59話 いろいろ決める件
☆
「エルンや。お主の名字は決まっているかの?」
「は?」
ってわけで、急遽、アルプトラウム内の重役を集めた。
集まったのは、グロック、アイオワ、チョビ、景虎、アカリ。
「それでは、第1回、名字決め会議を行う」
「心得申した」
「了解です」
「何回会議をすることになるのかのお」
第1回ってつけちゃったから、そう思ったのかな?
「じゃあ、何か案がある人。挙手制で」
チョビが静かに手を上げた。
他に誰も手を挙げなかったものだから、今にも手を下げようとしている。
「よし、じゃあ、チョビ」
「は、はい!安直に、『ナイトメア』はどうでしょうか?」
「些かも興を覚えぬな」
「却下じゃ」
「安直すぎて、面白くないと思いますぞ?」
………。
そんな、すぐに批判せんでやってくれ。
チョビが可哀想じゃないか。
あんたらの気持ちはわかるよ?
エルン=フォン=ナイトメア?
厨二病臭いよな。
安直すぎるよな。
「拙者に一計ござる」
「はい、景虎」
「『ヤワチ』は如何であろうか」
「やめた方がいいのお。昔に滅んだ国の名前を名字にするなど、王家への忠誠無しと捉えられてしまうぞい?」
「そんなに批判するならさ、グロックは何か案があるのか?」
「ないのお」
無いのかよ。
ただ、批判したいだけかよ。
「もう一度、チャンスを下さい!」
「はい、チョビ」
「アルプト……」
「些かも興を覚えぬな」
「却下じゃ」
「安直すぎて、面白くないと思いますぞ?」
「ごめん、本当に面白くないわ」
「………すいません」
安直すぎる、という同じ過ちを二度繰り返すな。
それから30分、ずっと誰かが案を出しては、すぐに却下される時間が続いた。
当然、心地の良いものではない。
「’アカリ。何かいい案でもあるのか?’」
さっきから、ずっとアカリは黙り込んでいるからな。
話をふってみるか。
「’お、お兄さん。あのね。『メモメモ』に出てくる、ラザフォード王国の貴族の名字は、銃の名前とか、あだ名からとってきてるんだよ’」
大体、そうだよな。
逆に、銃の名前やらがついていない「ヴィッテルスバッハ」はラザフォード王国貴族として特殊だと思う。
「’知ってるよ?’」
グロックとか、顕著だもんな。
「’うん……。だから、ウィンチェスターとか、ドラグノフとか、ウッドペッカーなんかがいいと思うな’」
うーん。
確かに、それが「メモメモ」の世界観としては、1番違和感なさそうかな。
パン、パン
「はーい。みんな、注目。このままだと決まりそうにないから、ウィンチェスター、ドラグノフ、ウッドペッカーの中から決めよう」
これ以上、時間をかけたくないからな。
「うーむ。拙者は、ウッドペッカーに一票」
日本の銃だからか?
「確かに、アルプトラウムには、ウッドペッカーが似合っておりますのお」
「私もそう思いますぞ?」
すっごい人気だな、ウッドペッカー。
英語なんだけどな。
ウッドペッカーという言葉自体に、日本的な匂いがするのか?
どういう感性をしているんだ?
「よし、ウッドペッカーで決まり。今日から俺は、エルン=フォン=ウッドペッカー男爵だから」
「じゃあ、次は、ウッドペッカー家の紋章を考えねばのお」
「は?」
名字の次は、紋章かよ。
「家紋も決めないといけないのか?」
「同志、家紋は大切ですぞ?家紋の最も大きな役割は、個人の名前を超えた「家の永続性」を象徴すること。家紋は、先祖から受け継ぎ、子孫へ繋いでいく「血の繋がり」や「誇り」をひとつの図案に凝縮したものですぞ?」
うん。
大切なことはわかった。
「わかったわかった。明日までに各自一枚ずつ家紋の案を紙に描いてきてくれ」
☆
次の日。
集まったのは、チョビ以外。
チョビは農業公社の仕事があるから来れないようだ。
皆、目の下は黒かった。
徹夜をしたのか?
家紋ごときのために徹夜をしてくれる部下を持った俺は、幸せだな。
「では、儂からいこうかの。儂の描いた家紋はこれじゃ!」
バサッ
………ほう。
三頭の鷲か。
カッコいい。
カッコいいんだけどさ。
第何のローマだよって感じ。
「三首の化け物とは、世にも奇なる形相よな」
「3つの首は……」
「あれだろ?ラザフォード、レンツ、ヤワチの人間を表してるんだろ?」
「そうじゃ。よくわかったのお」
ビザンツとかの双頭の鷲は、権威の他に、他民族を表してるからね。
そこは、連想ゲームってもんよ。
「とりあえず、皆のを全て見終わるまで保留で。はい、じゃあ、次。アイオワいこうか」
「私が描いた家紋は、これですぞ!」
バサッ
アイオワが描いてきたのは、正距方位図法の惑星地図と、それを囲むオリーブの枝が描かれた紋様。
これは!
国連だなぁ。
「却下で」
「同志!なぜですか!」
「なんとなく」
そりゃあ、国際でもなければ、連合でもないからに決まってるだろ?
神聖でもなければ、ローマ的でもなく、ましてや帝国ですらない、某国のようにいじられたくはないのだよ。
このヴォルテールの言葉を知ってる人間が、この世界に何人いるかわからないけど。
「次、景虎」
「いよいよ某の出番、相成り申した!」
バサッ
…………。
「ふざけてる?」
「些かも戯れにてはござらん。至極真面目にござる!」
いや、ふざけてるだろ。
どうやったら、家紋を魚拓にしようと思うのかな?
末代までの恥になるわ。
「却下」
「どうぞ、御再考くだされ!」
「それも却下」
「殿ぉ!」
「’アカリは考えて来てくれた?’」
「’う、うん!’」
バサッ
………。
「ほう?これはこれは、どこかの文字ですぞ?」
これは……。
「某は、これに運命を感じ申した!」
………「景虎」だからな。
この、崩れた草書体の「龍」の字、「懸かり乱れ龍」に、運命を感じるのは当たり前か?
アカリは、それを狙ったのか?
「これは、シンプルでいいですのお」
「じゃあ、これでいいか」
「はっ!」
結局、苗字も家紋もアカリの案が通ったな。
もしかしたら、アカリがいなかったら、一生決まらなかったかもしれないな。
戦艦ヴァントの図(対空兵装を除く)を作ってみたのですが、なんかすごいことになりました。
https://drive.google.com/file/d/1ogZwwv_Pad4itzyAY6wHMMPpnBccFKcu/view?usp=drivesdk
厚みのない長方形はVLSです。




