20話 学園長室に国王がいた件
☆
なんとか学園長室に来た俺ら。
ふっ。
何とか俺の腰は耐えたようだな。
コンコン
エリカが学園長室の扉をノックする。
「入りたまえ」
ガチャリ
扉が開くと、俺は頭の方を前にして学園長室に入れられる。
「よく来てくれたな」
そう、老人の声が聞こえたと思ったら、俺を運んでいる皆が手を離す。
そして、俺は床に落下。
受け身がとれたのが幸いである。
何事かと思い周りを見ると、皆が白い髭をたくわえた老人に片膝をついている。
「へ、陛下!?」
エリカが声を上げる。
そう、この老人こそがマリウス=フォン=ラザフォード。
この国の王。
そして、レオンの父親である。
老人の息子が俺と同い年なのがおかしいって?
大丈夫だ。
何も問題ない。
王妃は、マリウスの29歳年下なのだから。
「エ、エルン!早く!早く膝をつけ!」
痛い。
まじでお前ら許さん。
少し俺の扱いが雑じゃないか?
ちゃんと膝はつくけど。
「……君がエルンか………」
「はい」
余韻の圧。
圧倒的威厳。
「………………」
長いよ?
そう思った矢先、陛下は俺に頭を下げる。
「本当に……申し訳なかった!」
急に声のトーンが上がる。
この抑揚。
思わず、気後れしてしまった。
「へ、陛下!平民に頭を下げるなど!」
扉の側にいた学園長が校長に向かって言うが、
「うるさい!」
と一蹴。
それに怯える学園長。
流石である。
「今回は、あのバカ息子が非常に申し訳ないことをした!謝らせてくれ!」
「い、いえ…」
「あのバカ息子はもうダメだ!国民の大半は平民だということもわかってなければ、儂らは平民の税で生きていることもわかってない!『卑しい平民を叩き潰せるのは王族の権利だ』だったか?そんなわけないだろう?卑しい平民?なら、王族はいつから貴くなったのだ!それは国を建ててからだろう?その前は王族もただの平民だったのだ!」
理論はわかる。
国王は正しいことを言っている。
………。
でも、国の象徴たる陛下が言うのはちょっとマズいよ?
貴族からの忠誠が無くなるよ?
だって、それは、貴族にも同じことが言えるからね。
貴族はいつから貴くなったのか。
それは、貴族になってからである。
そんなこと、プライドが高い貴族が認めるわけがない。
中央集権を目指しているならわかるんだけど。
「エルンだったな。何か、求めることがあったら言って欲しい!それで君が負った傷を無かったことになど出来ないが、せめてもの償いにさせてくれ!」
これは、試されているな。
「爵位をくれ!」なんて言ったら、くれはするだろうが、国王には欲深い人間という目で見られる。
「何もいりません」って言ったら、利益に目が全く向かず、非常に扱いにくい人間という目で見られる。
それはそれで、命の危機である。
さて、何を求めようか。
……。
決めた。
「陛下、レンツ王国は敵です。その事を頭に入れておいて下さったら、私はもう満足です」
これで俺の心配ごとは相当減る。
「…了解した………。で、何隻必要そうなのだ?」
流石陛下。
物分かりがいいね。
もし今回レンツ王国が攻めてくるなら、ラムラダは使うが戦艦ヴァントは使わない。
目立ちすぎるからだ。
迷彩で隠していたとしても、光の尾を引く細長い物体や、ボコスカ戦艦を屠る兵器を大量に使用すれば、ラザフォード王国も大騒ぎになる。
そうしたら、ヴァントの持ち主が俺だと気づかれなくても、俺の平和な生活が脅かされる可能性がある。
「戦艦多めで最低1万、互角が2万、できれば3万です」
「わかった」
☆
俺は今、運ばれている。
俺の寮に。
今日は色々あったな。
気絶し、踏んだり蹴ったりされ、公爵令嬢を泣かせ、レオンが王位継承権を失い、陛下に会った。
濃厚すぎる。
「平民!あれはどういうことかしら?」
「どの事だよ」
当てはまりそうな事が大量にある。
「どの事って、レンツ王国のことよ!まるで、戦争になるみたいじゃない!」
「だって、なるんだもん」
「師匠、どういう事だ?」
あー。
まずった。
カイルが周囲を警戒しながら教えてくれたことを、そう簡単に広めていいのだろうか。
「カイル、『ハ』から始まる単語についての事言っていい?」
『ハ』は勿論ハティのハである。
「『ハ』?ハーーー…………。ああ、いいよ」
「サンキュー!レンツ王国のアイリス王女は、『ハティ』という魔導戦艦に乗ってくるらしい」
ルリアの眉がピクつく。
「『ハティ』はレンツ王国の象徴とも言える船。そんなもの、模擬宇宙戦の視察程度にいらないだろう?」
「いや、レンツ王国の武威を示すのにはもってこいだぞ?」
エリカの言うことは正しい。
だがな、戦艦を単艦運用なんて、バカのすることなんだよ。
「戦艦が来るなら、艦隊が来る。艦隊が首都星系に入って来るんだぞ?そんなこと、許されるのか?」
「ダメだな」
「だから、備えておけって言ってるの。わかる?」
「レンツ王国の艦隊とか、我がガーランド伯爵家の艦隊だけでどうにかなるわ!」
「うん、多分惨敗するよ?」
「ななな!」
驚いた時のセリフで「ななな!」なんて初めて聞いた。
「り、理由を言ってみなさいよ!」
「シャルロッテ、お前のとこの艦隊のファイヤーボールの射程って、10kmくらいだろ?」
「そうよ!ラザフォード王国最新のファイヤーボール発射装置なんだから!」
シャルロッテは自慢げである。
「レンツ王国のは50kmなんだよね」
「な、な、な!」
「な」が多いな。
「師匠、本当か?」
もちろん本当である。
「メモメモ」内では、某クソイベで嫌というほど実感する。
最初挑んだ時は酷かった。
「今まで何も説明無かったから、どうせこいつらも俺らと同じファイヤーボール発射装置だろ?」って思ってたら、こちらのファイヤーボールが届かないところから屠られるんだもん。
恐怖である。
何回も某クソイベを繰り返し、結論づけた射程が50km。
何も説明が無かった。
つまり、艦隊決戦前のラザフォード王国は、レンツ王国のファイヤーボールの事を知らない設定なのだ。
「お前はどうしてそんな事を知っている?」
「………大精霊に教えてもらった」
「あの『番衛門』とかいう大精霊か……。そうか……なら納得だな!」
保健室では「ヴァンえもん」っていうことで呼び出したんだっけ?
ヴァント様様だねえ。




