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7頁.緊急招集2

 黒服は、改まった様に背筋を伸ばして話を続ける。


「ドラゴン・コードとは、その名の通り竜のコードを人間に移植出来るように調整したものだ。規格は軍用、それが輸送中何者かによって強奪された」


 軍用コードとは、立ち位置的には戦闘機や戦車に近く、あくまで軍事兵器規格という意味である。そのため、軍人なら全員軍用コードという訳ではない。

 また、着脱に移植という行程を挟むので軍を退役した人物や、軍隊が処理すべき魔獣を討伐する為に特化した魔術師が特例として所持している場合がある。

 黒服の秘書と思しき女性が立ち上がり補足を挟む。


「コードは、素材となったモノの性能がそのまま反映されます。竜種ともなれば、一晩で一つの県を燃やし尽くす事も可能です。そのため、移植する前に犯人確保の必要があります。仮に犯人が確保出来なかった場合――」

「――失敗した時の話は要らん。状況だけ言え」


 苛立たしげに放たれた参加者の台詞が秘書の説明を断ち切る。

 コードは、軍用と一般用で性能が異なる。

 一般用のコードは、量産を前提にしており出力は控え目。魔獣から採取した魔導器官を何分割かして力を抑える事で、本来なら一体の魔獣から一つしか作れないコードを複数製造した言うなれば廉価晩。そのため、軍人に支給されるコードでも基本的には一般用コードとなる。

 対して、軍用のコードは性能重視。魔獣一体を使用して一つのコードを作る。人体に収まらないサイズの場合は、錬金魔術を使用して人間に移植できるサイズまで濃縮・圧縮。そうすることで、素材となった魔獣の出力で魔術を行使できる。また、量産せずに生産する数を絞ることにより、コードが誰に移植されているのか、何処に管理されているのかという状況を把握しやすいと言う利点もあった。

 秘書は、黒服の男に視線を向け指示を仰ぐ。男は言葉では答えずに頷いた。


「失礼しました。ドラゴン・コードが強奪されたのは灯京都の大黒区です。現在は灯京都を検問と結界で封鎖し、三十分後には緊急事態宣言で民間人は待避させる予定です。隣接する池葉県、彩玉県、山成県、火奈川県も同様の対応をします」


 人の流れを遮断すれば、それに紛れて逃げようとする犯人の動きを制限できる。

 無論、身動きが出来なくなる事を見越してコード強奪直後に移植を開始している事も考えられる。人に移植されたコードが何を素材とした物なのか調べるには、専門の施設が必要となる。なので、検問で見つける事は実質不可能。

 なので、もし既に犯人が移植し始めていたのであれば、それは犯人が一枚上手だったと言うことになる。

 参加者の一人が手を上げる。


「透明化で検問をすり抜けてる可能性は?」

「魔術を使用しての結界横断は不可能だ。弾き飛ばされ、魔術が解除される」


 透明化に限らず、飛行魔術による突破も出来ない。結界に接触した直後、弾かれて墜落してしまう。

 一見、結界を跨ぐ瞬間だけ魔術を切れば良いように聞こえるが、そう言う訳ではない。結界で相手を弾く設定を魔術を行使している者、ではなく魔術を行使して何秒以内の者と設定すれば対策出来る。


「俺らに送ったメールって犯人には届かないのか?メールで割り出せたりしないのか?」


 矢継ぎ早に飛ばされる質問に、今度は秘書が答える。


「このメールは政府に届け出を提出した魔術師のみに送っています。なので、犯人が未登録の場合はメールが届きません。メールが届いているにも関わらず無視している場合は、こちらで位置が把握出来ます」


 政府に届け出を出さない者は、魔術師申請義務違反として罰せられる。

 大前提、魔術師として活動するには、政府に魔術師としての能力を示し、承認される必要がある。承認されずに魔術を行使するのは、狩猟免許を取得していないのに罠を仕掛けたり銃を所持するようなものだ。

 習得している魔術が不特定多数の人々を死傷させる可能性があるのなら、終身刑すら視野にはいる。例え、それが魔術師の想定した使い方ではなくてもだ。

 そう言ったリスクの兼ね合いから、大半の魔術師は政府に魔術師申請を行っている。


「コードに成ったドラゴンの名前は?」

「登録名はペルーダです」


 質問の合間、一人の男が机の上に足を乗せる。電脳空間内にノイズの波紋が走った。

 自然と質問は止まり、男は見るからに不機嫌そうに顔をしかめ、質問を投げ掛ける。


「皆が思ってそうな事を聞くけどよ。これってドラゴン・コードの性能実験だったりしねぇよな?」

「はい?」

「だから、ドラゴン・コードを使用した兵士を街中に放って、それと従来の魔術師を戦わせるのが狙いなんじゃねぇのかって事だよ」


 それは、他の参加者が口に出したくてもしなかった質問だった。

 大小はさておき、魔術師は全員政府に行動を制限されている。特に、戦闘に関係する魔術師は政府の事を完全には信用できない理由があった。

 少年漫画で良く見る様な仲間が死亡して強くなる事を決意する出来事が起きたとする。漫画なら修業編に突入し、新たな技を習得するのがお決まりだ。しかし、この世界では政府に戦闘魔術研究の申請を出す必要があり、その申請は大抵通らない。

 戦闘魔術の研究は、言ってしまえば、熊や猿の被害が増えてるので強力な武器が欲しい。バズーカーや戦車の所持を認めて下さい。と言っている様なものだ。そんな申請は通らない。

 魔術師達も政府の言い分を理解出来ない訳ではない。

 が、魔術師達は命を危険に曝して魔獣と戦っている。戦闘力はそのまま生存力に直結し、自分が強くなればより多くの人を救えると考える者も多い。そして、それを政府に蓋されているのだ。

 助けて下さいと言われ、判りましたと即答できる関係ではない。


「それは、信用して頂く他ありません。先程説明した通り、灯京都とその近隣は封鎖されているので、演技でそのような事は……」


 弱々しく対応する秘書に呆れ、別の参加者が手を上げる。


「あの、何か勝手に質疑応答みたいな流れになってるんですがぁ、内容は判ったので戻っていいですか?どうせメール受け取った時点で色々バレてるんでしょ?逃げませんよ。それに、急ぎなんだし資料もメールでくれれば良いです」


 黒服は、一度秘書の様子を見てすぐに答えれないと判断し、毅然とした態度で答える。


「許可する」


 チカはアカネの手を握る。


「戻るよ」

「え、はい」


 そう言うと、二人はメニューを開いて電脳空間からログアウトした。


 

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