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56話 農業の会社を設立する件

 アルプトラウムの最大の問題。


 それは勿論、前述した現地民の怒りへの対処。


 俺はそれに対して、何もするつもりはない。


 俺が謝ったら現地民の怒りが収まるのか?


 そんな訳ないだろう?


 逆に、怒りを増長させる可能性すらある。


 もし謝罪ごときで怒りが収まるなら、この世に戦争なんて起こらないだろうよ。


 怒りの対処は、同じレンツ国民のアイオワに一任してもらう。


 相当大変だろうけど、頑張ってね!


 俺が主導で行うことは、とにかく食料問題。


 本当に、ラザフォードはおっかないよ。


 地上の農地が殆ど破壊されてたんだもん。


 いや、戦略としては正しいんだよ?


 人がいても、食料がなければ戦闘する気も失うからね。


 でも、後始末をさせられる俺の気持ちにもなって欲しい。


 まあ、こうなる原因を作ったのはあの戦いに参戦してしまった俺なんだけどね。


 「ヴァント。今から作物の品種改良ってできる?収穫量はそこそこあって、病気に強くて、生育期間が短くてすむ作物を作って欲しいんだ。遺伝子組み換えでもいいから」


 『可能です。オリジナルの時代では、遺伝子組み換えでも人体に全く影響を及ぼさないような方法が使われていました。そのため、「遺伝子組み換え”でも”」というよりは、「遺伝子組み換えの方が」というのが正しいです。実際、マート星製の野菜は全て遺伝子組み換えされたものです』


 ………。


 遺伝子組み換えをしても人体に全く影響を与えない?


 つまり、遺伝子組み換えの途中で、遺伝子上の不具合を一切起こすことなく改良できたってことだろ?


 もしくは、芋づる式に出てくる不具合を全て修正し続けたってことだろ?


 オリジナルの時代、すげえな。


 「………育てるなら、何の作物がいいかな?」


 『そうですね。クレソン、小松菜、カボチャ、さつまいも、じゃがいも、大豆あたりは必須ですね』


 栄養価重視か。


 炭水化物は十分だな。


 ビタミンは……。


 「ビタミンDはどうすんの?」


 『日光浴を義務付けるのが手っ取り早いですね』


 日光浴を義務化か。


 面白い。


 「タンパク質は、大豆だけじゃきついよね?」


 『そうですね。大豆だけでもどうにかなりはしますが、この星の人間が皆老けて見えるようになります。魚か鶏がいいでしょう』


 「牛とか豚は?」


 『美味しいですが、効率の問題です。魚は海で獲れますし、鶏は少ない土地に詰め込めます。また、鶏は卵を産みます』


 しかも、鶏の餌はモロコシでいいしな。


 流石ヴァント。


 良くわかってる。


 え?


 効率を求めるなら昆虫食は、って?


 ごめん。


 実は俺、虫が触れないんだわ。


 そんな奴が、昆虫食をするとでも?


 峡谷の広場。


 アイオワに、力が強い兵士を集めてもらった。


 その数、約六千。


 まあ十分だろう。


 ここで、俺はある宣言をする。


 「ここに、アルプトラウム農業公社の設立を宣言する!」


 つまり、農業の会社化である。


 コンバインとかブルドーザーが溢れている世界なら、個別で農業をさせてもよい。


 しかし、この世界にはそれらはない。


 え?


 マート星で作れるじゃん、って?


 それはヴァントにも言われた。


 だが、考えてみろ。


 俺が死んだらどうする?


 多分、俺が死んだらヴァントはラザフォードの手から離れる。


 じゃあ、俺が死んだあとコンバインとかが壊れたらどうするのだ?


 1人の力によって成り立つ統治なんて、危なさしかないだろ?


 だから、今の魔法文明の中でそれらに代替するものがつくられるまでは、原始的な方法で農業をしてもらう。


 その「原始的な方法」が農業の地主制、言い換えて会社化ってことだ。


 初代社長は、どうしようか考えたが、チョビにしてもらうことにした。


 チョビは快く受け入れてくれた。


 俺に拷問されたのにね。


 何でチョビにしたかって?


 今の所、この星の人間で名前を知ってるのが、アイオワ、リリス、チョビしかいないからな。


 一応、チョビに農業に関する一通りの指示を出しておいたので、食料問題は近いうちに解決するだろう。


 いや、解決してもらわないと困る。


 ええっと、食料問題の次は…………インフラかな?


 道路、水道は必須だよな。


 うーん。


 ローマンコンクリート使えばいけるな。


 ローマンコンクリート自体は原理が簡単だから、道路作りは俺の手でやろう。


 水道橋も作ってもいいかもな。


 問題は、下水道かな。


 流石に、海に垂れ流しは良くないよな。


 いや、海に流す必要があるのだろうか。


 下水は資源になるからな。


 ちゃんと処理をすれば肥料になるし、ヴァントの力に頼らずに火薬だって………。


 ………。


 いや、火薬はまだ早いな。


 今のところは、肥料だけにしておこう。


 で、次は何だ?


 家かな?


 レンツの連中に、いつまでも峡谷住まいをさせるわけにはいかないもんな。


 ………ローマンコンクリート使うか?


 強度は高いし、風化にも強い。


 いや、ローマンコンクリートを使った家なんか、武装がないトーチカじゃないか!


 そんなのが大量に平地にあってみろ。


 どこの要塞群だよ!


 それ以外に方法は……。


 コンテナの技術はあるんだったな。


 居住用コンテナをヴァントに作らせるか。


 「ヴァント。4×6×3の大きさの窓付きコンテナを5000個くらい作っといてくれる?」


 『了解しました。ちなみに、コンテナの単位は「基」です』


 考えることが多すぎるな。


 今度、優秀な文官を遣すように、国王に使いの者をだしておこうか。

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