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3)青年期1

10年前に書いた初作品、続きを投稿します。主人公の青春時代。久々に読み返すと恥ずかしいものですね。

 「アム、大好きよ。ちゅっ。」

 口づけして去っていったイフ。

 100種類はありそうな色とりどりの花畑、。基礎教育期間も終わり、上級生達が各地へ送り出されて行く出立の日の出来事だった。

 出発の直前大事な話があると言われ、発着場近くの花畑を歩いた時の出来事だった。それまで赤子の頃からの大事な幼なじみと思っていたイフを、異性と感じ恋しはじめた春の日。


 「何思い出し笑いしてるんだぃ。」

 「う”」

 宿舎の居間にあるフカフカの長椅子にいるアムを、突然上から覗き込む様に、女性の顔ががせまる。ナオナだ。恥ずかしい思い出から現実に引き戻され、真っ赤に赤面するアム。

 基礎教育機関を卒業後、技術的素養を認められたアムは新設された人類高度教育機関に進学した。基礎教育期間中に知った事だが、10万番台はそれまでの人類よりも格段に知性が高く、運動神経抜群だった。

 中でもアムは独特で、知性水準はこの世代で平均的ながらも創造性が際立ち、代わりに運動神経が今一つ。10万番台が例外無く運動神経が優れている中では異色の存在だった。

 その特徴が面白いのか、友人達はよくアムをからかう。ナオナは特にからんで来る事が多く、最近はアムのうぶさを突いた攻撃が増えていた。

 「良かったら、ぼくにも話してくれないかぃ?」

 「そ、それはできないよ。他の人が聞いても面白く無いし。」

 「もしかして、その手に持っている携帯表示板に手紙でも出しているのかぃ?ちょっと見せて」

 ひょいっと持って行こうと手を伸ばすナオ。

 「だ、だめだ!これは・・あ、ひっぱるな~」

 体の後ろに板を隠すアムを、抱き付くように手を回して奪い取ろうとするナオ。

 「イイダロ、ヨコセ~」

 「な、ナオナ~」

 長椅子に押し倒される格好でジタバタ攻防を繰り広げるアムとナオナ。

 と、突然玄関に通じる扉が開き大勢の友人達が入ってくる。

 「いや、あそこで球を放っていけば勝ったかも・・・あ」

 「え」

 「あ”」

 しばらく固まった後、再び外に出ようとする友人達。

 「そういえば購買部で新しい媒体が入荷してたな」

 「部屋に忘れ物が・・」

 「何も見てない、何もみ見えない、何も言わない・・」

 「不潔~(涙)」

 どうやら今は遠慮すべき時だと判断したらしい。

 皆に、にやりと不適な笑顔を浮かべるナオナ。

 「ち、違う。誤解だ~~」

 絶叫するアム。


 「解ってるよ、またいつものナオナのちょっかいだろ?」

 カズヒが隣の長椅子からナオナを見ながら言う。

 散々冷やかした後、他の生徒達は部屋に散っていった。残ったのはアムの親友とも言える特に親しい仲間達4人だった。

 「それにしても、よく空きもせず。」

 カムナもあきれるようだ。

 「アムも少しはナオナに逆襲したらどうだ。仕方を間違えたら恋人になってしまうが」

 「もぅ。」アジフスが黙って首を振る。

 「いくら”蒼き星”が人類の男女に寛容な傾向があるとはいえ、公衆の場で事に及んだら処罰されるわよ。」

 「そうだ。我々人類には自己増殖しない様機能制限が行われているから、うっかり子供ができちゃう心配は無い。しかし神々は見苦しい人類には容赦無いと聞くぞ。」

 「アムはどこか抜けたところがあるから、心配だよ。」

 アムは友達を見渡しながら言う。

 「そんなマジメに突っ込みを入れないでくれ。自分も悪かった、こんな公衆の場で・・」

 「え、やる気だったの?」

 「違う~。部屋に戻る途中で通信文が届いたんだ、他の惑星にいる”同じ月生まれ”の仲間から。それをこんなところで開けて見てた自分もいけない。」

 友達はとたんに事情を察する。1ヶ月に100人、1年間は10ヶ月だから1000人、これが人類の生産数だった。この宿舎は、同じ年に生まれた者約100名が暮らしていた。他の900名は星系各地に散っていったが、”蒼き星”以外の任地は過酷な労働も多く、すでに死んだ者もいた。

 特に”同じ月生まれ”は人工子宮も近くにあり、同じ部屋で生まれ、同じ部屋で幼少期を過ごした。同じ技術段階で造られた異なる遺伝子を持つ、一番大切な他人達であった。

 しばらく思いを馳せてから、カズヒが問う。

 「そうか・・・詳しい内容は聞かないけれど、その仲間は元気か?」

 「ああ、その様だよ、まだ全文読んでいないけれど。”木目の星”軌道上の資源採掘施設”木目の輝き”に行った仲間なんだ。」

 アムのどこか照れくさそうな仕種に気づいたナオナが、問う。

 「でもさっきの様子からすると・・・女の子でしょう」

 アムがぎくっとしているのが傍目から解った。

 すかさずアジフスが助ける。

 「はいはい、詮索はおしまい。さ、私達も部屋に戻ってお風呂入りましょ。」

 「明日も朝から実技だしな。」

 「アジフス、手を引っ張らないで~ アム、今度教えて~~・・」

 去って行く女の子が見えなくなると、思わずため息をするアム。

 「持つべき物は友だね。さて、我々も部屋に戻って寝よう。」

 「そうだね、カズヒ。カムナ、お休み。」

 後ろ手に手を振るカムナ。

 アムは同室のカズヒと共に部屋に戻る。

 対面にある寝台に座ったカズヒがニヤっと笑いかける。

 「あの子から?」「うん。イフからだった。」

 寝台に横になりながら携帯表示板を頭上にかかげて読む、アム。

 思わぬ邪魔が入ったので、最初から読み直す。


 「アム、お元気ですか?イフです。最後に花畑で会ってからだいぶ時間が経ちましたね。私の任地である”木目の星”希少物質採掘施設は、人工環境で仕事も忙しいせいか神々が少なく、人類の比率が高いです。その少ない神々も”蒼き星”におられる白き神”を敬愛していて、人類にはとても寛容です。先日もガス採掘用の降下船が事故を起こし何名もの人類が亡くなりましたが、”木目の星”統括神、”だいだいの神”は、彼らの為に涙を流して下さいました。とても優しい神様です。あれが、降下船の損失を泣いていたのでなければ、ですが。」

 思わず笑ってしまった。次の頁を表示する。

 「ここ1年も通信文を送らなかったのは意外でしたか?それとも可愛い子に囲まれて、私の事などは忘れていましたか?きっと忘れていたのでしょうね。」

 そんな事は無いよ、と心でつぶやいてから先を読む。

 「星系各地で苦労している同じ月の仲間に比べたら、私のいる”木目の星”施設はまだ扱いが良いところです。浮かれず、少なくとも1年間は任務を学ぶ事に集中しようと、心に決めました。でなければ皆に申しわけないからです。これ以上は我慢できずに丁度1年と1日目で通信文を送ってしまいましたが。」

 自分が同じ理由でイフに連絡を取らなかった事を、イフは想像できなかった様だ。その後の一文には眉をひそめる。

 「”緑の星”でおきた恐ろしい出来事とその顛末は、もう聞きましたか? 神々の政治的対立により地方で武力衝突が起きたそうなのです。戦いなど起こらないと良いのに。”静かな月のごとく”。」

 とたんにはっとする。これは同い月で決めた極秘の暗号鍵だ。

 「神々も、眷族も、人類も、皆仲良く暮らせると良いですね。話は変わりますが、最近絵を始めました。”橙の神”が人類に趣味を持つように薦めるものだから。自分の事をダイさんと呼べ、などと大変気さくな神様です。」

 公式の場で神々をそんな風に呼んだら、黒派の神に何をされるか解らないだろうに。イフの施設がきつい労働であっても自由な風土がある事が解り一安心もする。

 「そのようなわけで、何枚か描いたうち、出来の良い絵を1枚通信文に添付します。絵の批評を含めて、時間のある時にでも返事を下さい。では、お体を大切に勉強がんばって下さい。さようなら。イフより」

 なるべく早く返事をかかなければ、と心に決める。

 表示板の外部通信を念の為遮断してから、カズヒに声をかける。

 「カズヒ、ちと外の風にあたってくる。」

 「おけ。見つかるなよ、最近うるさいからな。」

  

 そのまま廊下の外れに移動し、屋上への急な階段を上る。

 扉の保安機構を解除し、屋上に出ると、そのまま扉からの死角で柵に寄りかかる。この場所でこの体制をとれば、監視撮影機からは撮影困難なはずだ。

 表示板の電源を入れ直し、まずは添付の絵を表示してみる。

 ”木目の星”を背景に手を振る友人の絵だが、微妙に不自然な印象がある。まだ改良の余地があるな、と考えながら透き通った小粒の記憶球を専用の穴に差し込む。

 途端に、アムの表情がそれまでの”うっかり屋のアム”から鋭利な印象に変わる。

 特殊な命令と実行鍵を入力すると、途端に目の前の画像が姿を変え、文書といくつかの荒い画像が浮かび上がる。

 アムの創設した組織で右腕とも言える、ナハツからの極秘通信文であった。

 「今度会ったら、イフを危険な事に巻き込むなと言ってやらなきゃ。」

 思わず声を出してしまってはっと回りを見回す。風の強い日だが、用心しなければ。

 文書には、星系全体の表には出ない情報、情勢が記載してあり、”緑の星”でおきた出来事の詳細が記載してあった。


 ”緑の星”はもともと神々の本国で主流である黒派が優位にあり、単一志向、秩序を重んじ上意下達を基本としていた。そのようななか知性化された人類は、後進で最下層に位置すべき者として扱われてきた。黒派の中でも保守派と言われる派閥は人類を自分が造った便利な道具としか考えておらず、ごく最近までは人類奴隷化強制言語を用いて消耗品として酷使し、拳闘、競人、性的な慰み者として隷属させてきた。

 猿類を遺伝子改良し知性化を行う、その最初期に遺伝子に組み込まれた奴隷化強制言語は、神の命ずるままに人類の制御が可能なものだった。

 それ用いると、意識そのものを変えてしまい、心身ともに神の僕になってしまう。心の強い個体は自意識を保持する事も可能だが、行動は制御されてしまい、その後に行われる無慈悲な行為に深く傷ついてしまう。いっそ自意識を失えば良かったと思う程であった。

 流れが変わったのは、それまで煮え切らなかった最上級神の白き神が、改革派に加わってからだった。住み易い”緑の星”を黒派の神々にまかせ、”蒼き星”の環境/生物を改良する事に重きを置いていたが、黒派と反目する事は無く、改革派を優先するでも無かったが、明確に改革派指示を訴えたのだ。

 消耗品のごとき人類の扱いに異を唱えてきた改革派は白き神の参画で勢いをつけ、人類の市民昇格を提案。”蒼の星”を驚異的に発展させた白き神の希望を無碍にもできず、議会は人類保護法制定と奴隷化強制言語使用廃止を決めた。市民権は本国でも例があまり無い事を理由に却下され、準市民扱いとなった。

 しかしそんな落とし所でも保守派は納得できなかった。保守派の若手で結成された過激派は、何かにつけ改革派の活動を妨げ始め、止めに入らない保守派の親組織である黒派との間に張り詰めた空気が流れるようになった。


 「ここまでは知っていたが・・・」

 と呟いてから、再び集中して読み出すアム。


 それから長年並行状態だった黒派と白派の均衡を破るある事件が起こった。

 保守派のある神が、廃止の過程にあった人類奴隷化強制言語を秘密裏に利用して、人類を享楽の道具として扱っていた事が発覚した。

 死を賭しての拳闘を始め、あらゆる非神道的な行為が行われていた。

 初期教育機関を終了したばかりの子供達も発見されたが、尽く精神を破壊され生ける屍と化していた。

 手塩にかけ育てた新世代の若き教え子達を廃人にされた育成士の反応は、同族の人類以上に激しかった。

 改革派は即刻人類保護法違反で告訴したが、育成士長の神は退職願いを出した後、被告神に決闘を申し入れた。白き神が法に委ねるように説得を試みたが、それはかなわなかった。

 結果、被告神は死亡、育成士長は足に大怪我をして歩行不能となった。

 双方の派閥に決定的な亀裂を与える結果となった。

 その後、小競り合いが頻繁に起こるようになり、大規模な武力衝突にならないのはひとえに白き神の自省を求める声があったからだった。

 しかしその白き神を対象にした、闇討ちが計画されているらしい。

 ”蒼き星”に住む側近達も危なかった。人類に好意的な神々を今失うわけにはいかない。出来る限り早く、アムから白き神へこの情報を伝えて欲しいと言う。


 「・・・そういう事か。」

 アムが怒るであろうイフ経由の通信を利用したのも、この情報が伝送過程で漏れる可能性を最小にしたいからだった。

 読んでしまったからには行動するしか無い。しかし。秘密組織の指揮官であるアムが捕縛されれば、組織全員が危険にさらされる。かといって部下に代行させて済む話ではなかった。

 失敗すれば、人類は良くて完全な奴隷、最悪根絶やしにされる。

 「覚悟を決めるしかないな。」

 情報板から記憶球を抜いた後、画像を完全消去し表示板を消してから扉に向って歩く。

 「ふう。肌寒いな。返事は部屋でゆっくり書こう~」  

 いつものどこか抜けた表情に戻ったアム。しかしその頭脳は猛烈な勢いで計画を描きはじめていた。


 しばらくして、良い機会がある事が解った。白き神がアムのいる人類高度教育機関を視察するらしい。施設制御玉に不正侵入して得た情報によれば、来月の月末37日の午後、制御玉基礎講座と、前期末研究開発発表会を見学する予定だ。

 制御玉を操作中ならば、表示板を通じて文字で伝える事もできるだろうか。いや、同行する神に敵側の内通者がいたら一緒に見られる危険性がある。研究発表会は白き神と直接会話できる可能性が高いが、同じ危険性がある。どうすれば白き神だけに情報を伝える事ができるか。

 危機を訴えた内容の紙片を渡すか。万一側近に見られたらそれも危険だ。白き神以外が見るのは変、そんな紙片は・・・恋文だ!これならいけるか?いや、白き神は男性神だから、男の自分から受け取ってもらう事で男色家と噂が広まったら大変だ。申し訳ないし、恥ずかしすぎる。いったいどうすれば。まてよ、これなら・・くぅ、嫌だが仕方がない!心の中でつぶやいているアムをじっと横で見ているカズヒ。

 「・・・何をこんなに悶えているんだ、アムは。」

 見られている事に気づいて、はっと冷や汗を掻くアム。

 「ちょっと、頭を冷やしてくるよ、カズヒ。」逃げるように部屋を出ていくアムであった。


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