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3)青年期2

10年前に書いた初作品、続きを投稿します。主人公の青春時代。妖艶な女神が・・・。

 月末の37日、晴れ。まもなく訪れる夏を予感させる、強い日差しと気持ちの良い風が吹く中、白色の立方体が数本、高速で飛行している。

 反重力と流体制御技術により風の影響をまったくうけずに滑らかに飛ぶ。

 緑の山々を超え大きな湖に差し掛かったあたりで急激に高度を落とす。

 着地したのは、人類高等教育機関の駐機場。

 高等教育機関の長と、授業を行っていない全ての教育士が整列して出迎える。

 「白き神、この度は当機関におこしいただき、ありがとうございます。人類高等教育機関の長、学び舎の神です。」

 「出迎え、ありがとう。今日はよろしく頼む。」

 「はい。ではこちらへどうぞ。」

 長老とも言える機関の長を先頭に、来客、教育士と続いて建物に入っていく。歩きながら、機関の長が説明を始める。

 「本日の予定は、まず”制御玉”基礎講座1時間、教育士達と共に御食事をとっていただいてから、午後の前期末研究開発表会を2時間、見学いただきます。最後に教育士達にお話をいただく時間を取り、終り次第先程の駐機場へ移動、帰還いただきます。何かご質問は?」

 「無い。」白き神がうなずく。

 機関の長が白き神を見ながらうなずき返す。

 「では、この部屋へ御入り下さい」

  

 講堂の自動扉が開き、機関の長を先頭に神々が入ってくる。

 講壇に機関の長、その左右に見慣れぬ神々が2名づつ、講堂の後ろ左右に上級教育士が並ぶ。

 アムは、正面右から2番目の神を見た瞬間に何かとても懐かしい、暖かい気分になった。幼い頃に出会ったからであろうか。

 いや、もっと根源的な何かを感じる。

 目が合った瞬間、その神も何かはっとした顔をした。しばし見合った 後、機関の長の言葉に意識を戻された。

 「・・・の前に、本日人類高等教育機関を見学される、来賓をご紹介します。私から見て右から。”蒼き星”総責任者、白き神。」

 アムは自分が何かを感じたその神が、情報を伝えるべき相手である事を知る。

 「今日はよろしく頼む。」

 「私の左におられるのが”緑の星”総責任者、黒威神。」

 「よろしくお願いします。」

 見た目は凄みの有る壮年期の紳士、表情は晴れやかな笑顔。

 しかし。その奥にある冷ややかな目線を捕らえてしまったアムは、先ほどとは逆の背筋が凍るような恐ろしさを感じた。

 ”緑の星”上層部はほぼ”黒派で占められており、表向きは独立し実際はその一派である過激派、保守派を擁護している。

 そこの最上位に位置する神なら、人類に対して好意的であるはずは無いだろう。良くて道具扱いのはずだ。

 これではうかつな事はできない。白き神と積極的に会話するだけでも嫌疑をかけられそうだ。

 機関の長は続ける。

 「白き神の隣が人類保育施設の長、育みの神。黒威神の隣が護衛機関の長、テハス神。」

 「よろしく頼むぞ。」「よろしくお願いします。」

 護衛機関の長はまだ神々の位階のうち中程のせいか、まだ個有名で呼ばれている。しかし中程でありながら1機関の長を任じられているからには、侮れないはずだ。彼はどちらの派閥か?

 黒派であったら、ますます危険度が上がる。

 育みの神は、白派で白き神から絶大な信頼を置かれているのが明らかなので、危険度は低いだろう。情報の橋渡しを頼めるかどうかは確証を持てないが。

 黒威信とテハス神に察知される事なく、白き神に伝えなければ・・

 そんなアムの思いも知らずに、学び舎の神は続ける。  

 「・・・の順で見学いただきます。皆には、緊張する事なく日々学んだ事を来賓の神々に示して欲しい。では、”制御玉”基礎講座の教育士、授業を始めてくれたまえ。」

 「はい。まずは上期のまとめとして・・・」

 順調に進む授業と、演習。しかし、まったく機会を見出せぬまま、授業が終了してしまう。

 「良いでしょう。次回は演習の事前準備を忘れると起動できません、忘れない様に。では、本日の授業はここまで!」

 「礼!」演習で立っていたアム達は、一斉に礼をする。

 学び舎の神が来賓に目線と手振りで退出を即し、来賓一同と引き連れて講堂を出て行く。

 とたんにガヤガヤと話し声で満る講堂。眉間に皺を寄せて思案するアム。やはりこの手しかないか。

 「やりたくないな・・・」

 「どうしたんだ、アム。」

 「カムナ、え、声にでてた?なんでもないよ。」

 アムは冷や汗を掻きながら、講堂を出つつ言う。

 「ちょっと用事があるから食事は抜きにする。皆と食堂へ行ってて!」

 「おぃ、どうした・・・」

 小走りに部室へ走り去るアム。これからやる事は、目撃者を極力減らさなくてはならない。さもなければ、黒派からの迫害だけでなく、高等教育を受けている仲間からもまともな扱いを受けなくなる恐れがある。それゆえ自室ではなく、食事時閑散とする部室棟を選び、そこに準備を用意していたのだった。


 神々用の食堂で歓談する神々。人類の立ち入りは許されているが、食事は許されていなかったので、ここにいる人類は給仕だけだった。

 「いかがでしたか?先の授業は。」学び舎の神が経過の感想を聞く。

 「大変良く練られた授業だったと思う。それを真綿が水を吸い込むように吸収していく人類の若者達も、素晴らしい。」白き神の賛辞に、学び舎の神は笑みをこぼす。

 「私も予想以上の結果に驚いています。神々の教育士が立派な仕事をしているのには誇らしい思いです。人類の青年達も知的労働に十分対応できそうですな。」

 「そうじゃろう、そうじゃろう。」益々機嫌が良くなった学び舎の神と人類を生産した育みの神。

 黒威神は、穏やかな笑顔のまま続けて言う。

 「しかし・・・人類。少し賢く造りすぎではありませんか?」

 瞬間、場の空気が張り詰めた。ここで返事を誤れば、遺伝子設計の精密監査につながり、白派が人類に仕掛けた極秘の機能が明るみに出てしまう危険性もある。

 しばらくして、育みの神が無理に笑顔を作りながら答える。

 「お褒めいただいてありがとうございます。多少過剰能力に見えますが、それも若さゆえ背伸びをしているからです。黒派の要求通り知性は神々に遠く及ばない段階で止めております。」

 黒威神はしばし思案してから答える。

 「そうですね。予想よりも賢かった事が印象的であっただけなのかもしれませんね。いえ、決して育みの神の仕事を疑っているわけではないのですよ。そのようにお感じになられたとしたら、申し訳ない。」

 場の緊張が解れ、そこからは星系開発の進捗や最近の出来事など無難な話題に終始した。

 話題が一段落したのを見計らって、学び舎の神が立ち上がり神々を見回しながら言う。 

 「さて、食事も済みましたところで、休憩に適した中央庭園に移動したいと思います。お茶の用意もしてありますので。ではこちらへ。」

    

 建物を出て、中央庭園に向う小道を歩きながら歓談する神々。

 その時、ふいに可愛らしい声がかかる。

 「白き神様?」

 歩みを止める神々。そこに一人の少女が近寄ってくる。

 神々が見ても美少女と言える、美しい姿。可憐な物腰。テハス神が思わず息を呑む。

 「なにかな?私が白き神だが。」特に他の人類と差が無いが如くに白き神が答える。

 「私の名前はアジョムと申します。人類である私が声をおかけするのも恐れ多いのですが、白き神が執筆された”上位者ならばこそ、負うべき責務””実る穀物は頭を垂れる””暗雲の中でも、小さき花の声を聞ける者であれ”に感銘を受け、いつかその事をお伝えしたいと思っていました。」

 白き神は一瞬だけ怪訝な表情を浮かべた後、はっと何かに気づく。

 黒威神が僅かに下卑た笑顔で白い神に話し掛ける。

 「白き神も隅におけませんな。このように可憐な人類の好意を得るとは。題名からするとどれも説教臭い内容の様ですが、執筆のお趣味も無駄ではなかったのですな。」

 「黒威神、失礼な物言いではないですか?」育みの神が片方の眉を上げながら正す。

 「おお、これは失礼しました。」謝罪の礼を取る黒威神。

 「いや、かまわない。ところでアジョム、それはなにかな?」

 小脇に抱えていた絵画を、おずおずと白い神に手渡す少女。

 「これは・・・恐れ多いとは思ったのですが、白き神の肖像画にございます。この情報球には、先の3作品の表紙画を私の想像で描いたものが収録されています。」

 情報板で3枚の絵を表示して、一同に見せる。

 白き神が微笑みながら言う。

 「よく描けている。もしも作品を絵にしたなら、こうなっただろう。とても気に入ったのだが、良かったらこれらを私にもらえないかな?」

 「え!ほんとうですか。喜んでいただけて大変嬉しくお思います。進呈は考えていなかったので包んでもおりませんが、よろしければお持ち帰り下さい。」

 「そうか。ありがとう。」

 そんなやりとりを横目に、小道の外れを通り抜けようとするカズヒ、カムナ、アジフス、ナオナ。

 危険を感じ、アジョムは目線を合わさないようにしていたが、アジョムをさりげなく観察していたナオナが大きな口を開けて突然硬直した。アジョムと神々を見比べ、呆然とするナオナ。

 どう見ても美しく可憐な少女アジョムは、僅かに顔を引き攣らせ、手に嫌な汗をかき沈黙する。

 ハッと何かに気づいたカズヒが、ナオナの背中を押しながら中間達をひきつれて離れていくと、ようやくアジョムは呼吸ができるようになった。

 「どうしたのかな?アジョム。」と異変を察した黒威神が声をかける。

 「い、いえ、今になってどっと緊張した・・しただけで。あまり長時間お邪魔をしても失礼ですので、私はこの辺で失礼いたします。」

 深深と礼をしてから、アジョムは来た道を小走りに戻って行く。

 黒威神が好色そうな目で見ながらつぶやく。

 「おやおや、可愛いものだね。緊張のあまり、右手と右足、左手と左足が同時に前に出ておるよ。私のところに来たら、道具として可愛がってやるのに。」

 育みの神に睨まれているのに気づき苦笑する黒威神。

 受け取った絵を見ながら、物思いにふける白き神。

 「さて、お茶を飲みに行きましょう。ここで立ち止まっていてもなんですから。」学び舎の神を先頭に、一行は再び歩き出す。


 「はっ、はっ、はっ。」中間達のお決まりの休憩場所に走ってきたアム。

 「おぉ、お疲れさん。用事は済んだのかい?」カムナの問いかけに肯くアム。

 ナオナが意を決してアムの目を見詰める。

 「ねえ、アム。」

 「なんだい?ナオナ。」

 「10万番台に、アムそっくりの女性っていない?」

  ぎくっとするアム。

 「いないはずだよ、顔つきは全員変えて有ると言うし。」

 「じゃ、アムの複製が何かの実験で造られてる可能性は?」

 「少なくとも、自分では知らない。」

 「じゃ、アムが実は女性って可能性は・・・ある?」

 「やだなぁ。前に風呂を覗かれた時、ナオナ見たろう?」

 色めきたつ仲間達。

 「そこまでやるか、ナオナ」 

 「ナオナ、何がついてたの?はっきり見たの?」

 「・・・くぅ」

 「みんな止めてよ、偶然よ、偶然。」釈明するナオナを尻目に盛り上がる仲間達。  

 話がそれて内心ほっとしつつ、時計を見るアム。

 「ナオナの驚くべき行動はそれだけじゃないんだけど、ひとまず講堂に向おう。午後の前期末発表会に遅れたら大変だ!」

 「うわ、やばい」 

 「もうこんな時間か」

 「急ぎましょう!」

 せわしなく荷物を仕舞い込み、講堂へ急ぐ。 

 少し疲れた顔つきのアムにすっと近づいてきたカズヒがぼそっとつぶやく。

 「すごい趣味だな。」

 複雑な表情で見返すアム。


 アム達の着席と同時にお昼休み終了の鐘が鳴り響く。

 一息つけたのもつかのま、神々の入室に再び緊張する青年達。

 「では、午後の講義を始めます。まずは前期末発表会です。」

 上級教育士が開始を告げ、講壇の前に巨大な表示板の立体映像が表示される。

 「今日は、この順番で発表してもらいます。」

 学生それぞれの研究開発テーマと氏名が表示され、それらが教育士の手振りにそって順次強調される。

 発表の順番は成績の良い順で、アムは中程で発表の予定だ。しかし、やる時はとことんやれる事を知っている友人達は、アムがあえて高成績を取らぬようにしているか、根が怠け者か、いずれかだろうと考えていた。

 教育士からは後者と決め付けられていたが、どことなく憎めない性格から、容認されているのだった。

 「では最初に、先期最優秀だったカムナ君の『制御玉の高速応答性向上検討』を説明下さい。」

 「はい。まずこの開発の最大の力点は・・・」

 友人のカムナに始まり、次々と学友の発表が行われる。

 いよいよ、次ぎはアムの番だ。

 「では次、アム君の『高重力下での革新的制御機構』を説明下さい。」

 ざわざわと僅かにどよめく。自然に恵まれた”蒼き星”で”木目の星”でしか役に立たない研究開発を行うと言う事は、卒業後に僻地へ飛ばしてくれと言うが如しであった。

 「はい。この開発の特徴は、”場”制御理論を用いる事で、高重力下での危険な作業を安全な作業に変更できる事です。」

 その技術的説明を一通り聞いた後、テハス神から質問が出た。

 「アム君。君は何故この研究を選らんだのかな。人類の赴任地で決して人気があるわけではない”木目の星”で必要とされる技術であり、この発表で君自身が赴任する事になるかもしれないのに。」

 しばしとまどった後、アムが答える。

 「私は高重力制御を最初に選びましたが、ゆくゆくは”場”制御技術を安価でどこにでも使えるものにしたいと考えています。」

 この時代、”場”の制御は非常に高価かつ複雑、大型な物が主流で、大規模な特殊施設を除けば、一部の特権階級で利用されているに留まっていた。”場”の基礎理論方程式が、神々にとって”美しくない”もの、すなわち神々の脳にとって苦手なもので、神々の脳を模した思考玉にとっても同様であった。

 そのようななか、人類の脳を活かして”場”の制御に長けるとすれば、それだけで上級市民への道が開けるはずだ。

 「ならば何故、最初から小型化を目指さないのだね?その道で名をなせば、”場”制御技術の有力技術者として優遇されるであろう。回り道とも言える高重力関係への応用を選らんだ理由があったら、聞かせて欲しい。」

 誰もが感じた疑問をテハス神に問われ、アムは少し照れながら答える。

 「この応用がうまく立ち上がれば、”木目の星”におられる神々や同胞の危険で過酷な状況が改善されるからです。去年も多くの犠牲を出した事故が起こりました。もう起きなければ良い、と思います。技術を神と人の幸せの為に使っていきたいと思います。」

 つい、いつもと異なり神に対して本音を話してしまったアムだったが、せいぜいお人好しと思われるくらいだろうと判断し、続けた。

 「そのよう余分な事ばかり考えてしまうので、私は最上位に位置する軍用研究では役に立たないのではないか、と危惧しています。」

 神々や生徒達から笑いがこぼれる。

 「自由意志で課題を決めさせると、やはり無駄な方向へ行く良い例かもしれんな。君は黒派の指導の下、最短を目指すべきかもしれない。」

 黒威神の発言に、静まり返る講堂。

 白き神は、アムを見ながら何かの意志を固めた様だった。

 「では、次の発表を行って下さい。ハニハ君。」

 次々と発表が行われ、全員が終ったところで総括を求められた白き神が前に出る。

 「今日は、皆の様々な発表を聞く事ができて、有意義だった。各地に派遣された後は神の指示に従って研究開発を行う方が多いかもしれない。しかし、ここで体験した自ら課題を考え薦める経験は、予期せぬ問題を乗り越える上で必ず役に立つであろう。残りの期間も、十分に勉学に励んで欲しい。以上だ。」

 上級教育士の合図で、一斉に礼をする。


 廊下に出ていく神々をみて、ふぅ~っと息を吐くアム。

 本命の連絡手段は無事行った。なおも確実な方法で。

 保険の手段も一つは行えた。

 後に発覚する恐れがあるにせよ、ひとまずアムが出来る事は終ったし、これ以上の行動はかえって危険であり、しばらくは様子見が妥当だろう。

 休憩時間が始まってくつろぐ者、別の講堂へ移動を始める者、と様々ななか、すすっとナオナが隣に来てアムの顔をじっと見詰める。

 「な、何かな、ナオナ」

 今回唯一の大失敗は、しっかりと影響を残してしまったようだ。

 「じ~~~っ」

 苦笑いするアム。ここで動揺したら疑いの裏付けをするも一緒だ。

 「ナナオ?」

 「アム・・・女装する男の人も・・・悪くないって思うんだ。」

 カズヒがナナオを連れに近寄って来る。

 「ナナオ、次、時間無いぞ。」

 カズヒに手を捉まれて隣の教室に引っ張られていくナナオ。

 「アム、私・・・貴方にどんな趣味があっても好きだからね!」

 「ほら、いくぞ!」

 アムに目で解っているからと合図し、出て行こうとするカズヒ。

 「好きだからね~~・・・」

 講堂を出て、遠ざかって行く二人。

 「解っているから、じゃないヨ・・・二人に完全に誤解されたヨ~」

 呟いて、がっくりと肩を落とすアム。


 来賓は教育士と様々な問題について打ち合わせを行い、学生達は講義が終了した頃。漆黒の立方体が重々しく駐機場に降り立つ。

 手前にある神々の白き立方体と比べても5倍はあろうかという、巨大な立方体だった。その壁面にはところどころに円形の窪みがあり、そこだけ僅かに焦げたようだった。

 「軍用機だ。それも最新の。武装も強力なやつが多数・・最近使われた形跡があるな。」

 駐機場で神々の飛行機体を警備していた衛士が見上げながら呟くと、次の瞬間息を呑んだ。

 いつのまにか開いた扉からは、一見華奢に見えるが目つきの鋭い男神が表に出てくる。群青色の服をまとい、腰には細身の剣が鞘と共に釣り下げられている。衛士に目を留めると、静かに目礼をする。

 次に出てきたのは体の大きな男神。筋肉質の体には違和感を感じる程の端正な顔はまったくの無表情で、まなざしは暗い。体には深緑色の軽鎧、背中に血を吸ったような赤錆び色の斧。

 最後に出てきたのは妖艶な女神。胸と足を大きく露出させた血のような真紅の服を身につけ、大地をいたわるかのようにそっと足を進める。

 軍用機の前に一列に並ぶと、以降彫像のように動かなくなった。


 しばらくして、来賓を送り出す為に生徒が列を為してやってくる。

 その異様な圧力を感じさせる3神を目にした者は、戸惑い、恐れ、魅せられながら整列していく。

 アムが怪しげな目線を感じ注意を向けると、女神が妖艶な眼差しで見つめていた。敵対組織の者と判明しているのか?今日の行動が発覚?

 手に汗を握りながらも満面の笑顔を女神に向ける。

 相手が嬉しそうに微笑を返してくる。おそらく、ただ女神の好みにあったのだろう。もし女神の元に配属されたら、体力の限界まで嬉しい悲鳴を上げるか、生きるのに飽きた神にありがちな残虐な嗜好の被害者になるか、いずれかかもしれないと気づくと恐くなった。

 「イフ、ナオナをはじめ、何故か女性には好かれるようだけど。女神まで?もしそうだとしたら嬉しいけど・・・まさかね・・・」

 「どうした、アム。小声でぼそぼそと。」

 「カズヒ、なんでも無い、なんでも無いよ」

 あわてて正面を向くアム。それにしても魅力的な女神だな、と思い、ついちらちらと女神を見ると、相手もじっとアムを見ている様だった。

 「可愛いわぁ。いじめたくなっちゃう。」

 女神が小声でつぶやくと、真紅の服を着た神が注意をする。

 「あまり人類に入れ込むなよ。黒威神にお叱りを受けるぞ。」

 「わかっているわよ。大型猫だって食事の前に獲物とじゃれるじゃない。気に入ったからって、食べるのを忘れたりはしないわ。」

 妖艶でありながら冷酷な笑みを浮かべる女神。

 「ならいい。」

 話が終り、再び彫像の様にたたずむ三神。  


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