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17話 気絶している間に色々されてた件

 模擬宇宙戦まで、残り2週間を切った。


 貴族校舎の教室はその話でもちきりである。


 戦術はどうするか、どの班と当たりたいか。


 後者に関しては、圧倒的にJ班、俺のグループと当たりたいらしい。


 弱者イジメ反対!


 そんな中、模擬宇宙戦について絶望感を抱いている男が1人。


 もちろん俺である。


 俺”ら”ではない理由は、カイルもハンスも勝利は諦めているからだ。


 俺が絶望感あふれる顔をしているのは模擬戦の勝敗のことではない。


 もちろん模擬戦を観にくるアイリスのことである。


 本当に、あいつはただ試合を見にくるだけなのか。


 何か仕掛けてくるつもりなのか。


 やつは、星系間高速魔道路を使ってくるだろう。


 星系高速魔道路について説明してなかったな。


 俺がバルで入った高速魔道路は、速度が1000倍に上がる。


 それに対して、星系間高速魔道路は、時速600億kmに固定される。


 時速600億km。


 光の速度の約60倍。


 太陽系から、プロキシマ・ケンタウリまで3日で行ける速さ。


 なぜ、そこまで速度が出せるのか。


 そんなことはわからない。


 ヴァントに聞いた時、


 『それは宇宙の神秘です』


 と言っていた。


 ヴァントも理由を知らないと考えられる。


 通常、星系間高速魔道路は、星系の中で、ハビタブルゾーン内の惑星から5万km離れたところがゲートになっている。


 模擬宇宙戦は、デウロのゲート側高度1万km地点で行う。


 つまり、ゲートから模擬宇宙戦開催地まで4万km。


 魔道船は、走力時速500kmが平均のはず。


 奴らがゲートから出て、80時間ほどで接触。


 つまり、あと1週間くらいでゲートをでる。


 時間がない。


 どうしよう。


 バタッ



 目を開ける。


 身体中が痛い。


 真っ先に目に入ったのは夕陽と知らない天井。


 俺は知らないベットで横になっていた。


 拉致か?


 通信リングは右手についたまま。


 俺が最後に記憶に残っているのは、教室でアイリス対策を考えていた時だ。


 そこから記憶がない。


 ……。


 ルリアに毒でも盛られたか?


 「おっ!目が覚めたか。よかった!」


 側を向くと、そこにいたのは金髪ポニテ。


 金髪ロールではなかったことに感謝である。


 この金髪ポニテは、エリカ=フォン=パラベラム、パラベラム公爵家の長女であり、俺の学年の生徒代表である。


 エリカはいわゆる悪役令嬢。


 ルリアとレオンの仲を引き裂いてこようとしてくるレオンの婚約者である。


 至極当然である。


 なぜ、自分の婚約者に近づいてくる女を遠ざけようとすると、悪役扱いされるのか。


 エリカは愛情深く、正義感が高く激情家で、本当にレオンを愛していた。


 「メモメモ」内でレオンが死ぬと、必ずぐちょぐちょに泣き喘ぎながら、「レオン、レオン」とレオンの亡骸に声をかける。


 その様子を見て、何回泣いたことか。


 そんな2人を引き裂こうとするのは、プレイヤーとしても気が引けた。


 彼女は最後どうなるのか。


 俺はクリアする前に死んだからよくわからない。



 「こ、ここは?」


 「学園の保健室だ。お前は授業中に急にぶっ倒れたんだ。覚えて無いのか?」


 もちろん覚えているわけがない。


 覚えていたら、すぐさま状況を理解できたはずだ。


 この身体中の痛みも。


 ぶっ倒れたなら、頭や肩、背中が痛いのはよくわかる。


 脇と内股も痛いってなんだよ。


 倒れただけで痛くなるわけない。


 内股を見ると、青痣だらけ。


 内股だけではない。


 全身である。


 「本当に、本当にすまないっ。私は、学年代表なのにっ、見ていることしか……」


 彼女は半泣きである。


 「ちょっと大精霊召喚していい?」


 こういう時こそ、頼れるヴァンえもんの出番である。


 「ああっ、いいぞ」


 「助けて!ヴァンえもーん!」


 『しょうがないなぁ、エルンくん!』

 

 ヴァントのホログラムが出てきた。


 エリカは、開いた口が塞がらない様子である。


 「状況は?」


 『これをご覧下さい』


 ホログラムウィンドウに映し出されたのは、まるで死を前にしたかのような俺の姿だった。


 「これは!時間跳躍魔法!?」

 

 否。


 ただの録画である。

 

 バタン


 「あっ、倒れた」


 「自分が倒れたのに、反応が薄くないか?」


 倒れた俺にいち早く気づき、肩を揺さぶるカイルとハンス。


 この揺さぶりで全身が痣だらけになったのなら、こいつらの筋肉はイカれている。


 「ん?なんか俺に近づいてきてないか?あれは……レオンと取り巻きか?」


 『どけっ!下位貴族ども!』


 『でもっ』


 『レオン様の声が聞こえないのか!』


 ガンッ


 足で蹴られ、俺から無理矢理離れさせられる2人。


 『このっ!』


 ガンッ


 そして、倒れている俺を蹴り始めるレオン。


 それを見て、同じように俺を蹴ったり踏んだりする取り巻き。


 これは酷い。


 正々堂々正面から俺に挑んでくるなら叩き潰すだけだが、俺が気絶している間に蹴ってくる。


 よほど、俺が怖いのだろう。


 平民にも関わらず、試験官をブッ飛ばし、伯爵令嬢を涙目にさせる俺が。


 「うわぁ」


 これしか声が出ない。


 こいつがここまでクズだったとは。


 で、俺はどうやってここに連れてこられた?


 この状態だと、王子の反撃を恐れて俺を保健室に運ぶのは難しいと思うんだけど。


 ほら。


 画面端の方でエリカらしき人が棒立ちしてるし。


 『やめろ!』


 ん?


 レオン一行を止めにかかる声。


 取り巻きを掻き分け、まっすぐ俺の所に行く男。


 『師匠に何をする!』


 その声の主人は、箒を持ったストック。


 「お前かよ!ありがたいけど!」


 もちろん、師匠になったつもりはない。


 『ランヤード家の長男か!この俺に逆らっていいのか?』


 『うるさい!』


 そう言って、箒でレオン一行を宙に浮かせるストック。


 俺に負けたとは言え、剣術8段。


 流石である。

 

 一瞬にして、全員を行動不能にしてしまった。


 『何事だ!』


 やっと、担任の登場である。


 『おい!大丈夫か!』


 そう言って向かったのは……もちろんレオンのところである。


 そこまで俺が嫌いか!


 『これをやったのは、ストック、貴様か!』


 『ああ!こいつらは俺の師匠が気絶している時に襲った!何が悪い!』


 堂々としすぎだろ。


 少しはためらえよ。


 お前がブッ飛ばしたの、この国の皇太子だからな?


 『急いで殿下たちを病院に連れて行け!ストック!貴様は職員室に来い!』

 

 なーるほーどね?


 だから俺の全身は痛いのか。


 ………。


 『おい!大丈夫か!』


 そう言って、俺の側に近づくエリカ。


 ひょいと俺を担いで、教室から出てしまった。


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