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51話 譲渡することにした件

 目を開けると、目に入ったのは真っ白な天井。


 俺は生きているのか。


 よかったよかった。


 ………。


 何処ここ?


 『マスター、お目覚めのようですね。気分はいかがですか?』


 「気分?気分………。良くはない、って感じかな」


 気分云々よりも、状況を説明して欲しい。


 ここはどこなのか。


 あの後、どうなったのか。


 『そうですか。マスターは、あの犬っころに感謝しなければなりません』


 犬っころって、アカリのことだろ?


 「………あの鯨はどうなった?まだ、生きてるのか?」


 『鯨なら、私が対処しました。正直、使いたくなかったのですが、バンカーバスターを使用しました。いやー、驚きましたよ。ラ・フィアンスに積んでいた対空砲と両用砲が弾かれるのですから』


 ラ・フィアンスって、パーリェン上空に待機してたル・スチアン級とかいう輸送艦の四番艦のことかな?


 ………。


 対空砲って、あれだろ?


 ラムラダとか、ヴァントに積んでたやつと同じのだろ?


 両用砲って、少なくとも対空砲よりは弾がでかいよな?


 それを弾くって、どんな装甲してたんだよ。


 対戦車ライフルじゃ、効くわけないじゃん。


 「メモメモ」のより、超強化されてるじゃん。


 「アカリはどうなった?」


 『ああ、あの犬っころなら元気ですよ?ほら、あなたの布団の中にいるでしょう?』


 バサッ


 ………。


 本当だ。


 『この犬っころはすごいですよ。鯨のファイヤーボールがマスターに接触する直前に巨大な氷の壁を出現させ、ラ・フィアンスが来るまで持ち堪えたのですから。おかげでマスターは生きてるんですよ』


 そりゃ、感謝しないとな。


 俺はアカリの頭を撫でる。


 気持ち良さそうに「スースー」と寝息をたてていた。


 ………。


 前世の芝犬が人型だったら、こんな感じだったのかな。


 「……ん?ちょっと待って。俺にファイヤーボールは直撃してないんだろ?なら、何で俺は気絶してたんだ?」


 『ああ。簡単にいうと、マスターの体が「自分が死んだ」と強く勘違いして、「死んだなら、意識はないはず」ということで気絶した状態になったのでしょう』

 

 ………。


 まじかよ。



 ラ・フィアンスの格納庫内。


 「で、これがプレデテーラ・ウォーエルの魔石?デカくない?」


 目の前にあるのは、紫に輝く半径4mほどの巨大な魔石。


 隣にドラゴンの魔石が並べられているが、それは半径50cmほど。


 それと比べると、桁違いの大きさである。


 これを王国に売ったらどれくらいの金になるのだろうか。


 ………。


 正直、学生が生活する上で必要以上の金を持ってるんだよな。


 一応準貴族であるが、肩書きだけ。


 これ以上金を持っていても、使う場面がない。


 『ええ。大きすぎて邪魔です。この魔石をどうしましょうか。不要なら、このまま外に放り出しても良いのですが』


 「それ、流石に勿体無くない?アカリに食べさせるとか?」


 「’いま、『アカリ』って言った?’」


 後ろを向くと、そこにいたのは白狼。


 ちょうどいいタイミングである。


 『’マスターと、あなたをこの船から外に放り出すことについて話し合っていたところです’』


 「’ええっ!酷いよぉ!お兄さん!’」


 ヴァントって、アカリに対して当たりが強い気がする。


 何でだろう。


 「’全然そんな話はしてないよ?アカリに、プレデテーラ・ウォーエルの魔石を食わせたらどうなるかなー、って考えてただけ’」


 「’この紫色の魔石でしょ?うーん。多分、私の魔法がプレデテーラ・ウォーエル並みになるだけだよ?お兄さんはヴァント持ってるんだし、私がそこまで強くなる必要はないでしょ?’」


 ………。


 確かに。


 そもそも、アカリの魔法もプレデテーラ・ウォーエルの攻撃を耐え続けられるほど強力だから、これ以上強くなるのも無駄か?


 ドラゴンの魔石くらいなら、食べさせるのはいい気がするが。


 うーん。


 どうしたものか。


 『’マスター。いっそ、ラザフォード王国に譲渡するのはいかがですか?恩を売ることができますよ?’』


 「’なんか、ゴミを押しつけるみたいだなぁ’」


 『’事実ですね。私たちからすると、完全なるゴミです’』


 言っちゃったよ。


 「えー。エルン君?俺はねえ、怒ってるわけじゃないんだぞ?こんなバカでかい魔石を持ってくるのはいいんだけどねえ、このでっかい船とでっかい狼について説明してもらえる?」


 今、防御陣地に来ている。


 早くこのデカブツを押し付けたかったので、ラ・フィアンスに乗って防御陣地に行ったところ、大騒ぎになってしまった。


 当たり前である。


 「船は自分所有の輸送艦で、狼は自分が手懐けました」


 白狼を手懐けたわけではないが、「実は人です!」よりは説得力はあると思う。


 「…………そうかもしれないけどねえ。非常時用魔石が割られた反応があって、ここから遠くにある湖に急行したんだけど、一面穴だらけの血肉塗れ!あれ、やったの君だろう?」


 「はい。もちろん」


 穴だらけは俺の仕業だが、おそらく血肉はバンカーバスターのせいだろうな。


 どちらにせよ、俺のせいか。


 「もちろん、じゃないだろ?君を野放しにしてたら、環境が終わるぞ!」


 「そんな、人をアメリカザリガニみたいに言わないで下さいよ」


 「アメリカザリガニ?何だそれは?」


 この世界って、アメリカザリガニはいないのか?


 いや、違う名前がついてるだけか。


 アメリカ自体存在していないもんな。


 「あー。そういえば、この魔石は王国に譲渡するんで、バルトロメオ先生、そこんとこよろしくお願いします」


 「はあ?」

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