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4話 ヴァントを取りに行く件

 俺はマート星に行くために、親父からあるものを貰った。


 「バル」という廉価超小型宇宙船のようなものだ。


 航行石が少量で作れることが特徴の、半径5mほどの腕つき球体である。


 別名、「空飛ぶ棺桶」。


 装甲がペラいのだ。


 宇宙に浮かんでるデブリにぶつかれば即大破。


 ゲーム中で、何回戦闘中に宇宙のデブリにぶつかりゲームオーバーになったことか。


 多分20回は超えている。


 おかげで、俺はバルのプロである。


 食料等必要なものを死ぬほど積み込み、俺のサイズに合った宇宙服も買ってもらう。


 ちなみに、俺が今いる惑星、イタからマートまでは、一応「高速魔道路」という道で繋がっている。


 いわゆる、宇宙の高速道路である。


 そのおかげで、マート星までは片道3日である。


 しかし、難点なのは、高速魔道路内にも、デブリが存在するということだ。


 とんでもない速さになったバルで、デブリを避けないといけない。


 前世で死ぬほど鍛えた俺じゃなかったら、多分死ぬね!


 「じゃあ行ってきます、お父さん、お母さん」


 「ああ」


 「いってらっしゃい、エルンスト」


 俺は、バルに乗り、高速魔道路に飛び込んだ。



 「エルンストは大丈夫でしょうか」


 エルンストの母、ベアトリスは涙目で夫のフレデリックに語りかける。


 「大丈夫だろう、きっと時々顔を見せに帰ってくるさ」


 そう言いながら、正直エルンストが帰ってくるはずがないとフレデリックは考えている。


 理由は、高速魔道路をバルで抜けるのは自殺行為だからだ。


 ちなみに、そのことをベアトリスは知らない。


 マート星が不毛な星であることも知らない。


 そのため、ベアトリスは、エルンストに惑星が与えられると知って涙が出るほど喜び、高速魔道路にエルンストが入った時も、ただ、息子が立派になったと感動した。


 フレデリックは、もうあの邪魔な息子の顔を見なくて良いことが嬉しかった。


 「……エルンストの無事を祈って、今夜はパーティーでもするか」


 「そうですね」


 この二人の内心は正反対だった。



 よーし。


 もう子供っぽい口調使わないで良いな。


 「ふんっ!」


 やっぱデブリがあるねえ。


 当たらないけど。


 食料をポリポリ齧りながら、バルを巧みに操作する俺。


 かっこいいね!


 え?


 カッコよくない?


 おだまり!


 おっと。


 デブリ郡だ。


 右左左上上右下下そのまま…………


 命をかけた音ゲーだな。


 これを後3日。


 「メモメモ」プレイヤーを舐めるなよ?




 高速魔道路を抜けるとすぐに、マート星が見えて来た。


 地下へのゲートがある座標は……確か(243,680)。


 ……だったよな?


 (0,0)を探すか。


 原点には、漢字の「凸」の形をしたクレーターがあるはずである。


 えーっと、どこだ?


 あー、あれだわ。


 バルの魔道ビーコンに原点をセットし、ゲートのある座標を示させる。


 すると、バルの映像投影用結界魔法石(CCTVみたいなもの)がバルの壁に写し出す外の風景に、光る場所が浮き出て来る。


 よし、その場所に行こう。



 えーっと、あそこだな。


 ビーコンの示すところには、灰色の平地に、先が太くなっている一本の棒が刺さっている。


 一本の棒。


 つまりは、マイクである。


 頑張って着陸しよう。


 航行石を使ったものの着陸は非常に簡単である。

 

 落下する速度を設定しするだけ。


 スラスターの出力を調整しながら着陸しないとぶっ壊れる21世紀の宇宙船とは違う。


 よし、着陸成功だ。


 俺はバルを出た。


 マート星の空気には、酸素が地球のアルゴン程度しか含まれていない。


 バルには、「生命維持に適した空気」を作り出す魔石を積んであるため、宇宙服を着る必要はなかったが、バルを出るとそうはいかない。


 ちゃんと、宇宙服を着ている。


 宇宙服を着て星を歩く、なんて言うと、月でのふわふわした歩行が思い浮かぶかもしれないが、マート星は地球サイズ。


 重力は地球より少し弱い程度であるため、宇宙服はちゃんと重いのだ。


 ゼェゼェ言いながらマイクの下に歩いて行く。 


 

 マイクのそばについた。


 起動キーを言わなければ。


 さて、問題です。


 起動キーは何でしょうか。


 チックタックチックタック。


 答えは〜〜〜〜


 「プラバート・ソムデット・プラ・パラミントラ・マハー・チュラーロンコーン・ボディントラ・テープ・パマハームングット・ブルサヤラット・ラーチャラウィウォン・ワルッタマポン・ボリパット・ウォラカッティヤ・ラーチャニクローダム・チャトゥラン・ボロムマハー・ジャッカパットラート・サンカト・ウパトー・スチャート・サンスッタ・クロハニー・ジャクリー・ボロムマナート・マハームングット・ラーチャワランクーン・スチャリットムーン・スサーティット・アッカウクリット・パイブーン・ブラパードゥーン・クリサダーピニハーン・スパティカーン・ランサリット・タンヤラック・ウィチット・ソーパーク・サッパパン・マハー・チャノータマーン・プラノット・バートボンコット・ユコン・プラシット・サッパスパポン・ウドム・ボロム・スクムマーン・ティッパヤ・テパーワターン・パイサーン・キアッティクン・アドゥンヤピセート・サッパテーウェート・ラーヌラック・ウィシッタサック・ソムニャー・ピニット・プラチャーナート・プレームグラモン・カッティヤ・ラーチャプラユーン・ムーン・ムックマータヤーピロム・ウドム・デーチャーティカーン・ボリーン・クンナサーン・サヤーマーティ・ナコン・ワルッタ・メータラート・ディロック・マハー・パリワーン・ナーヨック・アナン・マハンタ・ウォラリット・デート・サッパウィセート・シリントーン・アネーク・チョンニゴーン・サモーソーン・ソムムット・プラシット・ウォラヨット・マホードム・ボロムラーチャ・ソンバット・ノッパパドン・サウェータチャット・ラーディチャット・シリラッタノー・パラック・マハー・ボロム・ラーチャーピセー・ガーピリット・サッパ・トッサティット・ウィチットチャイ・サコン・マハイサワリヤ・マハースワーミーン・マヘースワン・マヒントラ・マハーラーマーティラート・ワロダム・ボロムマナート・チャート・アーチャーワサイ・プッターティ・トライラッタナ・サラナーラック・アドゥンヤサック・アッカナレート・ラーティボディー・メッター・カルナー・シータラハルタイ・アノーパマイ・ブンヤカーン・サコン・パイサーン・マハーラサダーティ・ボディン・パラミントラ・タンミガ・ハーラーチャーティラート・ボロムマナート・ボピット・プラ・チュンラチョームクラオ・チャオユーフア」


 まじで製作者ふざけんな、と思う。


 何が悲しくて、ラーマ5世の真名なんて覚えなければならないのだろう。


 「メモメモ」がpcゲーだったらモニターの側にカンペを置いて、チラ見しながらマイクに唱えたのだが、悲しきかな「メモメモ」はVRゲー。


 カンペを見ながらとか、できない。


 『Activation Key Approval!Please say the language you wish to use into the microphone.』


 起動したな。


 どこにあるのかわからないスピーカーから聞こえて来たのは、懐かしき英語である。


 俺がプレイしていたのは「メモメモ」の日本語版だったから、そんな言語の選択とかなかったのだが。


 『日本語』


 『言語設定が完了しました。人口知能ヴァント、再起動。………再起動が完了しました』


 え。


 ヴァントって7000m級の名前じゃなかったっけ?


 ………。


 まあ、「メモメモ」と違うところがあるのは仕方がないか。


 『6番ゲートを開放します。お足元にご注意ください』


読んでくれてありがとうございます。面白いと感じてくださった方は、評価、ブックマークをしてもらえると嬉しいです。

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