30話 剣術大会の受付をする件
「さあ!ドラグーンにつきましたよ!」
夕暮れ前、俺らは、何とかドラグーンについた。
ちなみに魔導バイクは、ここから少し離れたところにある森の洞窟に隠している。
盗られることはないだろう。
ついたばかりで街の端にいるのにもかかわらず、街の中央に巨大なコロッセウムのような建物があるのが伺える。
どんだけでかいんだ。
顔を隠すために、俺は目のところに穴が空いている白い布をかぶっている。
まるで不審者。
ファーメルで外での力仕事ばかりしていたせいで、足が焼けているのが相まって、古代エジプトのメジェドにしか見えない。
顔が隠れるのはいいんだけどさ。
「デカっ」
「ええ!ドラグーンはデカいんです!早速ですがエルンストさん!雑貨屋さんにいきましょう!」
早速すぎるな。
最初は雑貨屋でお土産でも買うのかな、って思っていた。
しかし、サーシャが雑貨屋で買ったものは、牛の頭骨、猪の毛皮、赤と灰色の染料、そして、大量の藁。
………。
儀式でも始めるのだろうか。
その後、大量の荷物を持って宿をとりに行ったのだが、危うく衛兵を呼ばれかけた。
何でかって?
俺の服装のせいである。
まあ、当たり前だよな。
気になる人がいるかもしれないので一応教えるが、宿は当然二部屋とった。
サーシャは、
「相部屋でよくないですか?エルンストさん、私と同じ部屋で寝るのはイヤですか?」
全然嫌ではないのだが、念のためである。
念のためとは何に対してか、って?
ご想像にお任せする。
☆
次の日。
ふう。
この宿のベッドも悪くないのだが、学園のベッドと比べるとまだまだである。
天気は晴れ。
太陽が眩しい。
おっと、失礼。
あれは太陽ではなかったな。
宿で朝食をとれるというので、食堂のようなところに行く。
もちろん布をかぶって。
朝食として出てきたのは、白パンと鶏のステーキ、そしてサラダ。
学園の食堂の、平民用のご飯よりも全然豪華である。
え?
どうやって食べるのか、って?
目用の穴からである。
周りの人間が、変な目で見てくるのだが、気にしない。
無論、自分の命のためである。
お。
サーシャが来たな。
「ふあぁぁあぁ。エルンストしゃん、おはようございましゅ!私が朝ごはんを食べ終わったら、私の部屋に来てもらえますか?」
「いいけど……」
眠そうだな。
昨日、夜遅くにサーシャの部屋から大きな物音がしていた。
それと関係あるのだろうか。
食堂を出てサーシャの部屋に入るとすぐに、俺は驚愕した。
「どうですか、エルンストさん!頑張って昨夜作ったんですよ!これをつけて剣術大会に出れば、とても近くで顔を見られない限り、エルンストさんだとはバレないです!」
そこにあったのは、昨日買った猪の毛皮と藁で作られた精巧な肩当てと腰当て、そして、牛の頭骨の被り物だった。
牛の頭骨の被り物は、ご丁寧に顎紐まで付けてくれている。
………。
「あ、ありがとう」
感謝。
感謝ではあるのだが、俺がこれをつけた時の様子をイメージしたらどうだろう。
明らかに蛮族である。
………。
まさか……。
「昨日買ってた染料って……」
「はい!エルンストさんの顔と体に塗ります!」
………。
より蛮族感が増すな。
「今日は、この装備を全てつけて、剣術大会の受付に行きましょう!」
☆
痛い。
痛い。
尋常じゃなく視線が痛い。
まあ、見た目が蛮族だからな。
この装備は、驚くほど俺の身体のサイズピッタリだった。
サーシャ曰く、俺を介護してた時のおかげで俺の身体のサイズはほとんど把握しているらしい。
気が利くというか、少し怖いというか……。
「受付お願いしまーす」
「はー、ヒッ!」
大会の受付嬢にも驚かれた。
しかし、彼女はすぐに冷静を取り戻した。
「あ、貴方は!前大会準優勝のサーシャ様!」
サーシャと一緒に受付に来てよかった!
一緒に来なかったら、衛兵案件だっただろうね!
準優勝者さまさまである。
「サーシャ様は登録をするのですか?」
「はい。お願いします。登録名は『サーシャ』でいいです」
「サーシャでいい」とはどういうことだ?
「お連れの方は?」
「お願いします」
「登録名はどうしましょうか?」
「『バロイ』でお願いします」
「了解しました!明日から頑張って下さい!」
「バロイ」という名は、俺とサーシャが宿からここに来る時に考えた名前である。
この名を提案したのは俺。
サーシャは、
「カッコいいです!エルンストさんにお似合いです!」
って言ってくれたが、「バロイ」の由来は、ギリシャ語で「野蛮人」を意味する「バルバロイ」である。
まぁこの世界にギリシャ語なんかないので、サーシャは響き的にカッコいいと思ったのだろう。
だが、俺にお似合いであって欲しくはないかな。
装備にはお似合いであるのだが。




