば、ヤワチから食料を融通してもらおう。


 逆もまた然りで。


 あと、俺とヴァントで必要そうなところに道路を作った。


 しかし、将来のことを考えすぎた結果、合計1万kmほどの道路を作ることになり、非常に大変だった。


 どうやって道路を作ったか、って?


 ヴァント製の、アスファルトフィニッシャーとロードローラー、路面切削機にモーターグレーダー等が1つになった、なんかすごい機械を使ったのだ。


 これでも、時速40kmくらいでしか道路を作れないので、2ヶ月中の1ヶ月は道路作りに精を出した。


 本当に、苦行だった。


 その期間中は、毎日16時間労働。


 ………領主って、大変だな。


 ちなみに、水道橋は保留した。


 理由は単純。


 時間がなかったからである。

 

 他には、ヤワチ人の元収容所は面影がなくなり、一つの都市になった。


 景虎の事後報告によると、その都市の名前はオオエドになったらしい。


 ………。


 めっちゃ日本だよな。


 うーん。


 他には………。


 ああ、そうそう。


 計103人の子供達が、科学を学び始めた。


 子供達といっても、俺よりも年齢が上な人か結構いるのだが。

 

 子供達の発達は凄まじく、もう少しで前世での中学校内容の物理、化学、生物が終わる。


 ………2ヶ月ちょいでだぞ?


 ヴァントの提案で、AI教師ロボを導入したのが良かったのかもな。


 子供達のスペックが良かったのかもしれないが。


 これは、アルプトラウムの発展とは何も関係ないが、お袋がアルプトラウムに来た。


 いや、帰ってきた。


 俺はこのことについて、あまり首を突っ込まないでいた。


 25年ぶりの家族との再会なのだ。


 息子とはいえ、邪魔はできなかった。


 お袋は、アルプトラウムに住むことになったらしい。


 うん。


 それで良かったんだ。


 きっと。



 ラ・フィアンスのハッチの前。


 「じゃあ、行ってくるよ」


 もう少しで、ラザフォード学園の二年生になる。


 そのため、俺はデウロに向かわなければならない。


 正直、残念だ。


 少しだけ惑星統治が軌道に乗ったというのに。


 アルプトラウムからデウロに向かうのは、俺とアカリだけ。


 何でアカリも連れて行くかって?


 アカリは日本語しか話せないからだ。


 デウロにいれば、俺は当然のこと、アイリスもいるしな。


 今も廃人状態かもしれないが、ルリアもいる。


 孤独に感じることはないだろう。


 「いってらっしゃい、エルン」


 よかった。


 お袋は、ちゃんとエルンスト呼びじゃなくてエルン呼びしてくれたな。


 「元気でのお」


 そっちもな、グロック。


 「殿ぉ!お早い御帰還を!」


 …………。


 停学処分にならない限り、早く帰ってくることはないぞ?


 多分、1番早くて、第一長期休暇だろうな。


 ガッシャン


 ハッチを閉めると、賑わっていた声が一気に聞こえなくなる。


 …………すこし、寂しいな。


 「………行ってきます」


 新年度は、どのような学園生活をおくることができるのだろう。


 今年度は色々ありすぎた。


 なぜか特待生になったと思えば、いじめられ、いじめられたと思えば、レオンが王位継承権を失った。


 戦争にも参加し、鬱になり、剣術大会に出場した。


 プレデテーラ・ウォーエルの討伐にも一応成功した。


 来年は、もう少し平穏な学園生活を送りたいな。


 2年生の大きなイベントは、修学旅行か。


 ……そういえば、行き先はどうなるのだろう。


 レンツ王国は、ラザフォード王国の属国になっちゃったしな。


 別のところになるのかな?


 それとも、レンツ?


 とにかく、紅茶をゆっくりと飲むことができる、そんな新年度がいいな。

https://drive.google.com/file/d/18HcwC3nzUBpqNqzKTyTHuOqvimw_FVYK/view?usp=drivesdk

クラースヌイ・オクチャーブリ級重巡洋艦の図(対空兵装を除く)を作りました。モデルはノヴォロシースクです。

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