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19話 学園長室の場所がわからない件

 気絶してる間にボコボコにされたとはいえ、レオンが王位継承権を失うとは思わなかった。


 無罪放免だと思っていた。


 何かあっても厳重注意だろうと思っていた。


 悪いのはレオンたちである。


 しかし、あいつは王子。


 彼が「メモメモ」内で王位継承権を剥奪されたことはなかった。


 「ストックはなんでお咎め無しなんだ?」


 「え?師匠。罰せられて欲しかったのか?」


 皆がこちらを見る。


 みんな、酷いよ。


 何でそんな目で見るんだよ。


 「そうじゃなくてさ、ストックがブッ飛ばしたの、王子だよ?」


 「ははは!そんなことか!あいつ、病院内で『王族が平民を蹴って何が悪い!卑しい平民を叩き潰せるのは王族の権利だ!』って大声で叫んだらしい。もちろん病院は平民も使うだろ?大勢がいる中で自国の王子がそんなことを言って無罪放免なら、確実に王家の求心力が落ちる」


 「殿下………」


 エリカの顔は、失望に溢れている。


 なるほどなるほど。


 で?


 それはレオンが王位継承権を失った理由だろ?


 ストックがお咎め無しの理由にはならないだろ?


 「俺は、あいつが王になって王国が滅ぶのを阻止したっていう理由で、逆に陛下から感謝状をもらうことになっている」


 確かに、レオンが王になったらこのラザフォード王国は滅ぶだろう。


 こいつは、傲慢すぎるのだ。


 「ああ、そう言えば。師匠が目を覚ましたら、学園長室に連れて来いって言われてたんだった」


 「はあ?」


 今呼ばないでくれ。


 全身痣だらけで、立つのもキツいから。



 「痛い痛い!お前ら俺に恨みでもあんのか!って、ハンス!そんな揺らすな!」


 俺は今、学園長室に行っている。


 ……。


 修正しよう。


 俺は今、学園長室に連れていかれている。


 俺とともに学園長室に向かっているのは保健室に来たメンバー全員。


 大所帯である。


 上級貴族どもが俺らを見て笑っているが、しょうがない。


 こんなの誰でも笑うに決まってる。


 「学園長室って、どこにあるんですか?」


 そう聞くルリア。


 俺も知らない。


 「メモメモ」で学園長室に連れていかれる時は、瞬間移動。


 校舎のどこにあるのかを示す描写はなかったのである。


 「え?私も知らないけど?」


 「ああ、私もだ」


 「ハンス、俺らも知らないよなあ」


 「うん」


 「すまない。俺もわからない。この中の誰か知ってると思って皆に合わせてたんだが」


 ………。


 ふざけんなよ?


 じゃあ、俺は今どこに向かってるんだよ。


 「学園長室に行く人なんて滅多にいないからね。呼び出しがかかる生徒は多くて年に2人とかだよ」


 少なっ。


 滅多に出現しないレアダンジョンかな?


 「あそこに人がいるわ!聞いてみましょう!そこの男!」


 「なんだ……ってシャルロッテ様!エリカ様にストック様も!」


 男は驚いた様子である。


 当たり前だ。


 有名人3人とその他が、ある1人の男を運んでいるのだ。


 運ばれている男はどんだけ高貴なんだ、って思われる。


 実は、この中で同率で1番身分が低いんだよね。


 「あなた、名乗ることを許すわ!」


 本当にこいつは何様なんだろうね。


 まあ「後ろ盾が強いお嬢様」だな。


 「は、はい。私は4年生のアルブレヒト=フォン=ヴィッテルスバッハです」


 ………。


 お分かりいただけるだろうか。


 4年生、つまり俺より3歳年上で、姓がヴィッテルスバッハ。


 つまり、俺が5歳の時に剣で瞬殺した兄である。


 お前もここの学校だったのかよ。


 「ヴィッテルスバッハということは、マート星の?」


 おい、エリカ。


 俺もいるんだぞ?


 保健室では「エルンs」まで言いかけて「エルン」って言い直してくれただろ!


 ほんの少し見直してたのに。


 「はい……。天体観測用の魔導水晶から反応が消えて……。って、信じられませんよね。他の皆にもこの話をしたんですけど、ホラ話って決めつけられて……。」


 安心しろ。


 他の誰かが信じてなくても、俺だけは信じてやる。


 だって、マート星を移動させたの俺だもん。


 「え?あれってホラ話でしょ!惑星が勝手にどっかに行くわけないじゃない!」


 本当にシャルロッテ、お前、少し言い止まるってことを覚えた方がいいと思う。


 「確か、弟が巻き込まれたそうだな」


 エリカが俺の方を見ながら言う。


 まじてお前許さん。


 半分遊んでるだろ。


 「エルンストのことですか。あいつには魔力がなかったのですが、2歳の時から剣をしていて、5歳の時、あの事件の直前に剣で勝負をして私は負けたんです。あいつは長男のテオドリックとも試合をして、引き分けました。信じられますか?5歳の子供が18歳と引き分けたんですよ?」


 何だその5歳児って一瞬考えてしまった。


 それ、俺だった。


 そんなこともあったねえ。


 「私は負けたのが悔しくて、負けたその日から剣に熱中しました」


 すごい真面目だな、この兄。


 「……あの愚弟が、エルンストが生きていたら本当に、本当に優秀な騎士になっていたと思います」


 ……。


 ちょっと照れるな。


 「すまない、嫌なことを思い出させてしまった」


 「いえ……。むしろ感謝しています。エルンストのことを思い出す機会を与えて下さったのですから……」


 こいつ、すごくいい奴じゃん。


 あのフレデリックの息子とは思えない。


 「いつまでそんなホラ話を話してるのよ!エリカ!あなたもあんな話を信じる必要ないわ!」


 まじでさ、お前さ。


 俺まで少し目が潤ってたのにさ。


 なにぶち壊してくれてんの?


 「そんな言い方はないだろう!」


 そう、シャルロッテに怒鳴ったのはストック。


 いいぞ。


 このクソ生意気なお嬢様にガツンと言ってやれ!


 「5歳で18歳の兄と引き分け?そんな優秀な人材を失ったのなら、悲しむのも当然だ!俺も悲しい!生きていたら、俺と同じ年齢のはず!手合わせをしてみたかった!」


 ………。


 これだから剣術バカは。


 「まあまあ、落ち着いて」


 間に入ったのはハンス。


 すごい度胸してるね。


 「先輩、俺たちは今から学園長室に行かなければならないのですが、どこにあるか知っていますか?」


 「うん、知ってるよ?私も行ったことあるから」


 ありがたい。


 「d棟の4階の階段下の部屋だよ」


 「分かりました!ありがとうございます!」


 助かったぜ、ハンス。


 このまま持ち続けられてたら、俺の腰が保たなかった。


 「セ、先輩」


 何だ、ルリア。


 お前は何を聞きたいんだ?


 「何ですか?」


 「なぜ先輩は学園長室に行ったのですか?」


 「マート星のこと」


 そう言い、彼は静かにこの場を離れていった。

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