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57話 優秀な文官が来た件

 ギュィィィッ


 「優秀な文官」を載せた魔導船のハッチが開く。


 「これがお主の星か。何もないのお」


 ………。


 いやさ、確かに俺は優秀な文官を遣すように国王に使いを出したよ?


 何でグロックが来るんだよ!


 「なぜラザフォード王国宰相が、こんな辺境に?」


 「優秀な文官を遣せ、と言ってきたのはお主だろう?」


 確かにこいつは内政の化け物。


 だが、優秀な家庭教師を求めたら東大の教授が来た、みたいな事をするんじゃない。


 「ラザフォード王国の内政はどうするんです?こんな辺境からだと、指示が出しにくいでしょう?」

 

 「その辺は倅に託した。儂も年だからのお」


 「年を心配するなら、辺境に来るのは如何なもんでしょうかね」


 「何じゃよ。せっかく来てやったのに。ここに来たのは、面白そうだったからじゃ」


 そんな面白いかね?


 どっかの誰かさん達のせいで、農地すら破壊されてるのに


 「不思議そうな顔をしておるな?」


 「そんなに、この星は面白そうですかね?」


 「そりゃあのお。『あの戦い』の戦況を一艦で変えた人間の治める星が、面白くならないわけなかろう」


 ああ。


 そういうことか。


 残念だったな。


 俺は、なるべく既存の技術でこの星を発展させるからな。


 面白いことは起きないだろうよ。


 「’お兄さん!この人って………グロックだよね?’」


 おい、アカリ。


 呼び捨てかよ。


 まあ、いいけど。


 「’ああ’」


 「’何で、そんな重要人物がここに来るのさ!’」


 俺だって、文句を言いたい。


 「’面白そうだからって’」

 

 「お主ら、先程から何を喋っておる」


 「別に、何でもありませんよ。これからよろしくお願いします。元宰相」


 「よろしく」


 ラ・フィアンス内部。


 俺とグロックは、広い格納庫の中で紅茶を飲んでいた。


 「これから、何をすべきだと思いますか?」


 「食料供給、都市計画、法律、税制じゃな」


 前の二つは、一応計画を立てたんだよな。


 法律か。


 「法律って、星系ごとに違うもんなんですか?」


 「うーむ。ラザフォード王国法を元に作り直すという感じじゃの。原案はどこの星系でも同じというわけじゃ」


 ラザフォード王国法か。


 確か、今施行されているのは、グロックが作り直した奴だったよな?


 なら、こいつが覚えてるか。


 よかったよかった。


 メモメモには、存在と簡単な説明は記されていたけど、詳しくは知らないんだよな。


 「ラザフォード王国法は、全部言えるんですか?」


 「もちろんじゃ!今から全て言ってやろうか?」

 

 全ては流石に長そうだよな。


 「前文だけお願いします」


 「ラザフォード国王、万星の統治者である我は、全星系住民の真正なる信託を受け、星々の運行が定める不変の秩序に基づき、ここにラザフォード王国法を確定する。そもそも国家の権威は、母星デウロに端を発する聖なる血統に由来し、その権力は国王の至高の意志に帰し、その恩恵はあまねく臣民が享受するものである。これは宇宙の創生より続く摂理であり、我らはこの憲法を通じて、王国の永続的な繁栄と、全星域における絶対的な平和を維持することを宣言する。汝ら王国臣民は、王威の慈悲を信頼し、秩序なき混沌から脱して、法と正義が支配する宇宙を希求する。我らは、専制を是としつつも、それが我による無私の献身と広大な叡智に根ざすものであることを自覚し、王国の安寧を脅かすいかなる内憂外患をも排除することを誓う。また、人類がいまだ到達せぬ深宇宙の果てに至るまで、我が威光を轟かせ、文明の灯火を絶やさぬことを決意する。我は、平和を維持し、恐怖と欠乏から解放されることを念願するが、それは偏に我の強力な指導力と、臣民の忠誠心との調和によってのみ達成されると信ずる。我は、自国の安泰を優先しつつも、王国の版図に加わらんとする諸星系に対しては、等しく我の庇護と秩序を提供することを厭わない」


 ………。


 よく覚えてるな。


 流石元宰相。


 この法、こいつが作ったはずなのに、国王が作ったみたいになってるな。


 いや、正しいか。


 国王が定めたことにしておいた方が、王国民は従いやすいか。


 「結構ちゃんとしてるんですね」


 「そりゃあ、わしが作ったからのお」


 自分が作った物に絶対の自信を持てる人間か。


 自惚れることがないのなら、強いな。


 「税はどうしましょうか」


 王国に収める税はしばらく免除されているが、惑星開拓には金がいる。


 インフラとかね。


 でも、取り過ぎると民が不満を持つだろうし、少な過ぎると、税収が支出に追いつかないよな。


 「うーむ。今王国で行われているのは金納なのじゃが……」


 よかった。


 物納ではないのか。


 物納の場合、それ用の倉庫も大量に作る必要があるだろうしな。


 「何か問題でも?」


 「ここは元レンツの領土。普及している貨幣が違うんじゃよ」


 国が違うからな。


 EUみたいな連合が組まれていたり、どこかがどこかを植民地支配たりしていない限りは、国ごとに違うだろうよ。


 「今すぐ本惑星内にラザフォード貨幣を広める必要があると?」


 「いいや、それは悪手じゃ。完全にラザフォード貨幣に置き換わるまで、この星系間には2つの貨幣制度があることになるぞ?」


 確かに。


 流石に軽発すぎたか。


 「なら、両替してから納めさせるとか?」


 「それが1番じゃろうが、考えてみぃ。両替するには、レンツ貨幣と両替する分のそれなりに大量のラザフォード貨幣が必要じゃ。何もない惑星と言っても人口は100万人近く。どんだけ金がかかるかのう?」


 「なら、レンツ貨幣で納めさせた後に、我々が両替するとか?」


 「ラザフォードの属国になったレンツの貨幣など、信用があると思うかね?」


 ………難しいな。


 俺がやってた戦略ゲーでは、税は共通の金貨か、米だったからな。


 「なら、どうするんですか!」


 「そうじゃなあ。賦役かのぉ」

 

 無給で働かせる事を税とするのか。


 確かに、インフラを整えるのに必ずしも金はかからない。


 労働力があれば、最低限どうにかなるのだ。


 色々軌道に乗るまで、資源はなるべく俺が取りに行くし。


 道具も俺が用意するし。


 「……そうしましょうか」


 「貨幣の切り替えは、この星の特産品でも作って金を稼いだ後に、ゆるゆるとやっていこうではないか」

 

 さっき、文句を言いたい、って思ってごめん。


 めっちゃ優秀だわ。


 「実は、貨幣制度に縛られなくする方法もあるんじゃが………」


 グロックは、ニヤニヤして言った。


 そんな方法があるなら、最初からそれでいいじゃん。


 「その方法とは?」


 「ラザフォードからの独立」


 なんだと?


 「な、バカなことを!」


 「お主なら、それをする力もあるのだろう?」


 ………。


 これは、簡単には答えられない。


 グロックが野心深いなら、これはただの提案。


 グロックが国王と繋がっているなら、これは試練だ。


 「私は、まだ学生ですので………」

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