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4頁.食事会2

 現れたのは普通の店員だ。この個室の人払いは、あくまで一般人が寄り付かなくなる為のものであり、配膳を行う店員は対象外に設定されていた。


「失礼します。えっと、まずは餃子二皿とほうれん草のお浸し、キムチに煮干しチャーハンとチャーシュー丼ですね」

「はーい」


 店員はアカネとチカの前に餃子を一皿ずつ置くと、お浸しとキムチを二人の間、煮干しチャーハンをアカネ、チャーシュー丼をチカの前に並べて立ち去る。

 二人は並んだ料理を見て呟く。


「逆だね」

「逆ですね」


 正しくは、アカネが餃子二皿、キムチとチャーシュー丼。チカがお浸しと煮干しチャーハン。綺麗に正解を回避している。

 二人で食事を並べ直すと、再び店員が料理の乗ったお盆を持ってくる。


「次にえっと……豚骨味噌とつけ麺になります。オーダーは以上でよろしいですか」

「はーい」


 店員は豚骨味噌ラーメンをチカに、大葉と梅のつけ麺をアカネに出すと、伝票を置いて部屋を後にする。


「逆だね」

「逆ですね」


 再度自分の所に料理を並べると、二人は手を合わせる。


「「いただきます」」


 二人は同時に食事を始める。

 するすると食事を進めるアカネに対し、チカは最初の一口で手を止める。不味かった訳ではない。美味しいは美味しいのだが、香りや味に違和感を覚えたからだ。


「やけに安いと思ったら魔術で調味料誤魔化してるんだ」


 この店では、ラーメンやつけ麺が五百円前後とでチャーハンや丼物が三百円。セットだとチャーハンと丼物が割り引かれるので、合計で七百五十円あれば足りる。

 他の店ではラーメン一杯で八百円は越えるため、この店の値段は破格だった。

 値段が低い理由は単純に、調理の味付けに魔術を使用していた為、その材料費分安いのだ。


「そうなんですね。初めて知りました」


 アカネは食事を進める。


「……大丈夫なの?」

「私の奢りなので文句は無しです」


 チカが言いたかったのは、アカネがそそくさと食事を始めたからである。

 魔力強化。それは、魔力を発する事で自身の身体能力を上昇させる技術である。魔術師は、これを常に微弱に発する事でマスクや防護服の代わりにして身体に異物が入ることを防いだり免疫力を上げたりしている。

 そして、その魔力強化を使用していると、今回の様な料理に魔術が使われている場合、その魔術を弾いてしまう。だから、今回のように魔術が使われている食事の際には解く必要がある。

 しかし、アカネは魔力強化を解除するまもなく食事を始めていた。要するに、そもそも魔力強化を切っていたので、それに対してチカは無用心なのではと心配して確認していた。


「いや、自分で払う」


 千円もあれば足りるのだから、奢られる必要もない。チカがそう思って財布を出そうとすると、アカネは口元を手で覆いながら言う。


「もう大将には支払ってあります」


 チカは静かに財布をしまう。

 まだ支払いが済んでいないのなら交渉出来たが、支払い済みとなれは話は別だ。アカネの店員とも話す必要がある。長々と問答をするくらいなら、割り切った方が建設的だという判断だ。

 金銭の会話をした為か、チカの頭にどこからともなく報酬という言葉が囁かれた。


「魔獣討伐って稼ぎどうなの?」

「さっきので五百ですね」


 無論、この場に置いては五百万円を指す。

 チカは食事を再開しながら小首を傾げる。


「割に合わなくない?」

「私もそう思います」

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