55話 同志な件
☆
「どうもこんにちは。俺はエルン。この星系を治めることになった」
自己紹介は簡潔に。
常識である。
「そんなことはどうでもいい!貴様がこの場にいる事が問題なのである!」
どうでも良くないよ?
この場にいる理由は、俺が統治者だからだよ?
「アイオワ殿」
「殿」をつけたらいいよな?
「何であるか!」
「投降しろ」
ガン
アイオワはドアジャムを叩く。
当たり前だよな。
部下を拷問された挙句、アジトにやってきて降伏勧告なんかされたら、普通はキレる。
アイオワは「メモメモ」内では品行方正だったのだが、なぜかグレているので絶対にキレる自信があった。
「ふざけるなでないのである!」
ん?
言葉使いがおかしいな。
何か、後付け感がある。
「ふざけているつもりは全くないぞ?俺は至って真面目だ。アイオワ殿こそ、ふざけないでいただきたい」
「何のことであるか!」
「猫を被るな、と言っている。魔力無し」
アイオワの動きがピクリと止まる。
そう、「この世界で生きるには重大な欠点」とは、俺と同じく魔法が使えないことである。
いや、俺と同じく魔法が使えないのだが、俺は先天的、こいつは後天的だった。
「3歳の頃、事故で鉄パイプが腹に刺さって魔臓が潰れて……」
「なぜそんな事を知っている!」
ほぉら。
「である」が消えたぞ?
何でそんな事を知ってるのかって?
「メモメモ」の拷問官に聞いた、だなんて言えないもんな。
「俺の情報網を舐めるなよ?」
情報網なんてないけど。
「え、では司令、本当に魔法が使えないのですか?」
リリスが驚いた顔をして言った。
魔法が使えないのは欠点。
ここから降伏させるには、アイオワを褒める必要がある。
下げたら上げる必要があるってことだ。
今のままだと、ただ煽っただけになるからな。
「ああ、勘違いしないで欲しいんだけど、こいつ、優秀だからね?」
「こいつ」って言っちゃった。
まあ、いいか。
「魔法が使えないのがバレるといけないから、学校には通わないで、10歳の時に初陣を飾ったり、15歳の時には艦隊決戦の、確か『ミラン宙域の戦い』の時の司令を努めたり、現場叩き上げの軍人だからね?」
「そんなことまで知られているのか……」
「あ、ちなみに言っておくけど、俺も魔法使えないから」
「………同志よ」
めっちゃキラキラした目で見てくるな。
………。
同志か………。
「降伏する」
☆
アイオワによる降伏宣言の後、俺はアイオワと2人で話し合った。
残存艦隊のこと。
残存兵員のこと。
アイリスのこと。
そして、ナイトメア星系のこと。
最初、
「ベットにお掛けになってください」
と言われたもんだから、正気を疑ってしまった。
ベットには、女が寝ていると思っていたからな。
女の正体は、人形だったのだ。
なぜこんな事をしているのかを尋ねると、彼は
「人を寄せ付けないためです」
と言った。
曰く、敗戦の責任を諸に感じてしまったせいで、精神面が怪しくなり、部下に当たるようになってしまったため、ヤバい奴を演じて人を寄せ付けなかったらしい。
指示がドア越しだったのもそれが理由のようだ。
こいつは、色々抱え込むタイプなんだな。
残存している戦力は、ほとんどナイトメア星系の警備をさせるようにした。
ただ、アルプトラウムでは全体的に食料が心許ない。
どうにかして、作らないとね。
アイリスのことについて話すと、アイオワは泣き崩れた。
本当に、レンツの連中は忠誠心がすごいな。
で、ナイトメア星系のことなのだが、ここは本来レンツ王国の領地で、ラザフォードがレンツから奪った領域の中にあった、秘匿されていた星系なんだと。
セーンドイル宙域の戦いのあと、敗れたアイオワは、秘匿を無視することになるので本当はダメなのだが、ナイトメア星系に撤退。
レンツに戻るために色々準備していたところ、ラザフォードに宙寇扱いされて攻撃されたらしい。
攻撃を受ける前は3000隻程度の魔導船があったらしいのだが、破壊されて今の数に。
2000万いたはず人間のも、百万人足らずになってしまったらしい。
ラザフォード王国って、過激だな。
本当に、アイオワが降伏宣言をしてくれてよかった。
もしこのまま戦闘が続けば、俺にラザフォードへの怒りがぶつけられ、俺が全員殺さなければならないところだった。
この星の発展性も失うところだった。
危なかった。
だが、この星の人間のラザフォードへの怒りはとてつもないだろう。
それを、どうやって対処していくかが問題だな。
今気づいたんですけど、39話がないですね




