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42話 見舞いに行く件

 俺はルリアを見舞いに、学園都市の病院に行くことにした。


 俺について来たのは、ニック、アイリスの2人。


 まあ、正確に言えばアイリスは俺に連れて来さされたのだが。


 「なんでルリアは廃人になったんだ?」


 「………わからない……。…エリカ嬢が言うには、エルンが消えてから様子がおかしくなり始めたらしい。急に笑い出したり、急に泣いたり、急に怒ったり……」


 え?


 俺のせいなのか?


 「……それで、確かエルンが消えて10日後に急に動かなくなったらしい…。おっ、ルリアの部屋についたぞ」


 ガタガタガタ


 扉を開けると、その中は薄暗く、言葉では表現できない匂いがした。


 部屋の中に入る。


 「なんだこれ、鎖?」


 ベットの上にいたのは、手足を鎖で固定されたルリア。


 暴れ出す事があるのか?


 瞬きをしているため、意識はあるんだろうな。


 「ルリア、聞こえるか?」


 「うーー」


 「俺が帰って来たぞ」


 「あーー」

 

 その後、俺がどれだけ呼びかけても、ルリアは「あーー」か「うーー」で返答するだけだった。


 「言語能力が落ちてるな………」


 言語能力が落ちる原因は主に二つ。


 言語を忘れることと、思考がなくなることである。


 「これ、自分で精神干渉魔法を掛け続けてますね。ルリアさんに魔力はあるはずなのに、魔力波の波形が一直線です」


 「なに?本当か?」


 「ええ、魔力波弄ってみますね」


 「ギャハハハハハハハハハハハハハハハ!」


 急に笑い出すルリア。


 「本当に、精神干渉だったんだな。ルリアはどうやったら元に戻ると思う?」


 「ルリア固有の魔力波を再現するのが1番ですが、流石に私にはわかりません。魔力波を弄り続けて、脳に刺激を送り続けるしかないでしょう」


 さらに、アイリスが魔力波を弄る。


 「ふざけないでよ!神様!私はルリアには相応しくない!何でわたしなのよ!」


 「あ。ちょっと、ニック、部屋から出てくれる?」


 「……いいが…」


 ルリアも転生者である事が確定した。


 流石に、ニックに転生者云々を聞かれるのは不味すぎる。


 「あんのエルンとかいうクソ男め!私の邪魔ばっかりして!」


 今度は俺への文句か。


 ルリアを拘束していた鎖が「ジャラジャラ」と音をたてる。


 余程腹が立っていたのだろう。


 「だいたい、レオンも何なのよ!あんなクズ男だったの?『メモメモ』運営は何で私にあんなゴミを落とさせようとしてたのよ!」


 …………。


 それは共感する。


 「あ、アイリス。ちょっと止めてみて」


 「わかったのじゃ!」


 「……………」


 駄目か。


 また無気力な彼女に戻ってしまった。


 「わしが精神干渉魔法を止めると、すぐに自分で掛け始めるな。これはどうしようもないぞ?」


 「魔力切れを待つとか?」


 「困ったことに、精神干渉魔法は高度な技術が必要なくせに、ほぼ魔力を消費しないのじゃ!」

 

 『なら、魔臓を取り除けば良いのでは?』


 「エルン!右手が喋ったのじゃ!」


 こういうのも、久しぶりだな。


 前は、大精霊って言い張ってたっけ?

 

 「こいつは元祖のレリックのヴァント。お前達を屠った駆逐艦を作ったシステムみたいなもんだな」


 「レリックって、なんなのじゃ?」


 は?

 

 二作目はレリックが存在しないのか?


 「うーん。大昔の超機械文明の遺産、っていうのが1番わかりやすいかな。知ってたか?この世界は異世界じゃないんだぞ?」


 「なに?」


 「俺らのいた時代よりの未来なんだってさ」


 「そんな設定、初めて知ったのじゃ!」


 俺も、ヴァントからそのことを聞いた時は同じようなことを思ったな。


 『マスター、ルリアはどうしますか?』


 どうしようか。


 確かに魔臓を取り除いたら、精神干渉魔法は解けるだろう。


 だが、精神干渉魔法が解けた後のルリアは納得するのだろうか。


 魔力がなくなるのを、ルリアは素直に受け入れることができるだろうか。


 ルリアの意志を考えなくても良いのだろうか。


 「今日は、一旦帰るか」


 「わかったのじゃ!」



 俺の寮から皆が帰った後、俺は料理をしていた。


 金はなぜか国王から渡されていたので、食材は高級なものを買うことができた。


 どのくらい金を渡されたかって?


 白金貨10枚………といっても、貨幣について説明してなかったな。


 最小単位は木貨、1円相当である。


 木は腐るだろうって?


 保護魔法がかけられているから、その辺は大丈夫なんだってさ。


 次に鉄貨、銅貨、大銅貨、銀貨、大銀貨、金貨、大金貨、白金貨、大白金貨、星金貨となっていっており、価値は10倍ずつ大きくなっている。


 つまり、俺は10億円貰ったのだ。


 俺は、食材は高級なものじゃなくてもよかった。


 なんで高級なものにしたと思う?


 普通の市場で、玉ねぎ3玉を買うのに白金貨を出したらどうなる?


 市場ごときが、膨大なお釣りを返せると思うか?


 つまり、そういうことだ。


 作っている料理は、ボロネーゼ。


 前世では、7番目に好きな料理である。


 1番目は何か、って?


 瓦そば、ってわかるかな?


 前世で山口県に旅行に行った事があるのだが、料亭で出て来た瓦そばを食べて、惚れてしまったのだ。


 コンコン


 お、誰か来たな。


 ガチャリ


 「どなたですか?」


 「私だ」


 来たのは、まさかの国王だった。


 「国王陛下………護衛も連れずに何しに来たんすか?」


 「えー、エルン。そなたを準男爵に任ずる!」


 ………。


 は?


 急すぎるな。


 何で叙勲されるかはわかる。


 あの戦いの件だよな?


 でも正直、貴族とかなりたくないんだよな。


 「拒否していいすか?」


 「駄目だ」


 「まじすか?」

 

 「あ、これをお主に渡しておこう。準男爵の認定書だ」

 

 ……すごい仰々しい紙だな。


 正直、今すぐ破り捨てたい。


 でも、そんなことすると捕まるんだろうな。


 国王から賜ったものを破り捨てるとはなんたる不敬、って。


 「お前の寮の中からとてもいい匂いがするのだが。夕食をここで食べていいか?」


 「うちはレストランじゃありませんよ。お帰り下さい」

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