39話 寂しそうな件
なぜか飛ばされたいた、39話です。
☆
国王から出発は明日の朝だと言われた後、俺らは宿に戻った。
色々あって食事をとっていなかったため、食堂で女将に食べれるものを頼んだ。
出てきたのは、白パンと肉入りシチュー。
シチューといっても、日本人にとってのシチューではない。
どちらかと言えば、ドーブに近い。
シチューの元々の意味は「煮込み料理」。
白くないことに驚いたことに、少し日本人を感じた。
「サーシャ。本当に良かったのか?」
「いいんですよ………」
今のサーシャはどこか寂しそうで、それでいて内なる恨みを秘めているかのようだ。
両親の事を考えているのだろうか。
今までの生活のことを考えているのだろうか。
俺を恨んでいるのだろうか。
俺にはわからない。
さっきまでの明るいサーシャはどこに消えた?
何が、さっきまでのサーシャを変えた?
「あんた。そんな顔をしないでいいじゃないか。シチューが冷めるよ?」
宿の女将は、サーシャの肩に手を添えて言った。
俺は食事中であったことを思い出し、パンをシチューに浸して食べた。
行儀は悪いのかもしれない。
ただ、シチューの水分がなければ、パンが口から水分を全て奪ってしまいそうな気がした。
味は、そこそこ。
学園の平民用のスープよりは随分と美味い。
比較対象が悪いな。
「エルンストさん。私は今、どんな顔をしていますか?」
サーシャは、シチューを飲むことすらせずに聞いてきた。
率直に言ってもよいものだろうか。
サーシャがこうなった理由が分からない今、率直に言うことは精神を痛めつける可能性が出てくる。
「路地裏から出てきたら、腰を抜かしそうな顔だな」
「そうですか……。私は今、そんな顔を………」
その顔は、無意識によるもののようだ。
知らぬ間に自分を偽り、偽りきれなかった部分が漏れ出しているのだろう。
「ごめんな………」
「謝らないで下さい。これは、私の問題です………」
そんな顔で、そんなことを言わないでくれ。
俺のせいでこんなことになったんだろうに。
「何を悩んでいるんだ?」
サーシャがこれに答えるのなら、無理矢理サーシャの抱えているものを俺にも抱えさせることができる。
少しばかり強引かもしれない。
だが、こうするしかないだろう。
「エルンストさんには関係ないことです……」
「言ってくれ」
「言えません!エルンストさんの邪魔をしたくはありません!」
「…………」
なあ。
何でお前はそんなに優しいんだ?
そこまでして、俺に尽くさなくてもいいじゃないか。
村を救ったことに恩義を感じているのか?
母を救ったことの恩義を、自分を隠してまで返そうとしているのか?
「言ってくれ。お願いだから、言ってくれよ!」
「………怒りませんか?」
「怒るわけないだろう?」
いや、違うな。
怒れないのだ。
「魔導バイクをどうしようと思って………。魔導バイクは村に3台しかないんです。その内の1台を放置するのは………」
………。
自意識過剰ですいませんでした。
☆
ドンドンドン
王家所有の民家のドアを叩く。
「陛下ー。いますかぁ?いますよねぇ?」
「えーい!やかましい!誰じゃ、こんな夜中に!」
「俺です、俺!俺ですよ?わかりますよね?」
オレオレ詐欺みたいになっちゃったな。
「エルンですよ!」
「お主か!後もう少しで、兵を呼ぶところだったぞ?で、何の用だ?」
「ああ、ドラグーンの近くの森にある洞窟の中に、魔導バイクが1台あるはずなんですよ」
「で、それをどうしろと?」
「ファーメル村ってところに届けて欲しいです」
「お主は国王を何だと思ってるんだ!」
この王国の象徴であり、レオンとニックの父親くらいとしか思っていない。
「やっていただけますよね?」
「断ったら、どうするつもりだ?」
うーん。
地味に迷惑なことをするか。
「そうですねぇ。朝まで扉を叩き続けます」
「………うーむ…………。わかった。やっておこう」
よかった。
問題解決だな。
「これでいいよな、サーシャ?」
「はい!ありがとうございます!それにしても、大丈夫なんですか?陛下を荷物運びみたいにして」
「大丈夫だろ」
俺を指名手配した仕返しだな。
アレのせいで、どれだけ俺が動きにくかったか。
少し、スッキリしたな。




