41話 メモメモに続編があった件
☆
寮に着いた次の日。
「こらあああああああ!剣術大会の準優勝者だからって、師匠の寮で生活するなああああああああ!」
朝っぱらからうるさいな。
よし、被り物を外して出迎えるか。
ガチャリ
「よお、ストック。久しぶりだな!」
「………は?」
あのストックがマヌケな顔をしている。
新鮮だな。
「え?師匠、ここは、バロイとかいうやつの寮に……」
「俺はエルンでもあり、バロイでもあるからな」
「…………」
明らかに納得がいってない様子だ。
「……皆に知らせてくる」
そう言って、ストックは玄関を飛び出していった。
………これは、面倒くさいことになりそうだな。
少し心配かけただろうから、紅茶くらいは用意しておくか。
20分後。
ガンガン
「平民!いるんでしょう?ドアを開けなさい!」
なんか、急にドアを開けたくなくなってきたな。
「エルン!何で居なくなるって言ってくれなかったのさ!」
「本当だぞ!」
「……おかげで、俺の隠れ蓑が……」
ニックは、相変わらずだ。
懐かしいな。
ガチャリ
「ぐああああああ」
………。
昭和みたいに、人が雪崩入ってきた。
「なに急に開けてんのよ!」
お前が開けろって言ったからだろ?
来たのは、カイル、ハンス、ニック、ストック、シャルロッテ、エリカ、アイリスの7人である。
「なんで、アイリスがいるんだ?」
「私が来てはいけませんでしたか?迷惑でしたか?」
笑顔で言ってやろう。
「………ものすごい迷惑だ」
「何ですって?レンツ王国の王女であるこの私が迷惑?貴方に力があるわけではないのに?」
「え?俺、あんたの軍を叩き潰したのに?」
「戯言を!貴方なんかがミサイルを持ってるわけありません!」
あれ?
俺があの戦いに首を突っ込んだことが知られていない?
まずったな。
それにしても、こいつ今、「ミサイル」って言ったよな?
「ミサイルが何かわからないが、エルンが貴方が惨敗した戦いで1番大きな戦果をあげた人間だぞ?」
ミサイルが何かわからない。
エリカのこの反応が、この世界での正しい反応だ。
となると……アイリスは俺と同じ転生者か?
少し、カマをかけてみるか。
「核融合炉を積んだ駆逐艦のレールガンとミサイルで、お前の艦隊を崩したのは俺だ」
俺と同じ、または俺のいた年代に近い人間の転生体なら、この文章の単語を理解できるはずだ。
「なんで『この世界』にそんなものがあるのですか!」
………確定だな。
「みんな。紅茶を淹れたから、飲んでいてくれ」
「エルンは?」
「少し、この黒髪女と話すことがある」
☆
俺の寝室。
「で、あんたは『メモメモ』プレイヤーか?」
「………はい。ところで、この口調、疲れるんでやめていいですか?」
「いいが?」
「わかったのじゃ!」
…………。
まさか、アイリスがノジャ系だとは思わなかった。
「前世は日本人か?」
「そうじゃ!令和から来たのじゃ!」
俺と同じだな。
「お前は『メモメモ』をどこまでプレイした?」
「ええっと、ラインハルト王子とメリッサが婚約を結ぶところまでなのじゃ!」
………。
誰だ?
俺はそんな名前知らないぞ?
「わしがやってたのは『メモメモ2』じゃ。元祖はプレイしておらん。あんな、レビュー☆1のゲームは」
「え?『メモメモ』に続編?」
ふざけんなよ?
「そうじゃ!舞台は、ラザフォード王国の属国になった20年後のレンツ王国!平民の娘、メリッサがラインハルト王子を落とすという物語じゃ。ちなみに、王子を落とせても、レンツがラザフォードから独立できていないとクリアにはならないのじゃ!」
……まさか。
「あのミャーチ空母とか、軍事用魔導水晶対策とか、妙に硬い結界とかって……」
「うむ!『メモメモ2』の要素じゃ!元祖の世界でも再現できたから、作ってみたのじゃ!」
そりゃあ、俺の知識にもないわけだわ。
「精神干渉魔法は?」
「これも『メモメモ2』の要素じゃ!ラザフォードの王宮の図書館に魔法の書がある。その中にある詠唱を覚えれば使えるぞ!まあ、図書館に入る許可をもらうのが面倒なんじゃが。そして、それを発展させたのが、お主の言う軍事用魔導水晶対策じゃな」
ん?
王宮の図書館?
ニックと学園長が精神干渉魔法の存在を知っているのはまだ理解できる。
何で、ルリアが精神干渉魔法を使えたんだ?
まさか、ルリアも転生者なのか?
「そんだけ『メモメモ2』の知識を動員しても、お主には敵わなかったんだがの」
………。
ヴァントは、公式チートみたいなもんだからな。
少し魔法文明が進んだところで、アレが生み出したラムラダには勝てない。
「元祖はレビュー☆1なんだろ?二代目はいくらなんだ?」
「☆4.4じゃ!『メモメモ2』は、元祖で使ったVR技術を撤廃し、ただのpcゲーになったのじゃ!」
「………まさか、他のキャラとの会話って……」
「選択肢じゃの!」
「畜生めぇぇぇぇぇぇぇ!」
☆
「エルンの部屋から叫び声がしたけど、大丈夫かい?」
全然大丈夫じゃないかもしれない。
アレに続編があったなんて。
俺を散々苦しめてきた、VR技術が撤廃されてるなんて。
「平民!この紅茶美味しいわ!茶葉をよこしなさい!」
「……本当に、うまいぞ……」
よかった。
マート製の紅茶は大好評だったな。
茶葉は渡さんぞ?
………。
「そういえば、ルリアを見てないな。あいつはどこいった?」
ドラグーンでも見かけてない。
いくら身分の差があるとはいえ、仲良さそうだったのにな。
「ああ、ルリアか………。それは………その……。」
なぜ渋る?
「何かあったのか?」
「じ、実は、ルリアは廃人になってしまったのだ……。今、病院で隔離されている」
え?




