15話 ゲーム上での中ボス的存在が模擬戦を観に来ることになっている件
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俺は重い足取りで登校した。
特待生用の制服は、一晩経ってもやっぱり肩が凝る。
校門を潜ると、周囲の視線が突き刺さる。
「おい、見ろよ。昨日の『球持ち』だ」
「男爵家の三男坊どもとつるんでるらしいぜ。お似合いだな」
クスクスという笑い声。
俺は無言で通り過ぎる。
教室に入ると、カイルとハンスが既に席に着いていた。
二人は俺の顔を見るなり、ぶんぶんと手を振る。
「よう、エルン! 昨日は格納庫を見せてくれてサンキューな!」
「あのバル、よく見ると渋くて格好いいよな!」
声がデカい。
周囲の貴族たちが嫌そうな顔で耳を塞いでいる。
俺は二人の隣の席に座った。
ここが俺の、この学園での数少ない安息地だ。
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一限目のチャイムが鳴った。
担任の魔導教師が、教卓を叩いて沈黙を促す。
「静かにしろ。今日は再来週に行われる『模擬宇宙戦』の班分けを決定する」
教室がざわついた。
貴族の子弟たちにとって、これは自分の家の軍事力や財力を誇示し、王子に気に入られる絶好の機会だ。
「班は一組20人以下。艦船のクルーは実家にでも頼んで自分たちで集めろ。ただし、対結界船は使用禁止という制約がある」
教師が魔法で黒板に図解を表示する。
「通常、上位貴族は魔導戦艦なことが多いな。まあ、好きに組め」
その瞬間、教室内で激しい交渉が始まった。
「殿下! ぜひ我が家の魔導重巡をあなたの艦隊に!」
「レオン様、私の実家が新造した高速艇をお使いください!」
第一王子レオンの周りには、一瞬で人だかりができる。
シャルロッテも負けていない。
「我がガーランド伯爵家の最新鋭艦を見て驚きなさい! オーッホッホッホ!」
高笑いが響く。
俺たちのところには、当然ながら誰も来ない。
「……決まりだな」
カイルが苦笑いしながら言った。
「ああ。エルン、俺とハンスの三人でいいか?」
「もちろんだ。むしろ、他に入れる奴がいない」
俺が答えると、ハンスが机の下でガッツポーズをした。
「よし! 落ちこぼれチームの結成だ。艦船はどうする? 俺の実家の船は、40年モノのオンボロ輸送船を改造したやつだ。カイルのとこは?」
「うちは魔導コルベットだな。上位貴族様の最新鋭艦相手じゃ紙屑同然だぜ」
二人が自虐的に笑う。
「エルンはバルだろ?」
「ええっと……」
目立ちたくなくて、魔導駆逐艦程度の大きさにしたんだけどな。
ラムラダが俺らの班で一番でかいじゃないか。
2人とも、魔導軽巡あたりを持ってくると思ってたんだけど
貴族の三男坊、甘く見てた。
「バルではない」
「なるほどな。まあ、期待してるぜ!」
一応平民の俺に期待するなんて、馬鹿なのかな?
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「それと、もう一つ重要な知らせがある」
教師の声がトーンを落とした。
教室内が再び静かになる。
「今回の模擬宇宙戦だが……例年とは違い、非常に重要な観客が来場される」
教師は一度言葉を切り、緊張した面持ちで続けた。
「我がラザフォード王国の国王陛下は例年通りいらっしゃる。そして……隣国レンツ王国より、第一王女アイリス様が視察に訪れることになった。アイリス様は、模擬戦の2日前にこの星系を訪れるらしい」
教室内が、今日一番の騒ぎになった。
「レンツ王国のアイリス王女といえば、あの『氷の歌姫』か!」
「なんで今年に限って……」
「氷の歌姫」って、演歌歌手にいそうだな。
俺はレオンの顔を見る。
彼の顔は切り詰めている。
プライドの高い彼にとっても、王国にとっても、他国の王女の前で無様な姿は見せられない。
アイリス=ド=レンツは、「メモメモ」において、中ボス的存在である。
俺らが2年生の修学旅行にレンツ王国に行くのだが、その時に、レンツ王国はラザフォード王国に確実に宣戦布告をする。
そして、学園生を人質にとる。
レンツ王国は魔法先進国である。
ラザフォード王国の魔導船のファイヤーボールの射程が10kmほどに対し、レンツ王国のは50km。
5倍である。
何とかレンツ王国を脱出した学園生は、アイリスが総司令官の艦隊に自分たちの船でラザフォード王国軍に参加し、艦隊決戦を挑む。
レンツ王国の700m級魔導戦艦「ハティ」を旗艦とする艦隊は艦艇2万隻、ミャーチ12万機。
対して、ラザフォード王国軍艦艇1万2千隻、ミャーチ7万機。
この艦隊決戦が本当にやばかった。
ファイヤーボールの射程が5倍だし、戦力も不利なんだもん。
戦術でどうにかなる話ではない。
ここだけで20回くらい王子が死んだ。
え?
ヴァント使えば勝てるくね、って?
まだその時は入手できないんだよ!
ちなみにヴァントを手に入れるためには最短で3年生までかかる。
じゃあ、どうやって勝ったかって?
ラザフォード王国の魔導戦艦の正面の装甲はヴァントほどではないが、魔導戦艦としてはトップクラスで厚い。
そのため、戦艦を敵に向かって特攻させ、他の艦艇の盾にする。
そして、アイリスの乗ってる旗艦「ハティ」にラムアタック。
これでも、損耗率50%。
先にアイリスを排除してしまおうと思ったこともあるのだが、ガードがとんでもなく固くて、できなかった。
敵の戦力を修学旅行中にを削ろうと思っても、削れて重巡3隻ほど。
2万から3が引かれたところで、って感じ。
あのクソイベの再来でないことを祈る。
☆
昼休み。
いつものベンチ。
カイルとハンスは、王女の来航に戦々恐々としていた。
「おいおい、アイリス王女の前で撃沈判定なんて食らってみろ。親父に勘当されるぜ」
「恥晒し以外の何物でもねえ。エルン、やっぱりお前の船に賭けるしかない。どんな船なんだ? ミャーチか?コルベットか?」
俺は二人の期待に満ちた目を見て、少し迷った。
「駆逐艦だ。名前は『ラムラダ』」
「駆逐艦? 200m級か………。よく用意できたな。どっかから借りたのか?」
「一応自前。」
「そうか……。なあ、それよりさ」
それより何だよ。
一瞬で話を変えやがったな。
カイルが周囲を見回し、声を潜める。
「さっき、王女アイリス様の乗ってくる船の情報が、小耳に入ったんだ」
「なんだ?」
「レンツ王国の最新鋭魔導弩級戦艦『ハティ』。全長900m超え、レンツ王国では最強と言われてる。それが視察の警護で来るらしい」
ガタッ
俺は思わず立ち上がる。
「どうした?」
カイルが、俺の顔を覗き込んでくる。
「な、何でもない……」
「ハティ」だって?
しかも、「メモメモ」のより200m以上でかいし。
魔導弩級戦艦?
そんなカテゴリー、「メモメモ」にはなかったぞ?
レンツ王国の名前は、レンツの法則のレンツを使わせていただきました。




