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3話 魔法が使えない件

 「エルンスト〜〜。今日からの練習ね〜」


 俺は2歳である。


 2歳児に剣を持たせるのはいかがなものかと思う。


 この世界の人間は寿命が少し長い。


 平均寿命は120歳ほどだろうか。


 俺のグレートグレートグランドファザーが生きている。


 ………。


 カッコつけるのはやめよう。


 俺の高祖父が生きているのだ。


 寿命はそんだけあるのに、なぜ2歳から剣を持つ必要があろうか。


 「どうして?お母さん」


 2歳児口調で聞いてみる。


 「エルンストはね、私の子なの。私は側室で、立場が弱いの。私が魔法を使えないせいでエルンストもきっと魔法が使えない。だからね、剣を頑張るしかないの」


 へえ。


 俺って魔法使えないんだ。


 詠唱しなくて良いのはありがたいけど。


 ………。


 じゃあ、エルンストって凄くね?


 「メモメモ」に出てくるラザフォード学園に通ってた人間は、剣と魔法と座学の総合成績が優秀じゃないと入れない。


 裏口でもいけるけど。


 エルンストは、魔法は自動的にゼロ点。


 皆は150点満点のテストを受けているのに一人だけ100点満点のテストを受けるようなものだ。


 奴がケーキ屋で話しかけて来た時の制服は間違いなくラザフォード学園のもの。


 つまり、魔法が使えないのにエルンストはラザフォード学園の生徒だったのだ。


 すごいね!

 

 俺が剣の練習をしなければいけない理由はわかった。


 「お母さん。剣のししょーは誰?」


 「ごめんね。ごめんなさい。あなたのお父さんに、師匠をつけることを反対されたの。側室の子に出す金はないって」


 「じゃあ、がりゅーってこと?」


 「ごめんなさい」


 お袋が申し訳なさそうに俺に頭を下げる。


 我流ねえ。


 「わかった!剣をやってみるよ!」



 「あだっ」


 転けて地面に顔を打ちつけてしまった。


 いやー。


 重いね。


 剣が重い。


 練習用の剣が俺の身長の1.5倍くらいある。


 剣を持つので精一杯。


 振るのなんてもってのほか。


 しかし、それでも剣を持ち続ける。


 俺がお袋の申し訳なさをなくすために。



 俺は5歳になった。


 剣はだいぶ取り扱えるようになった………と思う。


 つい先日、3歳上の兄と勝負をして瞬殺し、7歳上に何とか勝ち、13歳上の兄とは引き分けになった。


 お袋は喜んでくれた。


 試合に勝った俺を抱き上げ、


 「ありがとう」


 って。


 俺の父親は、欲しいものがあるかと聞いて来た。


 側室の子に出す金はないんじゃなかったのか?


 「お父さん。それならね、マート星が欲しい」


 マート星、マジノ星系第五惑星のことである。


 ゲームの時はあの星に名前なんかなかったのだが、お袋に聞いたらあった。


 ゲームとは少し設定が違うのかもしれない。


 「マート星か……。良いぞ!マート星をエルンストにやろう」


 なぜ親父がマート星をそんなに簡単に俺に渡したか。


 それは簡単。


 採れる資源がないからである。

 

 マート星の表面を200mほど掘ると、とんでもなく硬い岩盤が出て来て、それ以上掘れない。


 もちろん、その岩盤は基地の天井である。


 そして、表面200mまでにはめぼしい資源がない。


 空気も厳しい。


 水も超少ない。


 表面にポツポツある氷くらいである。


 そのため、親父は、自分と正妻の子が負けたのに怒りでも覚え、俺を自分から遠ざける手段として良いと考えたのだろう。

 

 「ありがと!お父さん!」


 なーんてニコニコしながら言っている俺。


 まじで覚悟しとけよ?

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