40話 寮出終了の件
☆
「ねえ、あの人たちって……」
「剣術大会のチャンプとヴァイスチャンプだよな?なんで学園の魔導船に乗っているんだ?」
学園生に紛れて、俺らは魔導船に乗っている。
もちろん、学園に行く為である。
「あ、お母さん?私、エルンストさんについて行くことにしたから」
サーシャは、使い捨ての魔道通信用魔石で両親に連絡をとっている。
『そう、あの人には感謝しても仕切れないわ。王家の呪いを村から完全に無くしてくれて。あの人を支えてあげてね?』
「うん!」
…………。
なんとも、魔導通信とは不便なものだ。
電話なら、相手が話していることは周りには聞こえずに済むのに。
俺に話の内容が筒抜けである。
おっ。
窓から見えるあの海峡は、俺が泳いで渡ったやつだ。
8ヶ月か。
長いようで短かったな。
「ちょっと良いか?」
後ろから声がする。
振り返ると、そこにいたのはエリカだった。
「ええっと、バロイ殿とサーシャ殿だったよな?御二方は、なぜ学園に行くんだ?」
「私は剣術の先生として、学園に行くことになりました!」
「俺は……学生としてだな」
何も間違ったことは言っていない。
「ほう?バロイ殿は何歳なのだ?」
「15歳」
「なら、私達と同じ学年だな!」
そりゃあ、元同級生ですから。
「そういえば、エリカ嬢。パラベラム公爵が剣術大会に出ていたのをご存知か?」
………。
なんか、俺の口調が変だな。
「なに?そんなの聞いてないぞ!なんという登録名だったのだ?」
「アルフ」
「………父上には後でキチンと言い聞かせとかないとな」
そんなこといってやんな。
あいつは、お前が心配でドラグーンに行くついでに剣術大会に出たんだからさ。
☆
「ここが、貴方の寮だと学園長から承っております」
…………。
何日ぶりだろうか。
自分の寮を見たのは。
外装が全く変わっていない。
誰かが整備してくれていたようだな。
ガチャリ
『おかえりなさい、マスター。だいぶマスターに似合ったファッションをしていますね(笑)』
こいつの毒舌を聞いたのは久しぶりだな。
リビングのテーブルの上に置いてあった通信リングを右手にはめる。
「ただいま、ヴァント。それにしても、すぐ俺って気づいたな」
『当然です。私のマスターですからね。あ、お母様より着信がありますが、どうしますか?』
「もちろん出ていいよ」
久しぶりのお袋である。
『fctふゆvfchfcfhvぐjhvbhbdsf!うぇっfwbhwksfせうbふぇwkhふぇっれ!wfんjwんjf!wrwfkん:wr!rfwfjwめfjfs!』
………なんだって?
母はなぜか少し老けているし、背景は応援旗が集まり過ぎて呪いの札みたいになってるし。
『お母様は乱心のご様子ですね。』
乱心か。
確かに心が乱れているな。
心配かけて、悪かった。
「紅茶ってある?」
『はい、いつもの棚に』
茶葉を容器から絹の袋に入れ、お湯を注ぐ。
「これだよ!これ!」
どこぞやで飲んだ、センブリ茶なんて話にならない美味しさ。
素晴らしい!
魔法なんてなくても、この味が出せる。
魔法がないと普通は不便な今の世界では、数少ない俺の心の支柱となっていた。
『この8ヶ月を通して、何かお気づきになったことはありますか?』
「そうだなあ。罪悪感は糧にできるってことかな」
これが、俺のこの8ヶ月の中で1番大きな気づきだと思う。
『そのような、どうでもいいことじゃなくてですね、』
俺の1番の気づきがどうでもいいこと扱いにされてしまった。
『「こういうのがあったら、もっと生活を便利にできるのにな」というものはありますか?』
なるほど。
そっちの気づきか。
なんか欲しいものあるかなあ。
「バイク、とか?」
俺、魔法なくて魔導バイクに乗れなかったからな。
おかげで、死にそうな目にあったし。
『了解しました。どのようなバイクが良いですか?』
「うーん。乗り心地が良くて、運動性能もあるやつかな?」
『それなら、ネイキッドはいかがでしょうか』
「ネイキッドってどんなやつだっけ?」
『こんなやつです』
ブワァン
通信リングからホログラムウィンドウが出てきた。
これを見るのも久しぶりだ。
ネイキッドは、軍用でも使われるタイプのバイクらしい。
見た目もかっこいいし、シートも幅が広いし、良さそうじゃん?
「いいね。ネイキッドにするよ。色は軍用みたいに、濃い緑がいいな。少し迷彩効果もありそうだし」
『迷彩効果ですか?バイクに光学迷彩をつければいいのでは?』
「いや、つけんでいい」
想像してみて欲しい。
バイクが光学迷彩で完全に消えても、俺は消えれない。
そんな状態でバイクに乗ってみろ。
謎の体勢で、一定の高さで猛スピードで移動する人間が出来上がってしまう。
シュールすぎる。
『そうですか………。動力源は小型核融合炉でいいですよね?』
「よくないよ?もし故障でもしたら、『ドーン!』じゃん!」
これを谷底に落としたりするだけでも核兵器になる。
『注文が多いですね。では、内燃機関にしましょうか。装甲上、1500馬力ほど欲しいので、v 12のクアッドターボになりますが………』
「ちょっと待て、どんな装甲にするつもりなんだ?」
『空間圧縮で3mmにした、実質厚さ50cmの装甲です。素材は戦艦ヴァントと同じのに……』
「なんでバイクの装甲が戦艦大和の装甲よりも厚いのさ!そんなに厚くなくていいよ!実質3cmくらいで!」
ちなみに、それでもイージス艦のよりも厚いのである。
『………了解しました。なら、300馬力程度でいいのでv6ですね。マート星で作らせましょう』
さて、どんなバイクができるのやら。




