34話 相手の攻撃がネタ枠だった件
☆
2日目。
俺は第4試合まで出番がない。
暇だなあ。
メニュー表を見るか。
…………。
暇つぶしできそうなものは何もないな。
…………。
市松格子のテーブルクロスか………。
いけそうだな。
無ければ作ればいいのだ。
「聞こえますかあ?」
『は…。バ……せ……ゅ』
「水を18杯と、”紅茶”と、”ハムとレタスのサンド”をお願いします」
『りょ……で…』
相変わらずだな。
さて、俺は何をするつもりでしょうか?
わかってるとは思うが、俺は抱かないよ?
娼婦を注文したのは、「別のこと」の相手が欲しかったからだ。
5分後。
「バロイ様。紅茶と、ハムとレタスのサンド、そして、水18杯をお持ちいたしました」
ガチャリ
扉を開けると、右手のトレーで紅茶とハムとレタスのサンド、左手のトレーで18杯の水入りグラスを持っている昨日の女がいた。
バランス感覚すごいな。
「テーブルに置いといて」
「は、はい。今日、”紅茶”と”ハムとレタスのサンド”を注文されたということは……」
「うん、相手になってもらおうと思って」
「そうですか………」
言葉に語弊があったかもな。
「あ、脱がなくていいよ?」
「え?ということは、着…」
「違う違う!君には、挟み将棋の相手になってもらいたくてさ」
そう。
俺は挟み将棋がしたかったのだ。
市松格子のテーブルクロスは盤になる。
大量のグラスは駒になる。
「挟み将棋?バロイ様のバロイ様を挟めばいいのですか?」
どうしてそうなるのかな?
もしかして、今の世界には将棋がない?
俺は、挟み将棋について詳しく説明した。
ちなみに、俺が説明したのは駒全てが飛車の動きをする挟み将棋だ。
「ああ、ブルズアイのことですか。ブルズアイよりも縦横4マスずつ拡張されていますが」
へえ。
5×5の「ブルズアイ」っていうのはあるんだ。
「お相手しましょう」
30分後。
「参りました。もう一戦やらせていただいても?」
「ああ、いいよ。待機中はこれで暇つぶしするつもりだから」
さらに1時間後。
「もう一戦!」
サンドイッチを2人で半分に分けて食べて、さらに1時間後。
『バ……様。第…試合…始……す。ア……ナにお……下…い』
多分、第4試合が始まるからアリーナに来いってことだな。
「バロイ様。この対局の続きがしたいので、早く勝ってきて下さいね」
…………。
目が中毒者の目だな。
「じゃあ、行ってくる」
☆
『さあさあ、続いて4試合目です!北門から入場してくるのは、ローランンンンンン!昨日繰り出した、自身の身長を軽く超えているほどの巨大な大剣による回転攻撃は、1対1でも効力を発揮するのか???』
回転攻撃?
どっちだ?
腰の捻りを使うやつか?
それとも、砲丸投げみたいに全力で回るやつか?
「バロイさん、入場してください」
俺の側にいた男が声をかける。
よし。
行くか。
『南門から入場してくるのは、蛮族の王、バロイィィィィィィ!』
おい。
俺はいつから蛮族の王になったんだ?
孤高の王ってことか?
『昨日の試合では、襲ってきたすべての人の剣を弾き、見事、相手に再起不能な屈辱を与えました!』
………。
俺、悪者みたいじゃん。
『両者、構えてください!』
さて、どうやって勝とうか。
昨日みたいに剣を弾くと、また解説のストックから色々言われそうだから、違うのでいこう。
構えは中段でいいか。
『オッズは、ローラン選手が1.26倍、バロイ選手が3.80倍です!』
賭けなんかやってるのか。
俺の方が弱いって思われてるのは少し悲しいな。
せめて、同値が良かった。
『コングがなったらスタートです!………………………………。あれ、コングは?』
カーン
「行くぞ!」
……………。
はい、後者でした。
全力で回る方でした。
ネタ枠でした。
これ、剣術大会だったよな?
この回転に剣術っているんか?
いるのは筋力と、強靭なクプラだろ?
これは酷い。
『おーっと!ローラン選手!お得意の回転攻撃を仕掛けてきた!バロイ選手はどうするのか!』
どーしよっかな。
何もしなくても、勝手に敵のクプラが死ぬまで待てばいい気がするが、流石にそれはなあ。
あ。
いいこと思いついた。
ハイ、ハイ、ハイ、ハイ、ハイ、ハイ、ハイ、ハイ、ハイ、ハイ、今!
ギャキィィィン
「うおっ!」
『なな、なんと!ローラン選手が勝手に転けてしまったぞぉぉぉぉ!』
『いや、バロイ選手がローラン選手の回転と同じ向きに剣を当てて、大剣の動きが一定ではなくなったことで、バランスが崩れてしまったんだ!』
そう、俺は、ローランの大剣の動く向きと同じ方向に剣を当てた。
ポイントなのは、加速度の向きと同じではないということだ。
瞬間の速度が上がるとどうなるか。
一瞬だが、ローランの腕にかかる遠心力が強くなる。
それをローランは元に戻そうと、腕を引く。
あとは運動量保存則のような感じで、ローランが重い大剣に引き付けられて、バランスを崩す。
見てて滑稽だったよ。
『勝者ッ、バロイィィィィィィ!』
☆
この日はもう試合がなかったので、個室で娼婦と挟み将棋をし続けた。
今日は全勝!
嬉しい。
今、俺はサーシャと宿に帰っているのだが、サーシャの表情が鬼のよう。
………。
どうした?
サーシャは試合に勝てたはずだろ?
なんでそんなに怒ってるんだ?
「ねえ、エルンストさん?」
「は、はい?」
怖い。
今までのエルンストの人生で1番怖い。
「個室に娼婦を連れ込んで、一日中帰らせなかったそうですね?どういうことですか?私が理解できるように説明して下さい?ねえ、どうして?」
その後、誤解を解くのに2時間かかった。




