42話 見舞いに行く件
☆
俺はルリアを見舞いに、学園都市の病院に行くことにした。
俺について来たのは、ニック、アイリスの2人。
まあ、正確に言えばアイリスは俺に連れて来さされたのだが。
「なんでルリアは廃人になったんだ?」
「………わからない……。…エリカ嬢が言うには、エルンが消えてから様子がおかしくなり始めたらしい。急に笑い出したり、急に泣いたり、急に怒ったり……」
え?
俺のせいなのか?
「……それで、確かエルンが消えて10日後に急に動かなくなったらしい…。おっ、ルリアの部屋についたぞ」
ガタガタガタ
扉を開けると、その中は薄暗く、言葉では表現できない匂いがした。
部屋の中に入る。
「なんだこれ、鎖?」
ベットの上にいたのは、手足を鎖で固定されたルリア。
暴れ出す事があるのか?
瞬きをしているため、意識はあるんだろうな。
「ルリア、聞こえるか?」
「うーー」
「俺が帰って来たぞ」
「あーー」
その後、俺がどれだけ呼びかけても、ルリアは「あーー」か「うーー」で返答するだけだった。
「言語能力が落ちてるな………」
言語能力が落ちる原因は主に二つ。
言語を忘れることと、思考がなくなることである。
「これ、自分で精神干渉魔法を掛け続けてますね。ルリアさんに魔力はあるはずなのに、魔力波の波形が一直線です」
「なに?本当か?」
「ええ、魔力波弄ってみますね」
「ギャハハハハハハハハハハハハハハハ!」
急に笑い出すルリア。
「本当に、精神干渉だったんだな。ルリアはどうやったら元に戻ると思う?」
「ルリア固有の魔力波を再現するのが1番ですが、流石に私にはわかりません。魔力波を弄り続けて、脳に刺激を送り続けるしかないでしょう」
さらに、アイリスが魔力波を弄る。
「ふざけないでよ!神様!私はルリアには相応しくない!何でわたしなのよ!」
「あ。ちょっと、ニック、部屋から出てくれる?」
「……いいが…」
ルリアも転生者である事が確定した。
流石に、ニックに転生者云々を聞かれるのは不味すぎる。
「あんのエルンとかいうクソ男め!私の邪魔ばっかりして!」
今度は俺への文句か。
ルリアを拘束していた鎖が「ジャラジャラ」と音をたてる。
余程腹が立っていたのだろう。
「だいたい、レオンも何なのよ!あんなクズ男だったの?『メモメモ』運営は何で私にあんなゴミを落とさせようとしてたのよ!」
…………。
それは共感する。
「あ、アイリス。ちょっと止めてみて」
「わかったのじゃ!」
「……………」
駄目か。
また無気力な彼女に戻ってしまった。
「わしが精神干渉魔法を止めると、すぐに自分で掛け始めるな。これはどうしようもないぞ?」
「魔力切れを待つとか?」
「困ったことに、精神干渉魔法は高度な技術が必要なくせに、ほぼ魔力を消費しないのじゃ!」
『なら、魔臓を取り除けば良いのでは?』
「エルン!右手が喋ったのじゃ!」
こういうのも、久しぶりだな。
前は、大精霊って言い張ってたっけ?
「こいつは元祖のレリックのヴァント。お前達を屠った駆逐艦を作ったシステムみたいなもんだな」
「レリックって、なんなのじゃ?」
は?
二作目はレリックが存在しないのか?
「うーん。大昔の超機械文明の遺産、っていうのが1番わかりやすいかな。知ってたか?この世界は異世界じゃないんだぞ?」
「なに?」
「俺らのいた時代よりの未来なんだってさ」
「そんな設定、初めて知ったのじゃ!」
俺も、ヴァントからそのことを聞いた時は同じようなことを思ったな。
『マスター、ルリアはどうしますか?』
どうしようか。
確かに魔臓を取り除いたら、精神干渉魔法は解けるだろう。
だが、精神干渉魔法が解けた後のルリアは納得するのだろうか。
魔力がなくなるのを、ルリアは素直に受け入れることができるだろうか。
ルリアの意志を考えなくても良いのだろうか。
「今日は、一旦帰るか」
「わかったのじゃ!」
☆
俺の寮から皆が帰った後、俺は料理をしていた。
金はなぜか国王から渡されていたので、食材は高級なものを買うことができた。
どのくらい金を渡されたかって?
白金貨10枚………といっても、貨幣について説明してなかったな。
最小単位は木貨、1円相当である。
木は腐るだろうって?
保護魔法がかけられているから、その辺は大丈夫なんだってさ。
次に鉄貨、銅貨、大銅貨、銀貨、大銀貨、金貨、大金貨、白金貨、大白金貨、星金貨となっていっており、価値は10倍ずつ大きくなっている。
つまり、俺は10億円貰ったのだ。
俺は、食材は高級なものじゃなくてもよかった。
なんで高級なものにしたと思う?
普通の市場で、玉ねぎ3玉を買うのに白金貨を出したらどうなる?
市場ごときが、膨大なお釣りを返せると思うか?
つまり、そういうことだ。
作っている料理は、ボロネーゼ。
前世では、7番目に好きな料理である。
1番目は何か、って?
瓦そば、ってわかるかな?
前世で山口県に旅行に行った事があるのだが、料亭で出て来た瓦そばを食べて、惚れてしまったのだ。
コンコン
お、誰か来たな。
ガチャリ
「どなたですか?」
「私だ」
来たのは、まさかの国王だった。
「国王陛下………護衛も連れずに何しに来たんすか?」
「えー、エルン。そなたを準男爵に任ずる!」
………。
は?
急すぎるな。
何で叙勲されるかはわかる。
あの戦いの件だよな?
でも正直、貴族とかなりたくないんだよな。
「拒否していいすか?」
「駄目だ」
「まじすか?」
「あ、これをお主に渡しておこう。準男爵の認定書だ」
……すごい仰々しい紙だな。
正直、今すぐ破り捨てたい。
でも、そんなことすると捕まるんだろうな。
国王から賜ったものを破り捨てるとはなんたる不敬、って。
「お前の寮の中からとてもいい匂いがするのだが。夕食をここで食べていいか?」
「うちはレストランじゃありませんよ。お帰り下さい」




