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39話 寂しそうな件

なぜか飛ばされたいた、39話です。

 国王から出発は明日の朝だと言われた後、俺らは宿に戻った。


 色々あって食事をとっていなかったため、食堂で女将に食べれるものを頼んだ。


 出てきたのは、白パンと肉入りシチュー。


 シチューといっても、日本人にとってのシチューではない。


 どちらかと言えば、ドーブに近い。


 シチューの元々の意味は「煮込み料理」。


 白くないことに驚いたことに、少し日本人を感じた。


 「サーシャ。本当に良かったのか?」


 「いいんですよ………」


 今のサーシャはどこか寂しそうで、それでいて内なる恨みを秘めているかのようだ。


 両親の事を考えているのだろうか。


 今までの生活のことを考えているのだろうか。


 俺を恨んでいるのだろうか。


 俺にはわからない。


 さっきまでの明るいサーシャはどこに消えた?


 何が、さっきまでのサーシャを変えた?


 「あんた。そんな顔をしないでいいじゃないか。シチューが冷めるよ?」


 宿の女将は、サーシャの肩に手を添えて言った。


 俺は食事中であったことを思い出し、パンをシチューに浸して食べた。


 行儀は悪いのかもしれない。


 ただ、シチューの水分がなければ、パンが口から水分を全て奪ってしまいそうな気がした。


 味は、そこそこ。


 学園の平民用のスープよりは随分と美味い。


 比較対象が悪いな。


 「エルンストさん。私は今、どんな顔をしていますか?」


 サーシャは、シチューを飲むことすらせずに聞いてきた。


 率直に言ってもよいものだろうか。


 サーシャがこうなった理由が分からない今、率直に言うことは精神を痛めつける可能性が出てくる。


 「路地裏から出てきたら、腰を抜かしそうな顔だな」


 「そうですか……。私は今、そんな顔を………」


 その顔は、無意識によるもののようだ。


 知らぬ間に自分を偽り、偽りきれなかった部分が漏れ出しているのだろう。


 「ごめんな………」


 「謝らないで下さい。これは、私の問題です………」


 そんな顔で、そんなことを言わないでくれ。


 俺のせいでこんなことになったんだろうに。


 「何を悩んでいるんだ?」


 サーシャがこれに答えるのなら、無理矢理サーシャの抱えているものを俺にも抱えさせることができる。


 少しばかり強引かもしれない。


 だが、こうするしかないだろう。


 「エルンストさんには関係ないことです……」


 「言ってくれ」


 「言えません!エルンストさんの邪魔をしたくはありません!」


 「…………」


 なあ。


 何でお前はそんなに優しいんだ?


 そこまでして、俺に尽くさなくてもいいじゃないか。


 村を救ったことに恩義を感じているのか?


 母を救ったことの恩義を、自分を隠してまで返そうとしているのか?


 「言ってくれ。お願いだから、言ってくれよ!」


 「………怒りませんか?」


 「怒るわけないだろう?」


 いや、違うな。


 怒れないのだ。

 

 「魔導バイクをどうしようと思って………。魔導バイクは村に3台しかないんです。その内の1台を放置するのは………」


 ………。


 自意識過剰ですいませんでした。



 ドンドンドン


 王家所有の民家のドアを叩く。


 「陛下ー。いますかぁ?いますよねぇ?」


 「えーい!やかましい!誰じゃ、こんな夜中に!」


 「俺です、俺!俺ですよ?わかりますよね?」


 オレオレ詐欺みたいになっちゃったな。


 「エルンですよ!」


 「お主か!後もう少しで、兵を呼ぶところだったぞ?で、何の用だ?」


 「ああ、ドラグーンの近くの森にある洞窟の中に、魔導バイクが1台あるはずなんですよ」


 「で、それをどうしろと?」


 「ファーメル村ってところに届けて欲しいです」


 「お主は国王を何だと思ってるんだ!」


 この王国の象徴であり、レオンとニックの父親くらいとしか思っていない。


 「やっていただけますよね?」


 「断ったら、どうするつもりだ?」


 うーん。


 地味に迷惑なことをするか。


 「そうですねぇ。朝まで扉を叩き続けます」


 「………うーむ…………。わかった。やっておこう」


 よかった。


 問題解決だな。


 「これでいいよな、サーシャ?」


 「はい!ありがとうございます!それにしても、大丈夫なんですか?陛下を荷物運びみたいにして」


 「大丈夫だろ」


 俺を指名手配した仕返しだな。


 アレのせいで、どれだけ俺が動きにくかったか。


 少し、スッキリしたな。


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