24話 レンツ王国と決戦間近な件
☆
「エルンと言ったか」
「はい、グロッグ宰相」
グロッグ宰相は右を向く。
そして、ガーランド伯爵と頷く。
「やはり、侮れないな。のぉ、ガーランド伯爵」
「はい」
「何がですか?」
「私の問いに対して、すぐに『グロッグ宰相』と私の名まで載せて返答したのだからな」
そりゃ、この国の主要人物だからね。
「メモメモ」をやってた俺からすると、知っていて当然である。
「なぜ私を宰相だと知っている」
なぜ知ってるかって?
そりゃあ………。
あ、わかった。
ライアンは、滅多に王城の外に出ない。
そして、俺が「陰の支配者」と言うように、貴族でも彼の存在を知ってる人が少ない。
「メモメモ」を数百回リスタートして、会うことができたのは数回。
こいつは主要人物でもあり、レアキャラでもあるのだ。
そんな彼を俺はすぐに「グロッグ宰相」と呼んだ。
いや、呼んでしまった。
怪しまれて当然である。
さて、どう言い逃れしようか。
「…………」
俺は、黙り込むしかなかった。
ヴァントを大精霊って言い張って逃れることはできる。
しかし同学年の人に対してと違って、ボロが少しでも出てしまうことがリスキーなのだ。
なんせ、相手は化け物なのだから。
「まあ、誰しも言えないことはある。そう緊張せんでいい」
「はい……」
そう言われても、俺は安心なんかしなかった。
俺は、問題を先送りにしてしまっただけだから。
「さて、2時間前。ゲートを出たアイリス王女を迎えにいった我が国の魔導船からの連絡が途絶えた」
攻撃してきたのか。
「君が陛下に口添えをしたおかげで、戦力は十分なほど集められた」
戦力を集めてくれたのか。
よかった。
「平民の戯言」と思われて、なかったことにされるかと思っていたんだけど。
「十分な戦力とはどれほどですか?」
「魔導戦艦280隻、魔導重巡784隻、魔導軽巡1343隻、魔導駆逐艦5432隻、魔導コルベット14370隻、対結界船480隻、ミャーチ8万機だ」
だいぶかき集めてくれたな。
俺の要望通り戦艦多めにしてくれてるし。
………ん?
「メモメモ」でのラザフォード王国の魔導戦艦って、こんなにあったっけ。
「メモメモ」よりも大軍拡されてるのかな。
敵が「メモメモ」と同じ感じなら、ラムアタックで勝てる。
しかし、どうだろう。
今回は、魔導弩級戦艦やミャーチ空母のようなイレギュラーが存在する。
ギリギリってところか。
☆
「娘から聞いたが、レンツのファイヤーボールの射程は長いのだろう?」
「はい、ガーランド伯爵。5倍です」
これが大問題なのだ。
俺は別に軍師ではない。
そのため、あのクソイベではラムアタック前提の作戦しか思いつかなかった。
ラムアタックなら、敵の結界なんて関係ないし。
俺が考えつく1番簡単な勝ち方だったのだ。
「まさか、君はー。敵の戦力のー詳細を知ってるーのかね?」
独特な喋り方をするアルフォンス。
「メモメモ」と同じだな。
「一応」
「その情報はー。どこからー手にー入れたのかね?」
ヴァントです、なんて言えない。
なんて言おうか。
「私が特注で作ってもらった天体観測用魔導水晶です」
苦し紛れの俺の一言。
理論的には不可能ではない。
軍用は相手の魔力波をキャッチするだけであるが、天体観測用は強力な魔力波を発信して、対象から反射してきた魔力波をキャッチする。
レーダーみたいなものである。
ただし、弱点はある。
近距離は観れないのだ。
そして、ある程度対象が大きくないと観測できないのだ。
そこがレーダーとの違いである。
観測できる対象までの距離は、最低20万km。
ファイヤーボールの射程が長くて50kmとかの世界で、近距離が全くわからないのは正直ゴミ。
そして、この世界で一般的に天体観測用魔導水晶で観測できるのは、最小で月サイズ。
そう言う意味では、効果範囲が半径2万kmほどだが、相手が魔力波を出してさえいれば位置がわかる軍用の方がはるかに戦闘には向いているのである。
ちなみに起動されたマート星や戦艦ヴァント、ラムラダにティンタイラントのような核融合炉を積んだ物体にも反応しないそうだ。
ヴァント曰く、核融合炉が飛んできた魔力波を吸収するだとか何だとか。
それらを誤魔化すために、「俺の特注」という言葉をつけた。
これで納得してくれ!
「そうーいうことにーしておこう」
また問題先送りにしちゃった。
俺、この艦隊決戦が終わったら、拷問されたり消されるかもしれん。
それは嫌だぞ?
「でー、レンツの戦力ーは?」
「1000m級46隻、900m級4隻、700m級146隻、500m級480隻、400m級1890隻、200m級6057隻、150m級16830隻です。ミャーチは1000m級の中に約6万〜12万入っていると考えられます」
「なるーほど。そうするーことによってー、ミャーチの存在を隠せーるのか。賢いな」
俺が空母のことを言っただけでそこまで察せれるのは、流石公爵といったところか。
「エルン。情報提供感謝する。戦闘のことは儂らに任せておけ」
「はい……。ご武運を」
ラムアタックの事は言わないでおこう。
現実とゲームの世界は違うのだから。
この世界は、リスタートできないのだから。




