54話 野蛮な連中ではないらしい件
☆
「’お兄さん………。大丈夫?’」
「’大丈夫、大丈夫’」
正直、全然大丈夫ではない。
次々に吐き気が襲ってくる。
どれだけ、俺の体は牡蠣を拒絶してるんだ。
『’全く。本当に使えないマスターですね’』
仕方ないだろ。
人生初の拷問だったんだから。
やられる方も辛いが、やる方も精神を削られる。
………。
正直、拷問する意味はあったのだろうか。
結果、男の1人が血塗れになって、俺が吐いただけじゃないか。
これなら、自白剤をヴァントに作らせた方が良かったのではないか?
「おい!狼の飼い主!」
狼の飼い主?
俺のことか?
呼ばれてるな。
「なんだ、女?」
「お前は、ラザフォードに忠誠心はあるのか?」
なぜそれを今聞く?
うーん。
忠誠心か。
微妙だな。
普通に生きるのには、忠誠を誓ってた方が都合がいいだけだもんな。
「いいえ。全く」
「なら、なぜレンツに逆らうんだ!」
え?
何だって?
なぜそこでレンツ王国が出てくる?
宙寇は、レンツがバックにいるのか?
………。
「お前らは、何だ?ただの宙寇ではないのか?」
「宙寇?私たちはそんな野蛮な連中じゃない!私たちは元レンツ王国軍第三艦隊。ラザフォード王国との戦闘で敗走した人間だ!」
ん?
ラザフォード王国との戦闘?
俺が参戦したやつじゃないよね?
「え?その戦闘で、光の尾っぽい物が飛んで来たか?」
「ああ!その攻撃のせいで、アイリス王女殿下は捕虜になってしまったのだ!」
………。
あの国王、黙ってやがったな?
自分の尻拭いを自分でさせられるってわけか。
☆
『’マスター。どうしますか?’』
どうしようもなくない?
ここの宙寇たちの存在は、俺のせいでもある。
そんなところを統治しろと?
………。
ここの人間を吸収するよりも、民族浄化的なことをして外から友好的な人を連れてきた方が時間はかからないだろう。
だが、俺はヒ○ラーになるつもりはない。
どうしたもんかね。
「’ヴァント。戦車を用意してくれる?’」
『’戦車ですか?馬の確保が大変ですよ?’』
うん。
チャリオットの方じゃなくてな?
わざとかな?
「’そっちじゃなくて、無限軌道で走る方’」
『’ああ、その戦車ですか’』
普通、そっちだろ。
ハイテクの塊みたいなヴァントが、そんな古臭いこと言うとは思わなかったな。
「’そうそう。『ボス』ってやつを探して欲しくてさ’」
『それなら、マート星に用意してある春風型ミサイル艇を使って、空から探した方が早いですよ?』
ん?
ミサイル艇?
また何か増やしたのか?
『’もしくは、絨毯爆撃をして、土地を更地にした方が……’』
「さっきから、何を話しているんだ!」
おっと。
さっきの女が話に入ってきたな。
まあ、気になるよな。
目の前に自分たちが知らない言語で話している人がいたらさ。
………。
ちょっと、ヴァントの案を借りるか。
「ああ。お前らが『ボス』とやらの居場所を吐かないから、この惑星を更地にしようかと思ってな」
もちろん、冗談である。
俺が、そんなことをするわけないだろ?
可能ではあるけど。
「な!何だと!」
「早く吐くなら吐いた方がいいよ?自分たちのせいで味方が全滅するよ?」
………。
俺、悪役っぽいな。
「もう!何なんだよ、ラザフォード王国は!私たちの姫様を殺して、今度はこの惑星を更地にする?ふざけるな!」
え?
ちょっと待って?
「アイリスは生きてるぞ?」
「誰が貴様の言うことなど………」
どうやったら信じてもらえるかな?
「ヴァント。アイリスが俺の寮に来た時の録画ってある?」
『もちろんあります。再生しますか?』
「頼む」
ヴァアン
『なんで、アイリスがいるんだ?』
『私が来てはいけませんでしたか?迷惑でしたか?』
『………ものすごい迷惑だ』
『何ですって?レンツ王国の王女であるこの私が迷惑?貴方に力があるわけではないのに?』
『え?俺、あんたの軍を叩き潰したのに?』
『戯言を!貴方なんかがミサイルを持ってるわけありません!』
………。
「………ものすごい迷惑だ」って言った俺、めっちゃニコニコしてるな。
自分で言うのも何だが、少し気味悪いな。
「こ、これは!時間跳躍魔法!?」
否。
ただの録画である。
なんか、こんな事が前もあったような気がするな。
「よかった……姫様…ご無事で……」
襲撃者一同が泣き始めた。
……すごい忠誠心だな。
ラザフォードでは、こんな光景見れなかったからな。
「姫様が無事なら、私たちが抵抗する理由はない」
お前ら今、抵抗できないけどな?
「………ボスの、第三艦隊司令の元に案内しよう」
戦車、必要なくなったな。
☆
奴らのアジトは、俺らが降り立った地点から少し離れたところにある、とてつもなく大きな峡谷の底にあった。
側面には大量の穴が掘られ、そこには5万人規模の人が住んでいる。
魔導船の数はそこそこ。
駆逐艦を主体とした500隻程度。
ラザフォードが「壊滅させた」と言う割には、案外戦力が残っているな。
どうやって、ここまで来たかって?
ラ・フィアンスの光学迷彩で奴らに気づかれないギリギリの距離に降り立ち、歩いてきた。
最初から歩いて来るという手もあったが、襲撃者一同が逃亡しないように縄で括った状態で歩かせるのは時間がかかるからな。
あと、俺が拷問したやつへの応急処置がしたかったっていうのもあるが。
「ここの扉だ」
コンコン
「アイオワ司令。第27強襲隊、帰還しました」
へえ。
部屋の中には入らずに、外から報告するのか。
………アイオワ司令か。
「メモメモ」にも出てきたな。
ラウマ・ド・アイオワ。
爵位は、辺境伯。
レンツ王国の貴族の中では、3位の軍事力を誇る。
ただ、こいつには、この世界で生きるには重大な欠点がある。
「お、その声は!リリスであるな?」
「はい」
この女は、リリスっていうのか。
「チョビはどうしたのだ?」
「チョビ隊長は……拷問にあって……」
あ。
俺が拷問した奴はチョビっていうのか。
拷問と治療のことしか考えていなかったせいで、名前すら分からなかったな。
「な!拷問だと?あの標的にされたのであるか?」
「はい」
俺、やっぱり標的にされてたんだな。
「それは、許されないことである!」
お前が俺を襲うように命令を出したのが悪いのでは?
「標的は、今何処にいるのであるか!」
「ここにいます。私たち、今、拘束されてるんです」
ドゴンッ
急に吹っ飛んで来る扉。
それを、チョビたちを庇いながら避ける。
「貴様であるか!」
出てきたのは、腰にタオルを巻いただけの、身長190cmほどのスキンヘッドの男。
部屋の奥にはベットがあり、布団の中には誰かいる。
髪の長さ的に、女。
………。
あー、なるほどなるほど。
抱いてたのか。
宇宙版海賊なだけあるな。




