102話 反省した方がいい件
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振り返ると、行方不明だった連中のうち、マーサ達を除いた全員がいた。
皆、ポカンとした顔をしている。
「お前ら。今まで、どこに行ってたんだ?」
「工場主に頼み込んで、布作りを体験させてもらってな………。布で終わらせるのがもったいなくなって、服を作ってみたんだ。集中しすぎていたのか、皆時間を忘れてしまっていたんだ。服を作り終わったと思ったら、外は真っ暗。工場主が夕食を食べていけと言うから、皆で夕食を食べて、いざ宿に帰ろうと思ったら、お前らが言い争っていたという訳だ………」
エリカが地面を見ながら言った。
コイツらは俺とアカリの言い合いを聞いていたからな。
俺らが結構な時間を捜査に費やしたことを聞いて、目を合わせられないのだろう。
「………本当に、申し訳なかったと思ってる………」
コイツらに説教をするのは、少なくとも俺ではない。
サーシャと担任だ。
だからといって、「全然大丈夫!」と言えるほど、俺の心は広くない。
俺は、何て声をかければいいんだ?
「そんなことよりも、平民!その犭………」
タァン
「ひっ」
ヴァントがコイルガンを空に放つ。
「黙りなさい、シャルロッテ。『そんなこと』ではないでしょう?マスターがあなた達を探すのに、どれだけ時間をかけたと思っているのですか?あなた達が、やりたいこと事をしている間に、私たちはどれだけの地下室を破壊したと思っているのですか?」
………それな。
俺らとしては、「そんなこと」で済ませられないんだよ。
お前も、俺らの言い争いを聞いていただろう?
実際に、マーサ達は攫われていたんだぞ?
「なっ、なによ!平民の執事ごときのくせに!この私に説教!?」
カチャッ
ヴァントが、コイルガンをシャルロッテの方に向けた。
これは、どっちだ?
脅しか?
本気か?
「お、おい、ヴァント。それは流石に……」
「儂からも、お願いするのじゃ!確かにロッテは失礼だった!じゃがっ………」
タァンタァンタァン
発砲音。
バタッ
バタバタッ
人が倒れる音。
それはシャルロッテの後方から聞こえた。
近づいてみると、黒いフードをかぶって、手にナイフを持ったいかにも暗殺者のような人間が3人倒れていた。
3人ともヴァントに額を撃ち抜かれたようで、絶命している。
ヴァントが狙ったのは、シャルロッテではなかったのだ。
「全く。自分の身も守れないような人間が、勝手な行動をするのはやめてください」
シャルロッテは口元を押さえている。
シャルロッテだけではない。
女子生徒ほぼ全員だ。
襲いかかってきそうだったとは言え、自分のすぐ近くで人が死んだのだ。
胃酸が上がってくるのはよくわかる。
俺は慣れてしまったが。
「この死体、どうするよ」
「ここは、治安が悪いですからね。死体の一つや二つ……まあ、三つですが、転がっていても、不思議ではないでしょう。死体漁りをした後、放置しましょう」
俺とヴァントで死体漁りをしたのだが、結局何も出てこなかった。
そのため、俺らがなぜ襲われたのかは分からずじまいだった。
☆
「皆ざん!無事で、よかっだでずぅ!本当にっ!」
宿の前に、サーシャが1人で立っていた。
よほど、心配だったのだろう。
涙を流しながら、一人ずつ、抱きしめていった。
「エルンさんたぢもぉ、ありがとうございましたぁ!」
そう言って、俺にも抱きついてきた。
周りからの目があるため、必死に離れようと抵抗してみたのだが、流石は剣術大会優勝者だ。
力が強い。
息がっ、できない。
「ちょっと、サーシャ。これ以上はマスターが死にます」
「ああっ!すいません!」
「コヒュー、コヒュー。ゲホッゲホッ」
ヴァント、よく言ってくれた。
このままだと、サーシャに落とされるところだった。
意識がね。
「エルンさんには、また助けられちゃいました!」
「いやー。俺は諦めようとしていたんすよ。お礼なら、アカリに言ってください」
サーシャは、そっぽを向いているアカリの正面に行き、
「お疲れ様でした!アカリさん!」
と言った。
アカリの表情は見えない。
「ところで、エルンさん。エルンさんが見つけてきてくれた方々は……マーサさん達みたいに、攫われてたり……」
「なんか、工場で服を作ってたらしいっすよ?その工場主に夕食を食べさせてもらったらしいですし……」
「…………え?」
サーシャの雰囲気が変わった。
俺は、これに近いものを2回ほど経験している。
サーシャの怒り。
逆に怖い笑顔。
「聞き間違いじゃないですよね?」
「はい」
「………あなた達。集合時間に数時間遅れたのは、仕方ないです。マーサさん達のように、攫われていたならね。あなた達は何で遅れたんですか?自分たちの口で言えますよね?はーやーくー」
……何というか………。
当然だな。
反省することだな。




