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4)成人1

10年前に書いた初作品、続きを投稿します。

”緑の星”へ旅立つ、大事な・・・。

 春とは言ってもまだまだ風寒く、衣更えにはまだ時間がかかりそうだな。そんな事を考えながらぼーっと発着場近くにある公園の椅子に座っていたアム。発着場には暖かな待合室もあるのだが、今日で”蒼き星”も当分見収めになるので、時間一杯まで外にいようとしているのだった。

 思えばいろいろな事があった。”組織”の創設、人類高等教育機関への入学、予想外の副産物を生んだ初めての研究、多くの友達、新たな親友。ナオナの積極的さにはまいったけど、良い子だった。

 そして組織からの極秘通信文と白き神との出会い。今、こうしてここで出発を待つなんて、誰が予想ついただろうか。神人の縁は奇なものだ。

 公園の近くを多くの学生を乗せた大型車が通り過ぎ、ふと仲間達に思いを馳せるアム。

 アムの仲間達は全員予定通り人類高等教育機関を卒業する事ができた。

 カズヒは望み通り、”蒼き星”で工業機械の開発者に配属された。

 密かに作っていた彼女も”蒼き星”の同じ大陸に配属が決まっており、会う事は難しい事では無いだろう。良かったな、カズヒ。

 カムナは”火の星”に赴任し、環境改造技師を目指す事になった。

 あまり笑う事の無いカムナが、赴任が決まった日はご機嫌だった。

 噂では決して住み易い星では無いが、やりたい仕事に就けた事が本当に嬉しいのだろう。 

 アジフスはその細やかな感性を買われ、高位ではないがきちんとした芸術家の神に、助手として雇われる事になった。正体が怪しい神ならとんでもない災難を被るが、そうでなければ人類芸術を生み出して行く最先端の立場に立てる。”蒼き星”である事も含め、うらやましい。 

 問題はナオナだ。黒威神の腹心の一人、貢献の神が新たに立ち上げる人類専門教育機関の指導員として”緑の星”へ赴任する事になった。

 これまで、人類の生産地である”蒼き星”で全ての教育を行ってきたが、より”緑の星”の業務に適する人材を輩出するとの名目で新たに創設された機関だ。学び舎の神が亡くなった後の後任神は優れた教育者だが政治的影響力はまだまだで、そこをつけこまれて高等教育機関の対抗組織創設を許す事になってしまった。

 教育士の次に位置するとはいえ、人類が指導員の立場を”緑の星”で与えられたのは意外だった。人類は下僕であり道具としていた星だから、良い変化が進んでいるのかもしれない。

 そのような状況ではあるが、黒威神の指揮下に入るのは大変心配だ。

 権力を持つ男神は、人類の女性を弄ぶ場合が・・・いや男性も弄ぶ。

 ようは心配なのだ。

 

 「おお~い、アム~」

 考え込んでいると、小型車に乗った仲間達に声をかけられる。

 「みんな、来てくれたのか。」

 皆出発直前で忙しいだろうから、と断ったのに来てくれたのだ。

 「アムが一番最初に旅立つから、見送りにかこつけて最後の全員集合ってわけ。明日以降は一人抜け二人抜け、見送りどころじゃないし。」

 アジフスが楽しげに説明する。

 「そっか。それでもありがとう」

 仲間に微笑むアム。

 いつも元気いっぱいのナオナが無言なのが気になるが、カムナに即されて小型車に乗り込むアム。

 「時間が無いぞ、飛ばすからしっかりつかまって!」

 「か、カズヒ。安全運転でたのみ・・あぁ!」

 区動輪が猛烈に回転して煙を出し、いきなり加速する小型車。

 「う”う”う”」

 「も、も、もとゆっくりた、たの、む」

 「大丈夫、衝突しそうになったら安全機構が人体を保護するって!」

 「そういう・・・問題じゃな~い!」


 時折悲鳴を響かせながら発着場へたどり着く小型車。

 玄関で全員降りると、自動で駐車場へ向う。

 「なによ、自動制御機構ついてる機種じゃない。カズヒはもう運転禁止よ。」

 アジフスが青い顔で文句を言う。皆がうなづく。

 「無事ついたんだから、いいじゃないか。ほら、話をする時間ができたし。」

 平気な顔のカズヒ。きっと運転人格変化症に違いないと皆思う。

 ぞろぞろと待合室に入り、他愛無い雑談を始める。これで当分は会えない、へたをすると生涯会えないかもしれないのに、明日以降もなんら変わらないかのようにすごす仲間達。アムはそれが何より嬉しかったが、ナオナはあいかわらず黙っている。

 いよいよ出発の時間が来て、搭乗口に向う一同。

 大きな吹き抜けの部屋に到着すると、周りには別れを惜しむ人達が各所にいる。神々はいつでも自由に移動できるので、別れを惜しむ事無く次の武器検査室へ入って行く。

 アムは思い切ってナオナに話しかける事にした。

 「ナオナは旅の準備はできたかい?」

 「うん。」

 「”緑の星”は食べ物が豊富らしいけど、食べ合わせで腹を壊す事があるらしいね。知ってた?」

 「うん。」

 仲間達は、ナオナが元気無い理由を知っていたゆえに黙って二人を見守っていた。

 「・・・どうした?もし赴任地に不安があるなら、現地の友人達に援助を頼んでおくよ。」

 がまんにがまんを重ねた顔でうつむいていたナオナが不意に顔を上げてアムを見つめる。

 「違うの。離れたくないの。離れる事を機会にアムをあきらめたかったの。”緑の星”に行ってアムの・・・役に立ちたいと思ったの。でも、でも・・・まだ貴方が・・・好きなの。あの子が貴方の心を占めている事がわかっていても!」

 泣き崩れるナオナ。

 共にしゃがみ込んで背中をさするアム。

 徐々に泣き声がおさまり、しばらくして立ち上がるナオナ。

 「はぁ。言いたい事言ったらすっきりした。私が”緑の星”でいい人見つけてからじゃ、遅いわよ。」

 突然アムに口付けをして、すっと離れて行くナオナ。

 「これで一区切りよ。元気でね、アム!」

 きびすを返し、走り去って行くナオナ。部屋を出て見えなくなり、やがて足音も聞こえなくなる。

 呆然とするアムの肩を叩くカズヒ。握手を求めるカムヒとアジフス。

 「がんばれよ。」

 「元気で。」

 「元気でね」

 「ありがとう、みんな。新しい環境で、幸多き事を願っているよ。では、また!」

 再び微笑みが戻ったアムは、別れの挨拶をして検査室へ入って行く。


 「ありがとう、みんな・・・ありがとう、ナオナ。」  

 万感の想いを込め、窓から眼下に広がる大地を見つめるアム。

 ”蒼き星”最大の大陸、”汎外ハンゲ”の上を通過し、再び”大海洋”の上に達した頃には、すっかり宇宙に達していた。

 ”蒼き星”の縁から月軌道にある衛星都市が現れ、やがて近づいてくると、機内はあわただしくなってきた。

 「当機は、まもなく衛星都市、”蒼き輝き”に到着します。手荷物など忘れないよう、ご注意下さい。」機内連絡が流れ、神々も人も壁際の床近くにある収納場所から荷物を取り出し始める。

 外の景色が動かなくなり、軽くぶつかるような音がした後に出入り口の警告灯が消灯、扉が開く。

 「定刻通り、到着しました。ご利用、ありがとうございました。」

 神々が全員扉を出たのを確認してから、人類が動きはじめる。

 

 管理門を出ると、そこは巨大な街だった。端が霞んで見えないほど程遠く、空はまるで本物のようだ。人工の街とは思えないほど緑は多く、様々な概観の建物がところせましと建っている。

 街に入ってからが驚きだった。様々な肌の色をもつ神々、様々な世代の人類が入り乱れ、その数も半端では無かった。

 「これはすごいな・・・」

 顔つきが猿に似た何世代か前の人類が6人、楽しげに会話しながら横を通り抜ける。神と神が声を荒げて喧嘩をしているのを初めて見る。

 店主と思われる人類に女神が親しげに話をしている。

 目つきの悪い人類が棒のような物を腰にさげて闊歩している。

 衛星都市は設置された惑星の文化の延長で運営されると聞くが、ここは良くも悪くも”蒼き星”を超えているようだ。

 「お兄さん、寄っていかないかい?」

 突然声をかけてきたのは春をひさぐ者であろう。肌の露出度が高い、きわどい格好をしている。愛敬のある顔をしており、職業を感じさせないほがらかさが感じられた。

 「いや、まだ自分のお金を持っていないんだ。稼いだら、またよろしく~」

 「そ~ぉ、まってるわ~」

 「・・・ふぅ」

 考え無しに歩いていたが、どうやら繁華街に来てしまったようだ。

 治安も問題がありそうなので、近くの駅から下層列車に乗る事にする。

 事前に調べた情報によると、この衛星都市は4つの層でできていた。

 惑星側には基礎階層があり、巨大な六角形の反重力板とそれらを固定する金属骨格が立ち並らんでいる。空間には海の水が満たされ、食用の魚介類が育てられているが、噂では神々の造った水棲知性体が住んでいるらしい。

 金属の柱は目立たないよう光学迷彩を施され、宇宙から太陽光を導き天井で照射している為、ここで目覚めれば”蒼き星”の海にいると勘違いするかもしれない。”大星海”と呼ばれ何個所か島も有り、街に住む者の憩いの場にもなっている。

 その上には機械層と呼ばれる都市機能を維持する為の層がある。工業団地や下層列車この層におかれている。

 アムのいる層は都市層と呼ばれ、居住施設、商業施設、公園などがある。

 本物のような空の上に最上層、天の層があり、そこは何があるのか公開されていないかった。昔は神々しか入る事を許されなかったが、ここ数百年は高位の神が許可した人類が何名か入る事を許されている。いったいどのような場所なのだろうか?

 考え事をしているうちに、駅に下層列車が到着した。扉が開き人類が降りてくる。人がきれたところで乗車する。中には人類がぎっしりと乗車していた。神々はさすがに専用車両に乗るが、お付きの人類は同乗が許されている。高位の神と同行する時はそちらに乗れるだろう。

 少し乱暴とも思える加速をした後、かなりの速度で次の駅を目指す。

 列車と呼ばれてはいるが、実際は円筒路線の中で浮上しながら超高速で走り回る筒が連なった乗り物であある。ゆれる事も無く、再び減速を始めた。

 「中央公園、中央公園~」

 案内の声と扉上の掲示板が同時に当着駅を案内する。扉が開くと同時にアムと乗客の半分が降りていく。

 白き神の秘書に指定された建物は、この駅から地上に出てすぐのはずだ。

 健康の為に階段を使い、都市層へ上がる。

 表に出ると、至る所に木陰が有り、気持ちの良い風が吹いている。

 駅の階段を出ると整備された歩行者道が走っているが、それ以外は人工物が見当たらない。

 「こんな公園のどこかに建物があるのだろうか。」

 「ありますよ。」

 突然真後ろから声がして、振り替えると美しい女神が立っていた。

 少し透き通った白い長髪をなびかせ、清楚な衣服は首元からひざ上まで及び、そこから下は美しい足が見えた。

 「こんにちは、白き神の秘書をしております、アンナ神です。」

 「アムです。よろしくお願いします。」

 「よろしく。」

 アンナ神が微笑むと、周りで花が咲き零れたような錯覚をうけた。人類を虜にする神がいると言うが、この神なら虜にされたい。

 「しちゃおうかしら。」

 「は?!」

 この神は読心術の能力でもあるのだろうか。いや、分かるはずはないと自分に言い聞かせ平常心を取り戻す。

 「なんでもないわ。では、こちらへ。」と、アンナ神は歩き出す。

 右横に並び歩き始めるアム。

 「衛星都市に来るのは初めてでしたね。どうでしたか?」

 「はい、見るもの全てが新しく、驚くばかりです。」

 「そう。衛星都市の中で一番栄えているところですから、次々と新しいものが持ち込まれ、そこからまた新しい何かが生まれます。貴方のような方には宝箱に見えるかもしれませんね。秩序を好まれる神からは忌み嫌われていて、そのような神は外殻の宇宙港から出る事無く地上と星系を行き来されます。その為、このような混沌とした文化が生き延びたのでしょうね。行くと解りますが、”緑の星”とその衛星都市”緑の炎”は正反対の文化で、別の意味で驚く事でしょう。」

 「そうなんですか・・・」

 アムも組織の情報として並みの人類以上に把握はしていた。しかし、この都市に来て実際に肌に感じ驚いた事も多かった。アンナ神の言う通り、行く先々で驚くだろう事は予想できた。

 アンナ神が巨木の前で立ち止まり、アムに巨木の洞へ入れと指差す。

 薄暗い洞へ入って行くと背後の景色が消えた。それを見て急に立ち止まったアムにアンナ神がぶつかって倒れ掛かる。

 「あぁ」

 「うぁ」

 アンナ神が地面にぶつからないように、倒れながら咄嗟に抱え込む。

 「大丈夫ですか?」

 「ええ、大丈夫よ。ありがとう。それより、この手を別の場所にどかしてくれないかしら?別に嫌では無いんだけど、まもなく白き神がきますので。」

 アンナ神を背中から抱え込んだアムは、見事にアンナ神の豊かな胸を掴んでいた。

 驚き手を放そうとした瞬間 辺りが明るくなる。近くに別の神が立っており、アム達に声をかける。

 「おかえり、アンナ神。アムよ、良くきたな。しかし・・・そのような事は個室ですべきだと思うぞ。」

  アムが慌てて手を放したと同時に、アンナ神がするりと立ち上がり礼をする。

 「只今アム君をお連れしました、白き神よ。」

 「白き神、こ、この度はお招きいただきあ、りがとうございます。しかし今のは事故であり、決してそのような意図はありません~」

 赤面しながら早口に説明するアム。 

 「白き神も意地悪ですね。今の顛末は見ていらしたくせに。」

 「はっはっはっ。そうだな。まぁ、アンナ神もまんざらではない様子だったから、アムもがんばりたまえ。」

 「はい!?」

 「もう。」 

 「さて、立ち話もなんだから、席に座り、今後の事をはなそう。詳細はアンナ神から説明する。」

 アンナ神がアムに向ってうなづくと、部屋中央にある椅子を手振りで示す。

 アムは神々と共に席に座った。


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