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32話 Dグループの試合をする件

 『Cグループの勝者、ネルソンンンンンン!』


 いやー。


 実況だけ聞くの、本当に面白くないわ。


 実況に、俺の話がとてつもない量出てくるんだもん。


 ネルソンとかいうやつの時だって、


 『あれは、私の師匠に秒殺される』


 って言っていた。


 本当に、ストックは解説に向いてないな。


 俺を知ってる人にしかわからないような解説するんだから。


 『それでは、Dグループに出場する選手は、速やかにアリーナ上で待機してください!』


 よし、行くか。


 階段を登って、通路に沿って進む。


 アリーナに出ると、その場所に気後れしてしまった。


 大量の観客。


 明るい日光。


 そして、砂が吸った、今まで戦ってきたであろう人間たちの血液。


 全てが、地下闘技場とは真逆だった。


 『では、Dグループの試合を開催したいと思います!よーい、始め!』


 「死ねぇぇぇぇ、蛮族ぅぅぅぅ!」


 「サーシャ様と仲良くしやがってぇぇぇ!」


 「奴だけは殺せぇぇぇぇぇ!」


 俺、恨まれすぎてるな。


 やはり、地下闘技場でのアレが原因か。


 まさか、アレだけで、40人近くが俺の方に向かって来るとは。


 皆物騒な事を言っているが、ルール上、膝をつくか、倒れるか、剣を手から離したら負けであり、他人を殺してはいけない。


 ちなみに、大会で使用するのは、大会側が用意した刃の潰された自分に合った剣である。


 魔法の使用はもちろん禁止。


 さて、どうしようかな。


 ……………。


 よし。


 敵の剣を弾いて、相手の手からスポッと抜けるようにしよう。


 そうしたら、相手がぶっ飛んだりしないから、目立たないだろ。


 バギィン


 「うわっ」


 「しまったっ」


 面白いくらいにスポスポ抜けるな。


 「弱い、弱すぎるぞ!お前ら!」


 「な、何だと!」


 「舐めてんじゃねぇ!」


 バギィン


 「グアッ!」


 「こんな蛮族にぃぃ!」


 ギャギィン


 『おーっとぉ!あれは………。誰でしたっけ。え、バロイ?バロイ選手ゥゥゥ!今回初出場なのに、強すぎるぞ!!』


 名前を確認する時くらい、マイク切ったらどうだ?


 『どう思われますか、ランヤード様?』


 『…………』


 ストックが黙り込んでいるな。


 どうした?


 おっと、横薙ぎ。


 『………エルン?』


 は?


 え?


 どこでバレた?


 聞き間違いであってくれ!


 『エルンと同じくらいの強さだ………』

 

 ………。


 ふう。


 よかった。


 変な事言うのやめてよ。


 心臓止まるかと思ったじゃん。


 エルンと同じくらいの強さ?


 本人だからな。


 筋力は7割程度とはいえ、サーシャに鍛えられたからな。


 対人経験が増えたし、いい訓練になった。


 多分、学園前の俺と今の俺が戦ったら、ギリギリ力の差で押し負けるくらいにはなった。


 でも、何で強いと思ったんだろう。


 俺はただ、目立たないように剣を弾いていただけなのに。


 『な!あの蛮族衣装の人間が、あなたよりも強いと?』


 『ああ、間違いない。相手の剣を弾いて、その衝撃で相手の手から抜けさせることなんて、相手よりよっぽど格上じゃないと出来ない。それをされた剣士は、屈辱で、もう剣を握れないだろう』


 ………まじかよ。


 『最後の1人が自ら剣を地面に置いたぞォォォォ!Dグループ勝者、バロイィィィ!』

 


 闘技場の観客席。


 「おおっ!すごいぞ!すごいぞっ!」


 「エリカ、さっきから『すごい』しか言ってないじゃない!」


 「いいじゃないか!そう言うシャルロッテは、試合中、ポカンと口を開けて間抜け面を晒しているだけだが?」


 「まあ!間抜け面ですって?」


 ラザフォード学園の一年生は、社会見学として、この大会に観戦に来ている。


 この社会見学は、「セーンドイル宙域の戦い」で中止になった、模擬宇宙戦の代わり。


 なぜここまで日数が空いたかというと、予定が長期間空いているのが第二長期休暇中しかなかったからだ。

 

 「ラザフォード王国の剣士はこの程度ですか………。レンツの剣士の方が数倍強いですよ?」


 この短い黒髪の女は、アイリス=ド=レンツ。


 別名、「氷の歌姫」。


 「セーンドイル宙域の戦い」で、ラムラダにコテンパンにされた人間だ。


 捕虜になり、講和が結ばれた後、人質としてラザフォード学園の生徒になったのである。


 ちなみに、アイリスはあの戦いにエルンが首を突っ込んだ事を知らない。


 逆に、知っている人の方が少ない。


 その事を知っているのは、エルンと交友があったと学園が判断した人間と学園の上層部、そして、王国の上層部だけだ。


 「なら、エルンはその数倍強いぞ?」


 「エルン?ああ、ストックがさっきから頻繁に名前を出している男ですか……。死んだ人間の事を誇りに思われても………」


 「エルンはまだ死んでいない!行方不明なだけだ!」


 エリカは、まだエルンが生きていると信じていた。


 いや、エルンと交流のあった生徒は全員、平民校舎の生徒に関してもほとんどが生きていると信じていたのだ。


 エルンの強さを知っていたから。


 そのため学園側がエルンを死亡退学にしようとした時は、校内で暴動が起こり、その話はなかった事になったほどだ。


 エルンの寮は、今も残っている。


 エルンがいつ帰って来てもいいように、今も整備され続けているのだ。


 「どうせ、そのエルンとかいう人間は大したことありません。そうですね……。あそこにいる、蛮族の剣士のような男に違いありません!」


 「なんだと!」


 『エルンと同じくらいの強さだ………』


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