47話 狼に囲まれた件
☆
ドラゴンを狩って、さらに4日後。
俺は火山地帯から3400km、雪山地帯に辿り着いた。
気温は、約-26℃。
本当に寒い。
防寒着を持ってきていたので、何とか耐えれている。
『マスター。囲まれています。狼型の魔物を45体確認。そのうちの一体は体の大きさが異常です。その個体が群れの主と考えられます』
「え?どこ?」
一面雪景色。
狼なんて見えない。
白い狼なのだろう。
上手く隠れられているな。
『マスター、大きな音を出す事を許可していただけますか?』
大きい音?
犬は耳がいいから、脅かすのか?
「いいけど」
『了解しました。マスターは耳を押さえておいて下さいね』
ババババババババババババババ
バイクの音が数段喧しくなった。
そういえば、ノイキャンされてたんだっけ?
何匹か、逃げているのだろう。
白が白の中を動き回っている。
今なら狙えるな。
耳から手を離す。
ババババババババババババ
うるさすぎて、思わず耳を塞ぎなおしてしまった。
これ、どっちも膠着状態になっただけじゃん。
『マスター、巨大な個体以外は離れていきました』
「逆に、デカいのはまだ残ってるんだね。根性あるなあ」
『…………。案内しましょうか?』
「絶対噛み殺されるからいやなんだけど」
『多分大丈夫でしょう。狼は賢いので、強者とサシでやりあうことは滅多にありません。群れが離れて行った今、奴は無力だと考えられます』
「言ったな?信じるからな?もし噛み殺されたら、末代まで呪ってやるからな!」
『なら安心ですね。私の末代という概念はないので』
☆
『マスター。30歩先、右折してください。その後、7歩先、目的地周辺です』
車のカーナビかな?
俺は恐る恐る、ヴァントの指示に従う。
「デッカッ!」
そこに倒れていたのは、全長3mほどの真っ白な狼。
泡を吹いている。
音で気絶したんだな。
『マスター、今すぐ刺し殺すべきです。今なら、無抵抗で魔石と毛皮を手に入れれますよ?』
…………。
この狼の顔、前世で飼ってた犬に似てるな。
「いや、生かしておく」
『なぜですか?この個体を生かす意味がわかりません』
「俺な、前世で真っ白な芝犬を飼っててさ。妙に顔つきが似てるんだよね」
『その程度のことでですか?マスターは、暗殺者の顔が自分の身内の顔と似ていたら、素直に殺されるのですか?………まあいいです。マスターの意向を尊重します』
そっくりさんだったら、素直に殺されるかもな。
知り合いのそっくりさんを見つけたら、注意しておくか。
「このまま気絶してたら、コイツ、喰われそうだよな。………ヴァント、この辺に手頃な洞窟とかない?目が覚めるまでは、見守っておきたい」
『…………200mほど先にあります』
☆
洞窟内。
パチパチパチパチ
焚き火は何時間見ていても飽きない。
前世で、一日中見てたこともあったな。
「Wrru?Grurururu……」
「お、起きたか。おはようさん」
白は、俺を威嚇している。
当然だろう。
自身が狩ろうとしていた人間が、目の前にいるのだから。
「’こんに……ちは。私のぉ話している内容がわかりますかぁ?’」
「え?ヴァント。今日本語でなんか言った?」
『いえ、そこの狼が話しましたね。日本語で』
「………今時の狼って日本語で話すんだね。知らなかった」
『そんなわけないでしょう?今さっき、ガルガル威嚇してたでしょう?』
………。
確かに。
日本語で答えてみるか。
「’おう。わかるぞ?で、あんたは何なんだ?賢い狼って事でいいか?’」
「’やったぁ。久しぶりの日本人だぁ!’」
狼は、人間の俺から見ても明らかに喜びだした。
狼が人に言葉を話すのって、違和感しかないな。
それにしても、「久しぶりの日本人」って言ったか?
「’あんたも日本人なのか?’」
「’元だよっ!家でゲームしてたら、気づいたら狼になってて………。怖かったぁ!’」
ゲームだあ?
まさか………。
「’そのゲームって、『メモメモ』とかいうクソゲーじゃないか?’」
「’そうだけど………。まさか、お兄さんも?’」
「’ああ、『メモメモ』プレイヤーだ!で、この世界は『メモメモ』の世界なんだ!’」
「’ええっ!?なら、ここはパーリェンの雪山?地形が似てるとは思ったんだけど………。プレデテーラ•ウォーエルは?プレデテーラ•ウォーエルは今、どうなってるの?’」
地形を見て場所がわかるとは………。
コイツもガチ勢だな。
「’残念な事に、普通に生きてるぞ?’」
「’ええっ!!今、ルリアは何年生?まだ五年生にはなってないよね??’」
「’まだ、1年生だ。色々あって、廃人状態だが……’」
「’何があったのさ!まさか、お兄さんが?’」
………。
ちょっと、仕掛けてみるか。
「’いや。『精神干渉魔法』でな’」
「’何それ。そんな魔法、なかったと思うんだけど……’」
コイツは、元祖しかしてないな。
「’実は『メモメモ』には、続編があったそうだぞ?’」
「’ふぇ?’」
ってな感じのことを2時間くらい話し続けた。
お互い、メモメモの知識を語り明かす。
本当に、楽しかった。
「’ふぁぁ。ありがとね、お兄さん!’」
そう言って、狼はぐにゃぐにゃに変形しだし、ある姿に変わった。
長い絹のような白髪をもった裸の女。
普通の人間ではない。
狼の耳が頭についている。
モフモフな尻尾もある。
獣人とでも言うべきだろうか。
「’びっくりした?お兄さん!’」
「’服を着ろおおおおお!’」




