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40話 寮出終了の件

 「ねえ、あの人たちって……」


 「剣術大会のチャンプとヴァイスチャンプだよな?なんで学園の魔導船に乗っているんだ?」


 学園生に紛れて、俺らは魔導船に乗っている。


 もちろん、学園に行く為である。


 「あ、お母さん?私、エルンストさんについて行くことにしたから」


 サーシャは、使い捨ての魔道通信用魔石で両親に連絡をとっている。


 『そう、あの人には感謝しても仕切れないわ。王家の呪いを村から完全に無くしてくれて。あの人を支えてあげてね?』


 「うん!」


 …………。


 なんとも、魔導通信とは不便なものだ。


 電話なら、相手が話していることは周りには聞こえずに済むのに。


 俺に話の内容が筒抜けである。


 おっ。


 窓から見えるあの海峡は、俺が泳いで渡ったやつだ。


 8ヶ月か。


 長いようで短かったな。


 「ちょっと良いか?」


 後ろから声がする。


 振り返ると、そこにいたのはエリカだった。

 

 「ええっと、バロイ殿とサーシャ殿だったよな?御二方は、なぜ学園に行くんだ?」


 「私は剣術の先生として、学園に行くことになりました!」


 「俺は……学生としてだな」


 何も間違ったことは言っていない。


 「ほう?バロイ殿は何歳なのだ?」


 「15歳」


 「なら、私達と同じ学年だな!」


 そりゃあ、元同級生ですから。


 「そういえば、エリカ嬢。パラベラム公爵が剣術大会に出ていたのをご存知か?」


 ………。


 なんか、俺の口調が変だな。


 「なに?そんなの聞いてないぞ!なんという登録名だったのだ?」


 「アルフ」


 「………父上には後でキチンと言い聞かせとかないとな」


 そんなこといってやんな。


 あいつは、お前が心配でドラグーンに行くついでに剣術大会に出たんだからさ。



 「ここが、貴方の寮だと学園長から承っております」


 …………。


 何日ぶりだろうか。


 自分の寮を見たのは。


 外装が全く変わっていない。


 誰かが整備してくれていたようだな。


 ガチャリ


 『おかえりなさい、マスター。だいぶマスターに似合ったファッションをしていますね(笑)』


 こいつの毒舌を聞いたのは久しぶりだな。


 リビングのテーブルの上に置いてあった通信リングを右手にはめる。


 「ただいま、ヴァント。それにしても、すぐ俺って気づいたな」


 『当然です。私のマスターですからね。あ、お母様より着信がありますが、どうしますか?』


 「もちろん出ていいよ」


 久しぶりのお袋である。


 『fctふゆvfchfcfhvぐjhvbhbdsf!うぇっfwbhwksfせうbふぇwkhふぇっれ!wfんjwんjf!wrwfkん:wr!rfwfjwめfjfs!』


 ………なんだって?


 母はなぜか少し老けているし、背景は応援旗が集まり過ぎて呪いの札みたいになってるし。


 『お母様は乱心のご様子ですね。』


 乱心か。


 確かに心が乱れているな。


 心配かけて、悪かった。


 「紅茶ってある?」


 『はい、いつもの棚に』


 茶葉を容器から絹の袋に入れ、お湯を注ぐ。


 「これだよ!これ!」


 どこぞやで飲んだ、センブリ茶なんて話にならない美味しさ。


 素晴らしい!


 魔法なんてなくても、この味が出せる。


 魔法がないと普通は不便な今の世界では、数少ない俺の心の支柱となっていた。


 『この8ヶ月を通して、何かお気づきになったことはありますか?』


 「そうだなあ。罪悪感は糧にできるってことかな」


 これが、俺のこの8ヶ月の中で1番大きな気づきだと思う。


 『そのような、どうでもいいことじゃなくてですね、』


 俺の1番の気づきがどうでもいいこと扱いにされてしまった。


 『「こういうのがあったら、もっと生活を便利にできるのにな」というものはありますか?』


 なるほど。


 そっちの気づきか。


 なんか欲しいものあるかなあ。


 「バイク、とか?」


 俺、魔法なくて魔導バイクに乗れなかったからな。

 

 おかげで、死にそうな目にあったし。


 『了解しました。どのようなバイクが良いですか?』

 

 「うーん。乗り心地が良くて、運動性能もあるやつかな?」


 『それなら、ネイキッドはいかがでしょうか』


 「ネイキッドってどんなやつだっけ?」


 『こんなやつです』


 ブワァン


 通信リングからホログラムウィンドウが出てきた。


 これを見るのも久しぶりだ。


 ネイキッドは、軍用でも使われるタイプのバイクらしい。


 見た目もかっこいいし、シートも幅が広いし、良さそうじゃん?


 「いいね。ネイキッドにするよ。色は軍用みたいに、濃い緑がいいな。少し迷彩効果もありそうだし」


 『迷彩効果ですか?バイクに光学迷彩をつければいいのでは?』


 「いや、つけんでいい」


 想像してみて欲しい。


 バイクが光学迷彩で完全に消えても、俺は消えれない。


 そんな状態でバイクに乗ってみろ。


 謎の体勢で、一定の高さで猛スピードで移動する人間が出来上がってしまう。


 シュールすぎる。


 『そうですか………。動力源は小型核融合炉でいいですよね?』


 「よくないよ?もし故障でもしたら、『ドーン!』じゃん!」


 これを谷底に落としたりするだけでも核兵器になる。


 『注文が多いですね。では、内燃機関にしましょうか。装甲上、1500馬力ほど欲しいので、v 12のクアッドターボになりますが………』


 「ちょっと待て、どんな装甲にするつもりなんだ?」


 『空間圧縮で3mmにした、実質厚さ50cmの装甲です。素材は戦艦ヴァントと同じのに……』


 「なんでバイクの装甲が戦艦大和の装甲よりも厚いのさ!そんなに厚くなくていいよ!実質3cmくらいで!」


 ちなみに、それでもイージス艦のよりも厚いのである。


 『………了解しました。なら、300馬力程度でいいのでv6ですね。マート星で作らせましょう』


 さて、どんなバイクができるのやら。


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