101話 息ぴったりだった件
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☆
マーサと共に攫われていたのは、女子5人。
言い方は良くないんだろうが、ここでもう少し捕まっていてほしかった。
なんなら、ここで全員捕まっていて欲しかった。
あと、10人近くを別の場所で探さなければならない。
この6人を連れて?
そんな馬鹿なことはするつもりはない。
コイツらには自分たちの力でレストランに行って欲しいのだが、また攫われたらどうしよう。
……。
アカリには、機動力と魔法による攻撃力がある。
ヴァントには、精密射撃能力がある。
それに対して、俺にできることといえば、警棒を振り回すことだけ。
え?
俺って、いらない子?
………俺がレストランに連れて行くべきかな。
「よーし。俺がコイツらをレストランに連れて行くから、捜査を続けてくれるか?」
「無理です」
ヴァントが即答した。
「嫌です」ではなくて、「無理です」。
なぜだ?
アカリとヴァントなら、前衛と後衛でバランスがいいと思うのだが。
「駄犬と2人っきりなんて、喧嘩する自信しかありません」
「そんな自信を持つなよ」
「いいですか?私とアカリの関係は、マスターという架け橋によって成り立っています。架け橋が無くなったら、どうなると思います?」
「でもさ。お前ら、カイザー博物館での夜は、息がぴったりだったじゃん」
「それは……」
「実は、仲がいいんだろ?」
「ち、違います!」
「ちょっと待ってくれ!」
俺とヴァントの言い合いに、突然、マーサが口を挟んできた。
「どうした?」
「そんな……私たちのために、言い争わないでくれ!」
言い方よ。
まあ、マーサ達の”安全”のために言い争ってはいるな。
「自分の身くらい、自分で守れる」
攫われた奴が何を言っているんだ?
「『攫われた奴が何を言っているんだ?』って顔をしているな」
ご名答。
その通りだ。
「自分で守れるなら、攫われるなよ」
「それはそうだが、安心しろ!私が責任を持って、皆んなを守ってレストランまでたどり着いてみせる!」
余計に安心できないんだが?
どこから、そんな自信が出てくるんだ?
マーサに剣の実力があるのは知っているが。
「その代わり、お願いしたい事がある」
「何だ?」
マーサが近づいてきて、俺の耳元で囁く。
「今度、『ご褒美』をくれないか?」
「ご褒美だと?何か買えと?」
「い、いや……。そうじゃなくてな……」
ん?
マーサは俺に何か買ってほしい訳じゃないのか?
なら、俺に何をしろと?
まさか……。
「鞭で打てと?」
「そうだ!」
これは、難しい選択だ。
後でマーサを鞭で打てば、俺は残りの生徒探しに専念できる。
鞭で打てば………。
考えているうちに、行方不明な奴らのリスクは上がっていく……。
ええい!
ままよ!
「わかった……」
「やった!んんっ!考えただけでっ、かっ、体がっ!」
はあ。
他の人に聞かれてなくて、よかった。
「マスターの変態」
俺は変態ではないぞ?
行方不明な奴らのためだ。
「え?聞こえてた?」
「勿論。私の身体は超高性能なので、耳も超高性能ですよ?」
☆
マーサ達と別れて、さらに3箇所に突入してみたのだが、それといって変わったところはなかった。
変わりなく倉庫になっていたり、変わりなく大麻畑になっていたりしていた。
「ヴァント!今何時?」
「いちだ………。21時53分です」
キツイな。
もう、3時間弱かかっている。
手遅れかもしれない。
どうするべきだ?
諦めるべきか?
いや、それはダメだ。
国王に皆無事に帰ってくるように言われたし、サーシャには「どうにかする」と言ってしまった。
そうなったからには、簡単に諦めることはできない。
だからと言って、候補地にいなかったら、どうしろと?
砂漠に置いてきたインヴィクタスの砲を撃ち、弾着に驚いて出てきた人を片っ端から調べる?
……シーザーの外に行ったのだとしたら?
どうしようもない。
そもそも、なんで、一度に大量の生徒が消えるんだよ!
「諦めるかなぁ」
俺の口からその言葉が漏れた瞬間、前方から寒気。
走る足を止めて、アカリが睨みつけてきたのだ。
「ど、どうした?」
「どうしたも、こうしたもないよ!お兄さん!」
アカリは激怒している。
思えば、マーサを見つけたくらいから様子がおかしかった。
「マーサが、あんなことになってたんだよ!?ボクが1番好きな登場人物だったのに!1番早く見つかった、マーサであれだよ!?他の人は、もっと酷い目に遭っているかもしれないんだよ!?エリカは?シャルロッテは?同じ転生者のアイリスは?お兄さんと仲がよかった人もいたじゃん!なんで、なんでそんなにすぐに諦められるのさ!」
「何でって言われても………手遅れかもしれないし………」
「手遅れ”かも”しれないだけで、諦めるの?まだ、可能性があるのに?あーあ、可哀想なエリカ達だなぁ。お兄さんに見捨てられてさ!元はといえば、誰のせいでこうなったと思ってるの?誰かさんがレンツをボッコボコにして、修学旅行の行き先が変わったからじゃないの?」
「はいはい。この修学旅行で起こったことは、全て俺がわるかったですよ。すいませんでした。……これで満足?」
「そういうことを言ってるんじゃないよ!お兄さんは、何も感じないの?心配じゃないの?心は無いの?」
「心があったら、アイツらは助かるのか!?俺だって、心配くらいしてるさ!俺だって、知り合いが酷い目に遭って欲しくない!だから、探したじゃないか!その結果、マーサ達は助けれただろう?」
「あ、あの……マスター、駄犬。エリカ達がそこで見てますよ?」
「ヴァントは黙ってて!これは…………え?」




