3話 魔法が使えない件
☆
「エルンスト〜〜。今日からの練習ね〜」
俺は2歳である。
2歳児に剣を持たせるのはいかがなものかと思う。
この世界の人間は寿命が少し長い。
平均寿命は120歳ほどだろうか。
俺のグレートグレートグランドファザーが生きている。
………。
カッコつけるのはやめよう。
俺の高祖父が生きているのだ。
寿命はそんだけあるのに、なぜ2歳から剣を持つ必要があろうか。
「どうして?お母さん」
2歳児口調で聞いてみる。
「エルンストはね、私の子なの。私は側室で、立場が弱いの。私が魔法を使えないせいでエルンストもきっと魔法が使えない。だからね、剣を頑張るしかないの」
へえ。
俺って魔法使えないんだ。
詠唱しなくて良いのはありがたいけど。
………。
じゃあ、エルンストって凄くね?
「メモメモ」に出てくるラザフォード学園に通ってた人間は、剣と魔法と座学の総合成績が優秀じゃないと入れない。
裏口でもいけるけど。
エルンストは、魔法は自動的にゼロ点。
皆は150点満点のテストを受けているのに一人だけ100点満点のテストを受けるようなものだ。
奴がケーキ屋で話しかけて来た時の制服は間違いなくラザフォード学園のもの。
つまり、魔法が使えないのにエルンストはラザフォード学園の生徒だったのだ。
すごいね!
俺が剣の練習をしなければいけない理由はわかった。
「お母さん。剣のししょーは誰?」
「ごめんね。ごめんなさい。あなたのお父さんに、師匠をつけることを反対されたの。側室の子に出す金はないって」
「じゃあ、がりゅーってこと?」
「ごめんなさい」
お袋が申し訳なさそうに俺に頭を下げる。
我流ねえ。
「わかった!剣をやってみるよ!」
☆
「あだっ」
転けて地面に顔を打ちつけてしまった。
いやー。
重いね。
剣が重い。
練習用の剣が俺の身長の1.5倍くらいある。
剣を持つので精一杯。
振るのなんてもってのほか。
しかし、それでも剣を持ち続ける。
俺がお袋の申し訳なさをなくすために。
☆
俺は5歳になった。
剣はだいぶ取り扱えるようになった………と思う。
つい先日、3歳上の兄と勝負をして瞬殺し、7歳上に何とか勝ち、13歳上の兄とは引き分けになった。
お袋は喜んでくれた。
試合に勝った俺を抱き上げ、
「ありがとう」
って。
俺の父親は、欲しいものがあるかと聞いて来た。
側室の子に出す金はないんじゃなかったのか?
「お父さん。それならね、マート星が欲しい」
マート星、マジノ星系第五惑星のことである。
ゲームの時はあの星に名前なんかなかったのだが、お袋に聞いたらあった。
ゲームとは少し設定が違うのかもしれない。
「マート星か……。良いぞ!マート星をエルンストにやろう」
なぜ親父がマート星をそんなに簡単に俺に渡したか。
それは簡単。
採れる資源がないからである。
マート星の表面を200mほど掘ると、とんでもなく硬い岩盤が出て来て、それ以上掘れない。
もちろん、その岩盤は基地の天井である。
そして、表面200mまでにはめぼしい資源がない。
空気も厳しい。
水も超少ない。
表面にポツポツある氷くらいである。
そのため、親父は、自分と正妻の子が負けたのに怒りでも覚え、俺を自分から遠ざける手段として良いと考えたのだろう。
「ありがと!お父さん!」
なーんてニコニコしながら言っている俺。
まじで覚悟しとけよ?
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