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8)復興編

20年前に書いた初作品、続きを投稿します。


多くの地表都市が破壊され、地下都市も多くの被害が出た。

僅かに残った神々は、実権を人類に託す。

 決闘終結直前、”白曜月”は最終障壁として対惑星兵器と”蒼き星”の間に置かれていた。質量不足により質量兵器にはなりえなかったが、盾として有効と判断された為だ。その処置は”黒曜月”崩壊時に見事に機能したが、”白曜月”自体は降り注ぐ光と灼熱した岩石によってその半球が溶け、さながら溶岩の大洋となった。

”白曜月”が受け止めきれなかった岩石は”蒼き星”地表にも降り注ぎ、多くの地表都市が破壊され、地下都市も多くの被害が出た。

 僅かに残った神々は、若い神がほとんど死んでしまった事を理由に実権を人類に託し、指導的立場に退いた。

 人類は専門家の棟梁による議会を発足、合議制により破壊された”蒼き星”と星系の復興を進めた。白き神は星系の総責任者を続けたが、自ら指示する回数は減らし、人類議会の調整役として働くにとどまった。


 議会発足から100年後。


 技術力によって白派と人類を救い、復興にも大きな貢献をしたアムは、人類だけでなく神々からも指導者として

頼りにされる存在となっていた。

 白き神はある日、アムを”蒼き輝き”天の層に招き、提案をしてきた。王制の導入である。人類は自由な白派の下にあってもその本質は何かの指示を仰ぐ性質にあり、完全な議会制はかえって停滞を招いた。神の存在が希薄になりつつあるこの文明をさらに発展させるには、王制と主軸の安定した世襲、腐敗を食い止める議会制度を組み合わせるのが良いと判断したのだった。そして、その王家はアムに担って欲しいと言う。人類は立派に成長し、もはや親の手を必要とする子供では無い、と。白き神と残された神々は、星系の全権を人類に委譲する為に指導的立場に退いていたのだった。しかしそれは、神々の本国が望まない事であった。神々の法に適合した形で星系を手放す手続きをとった後、白き神は、その事実を本国へ伝えるべく無人の連絡艇を放つと言う。

「きっと、我々白派は許されないだろう。しかし、我々の子供達人類を、奴隷的立場から完全に解き放つには必要な事なのだ。本国に召還されるまで、人類育成の最終段階として、全力を尽くそう。人類も神々の指導に頼らず、立派に独り立ちできるようになってほしい。」

 しばらく言葉を失うアム。そして言葉を返す。

「解りました。人類だけでこの文明を維持発展できるよう、王として全力を尽くします。子供達も次世代の王として立派に育てます。」

 微笑みながら”白き神”はうなづく。

「では、王の名を贈らせてくれないか。」

「まずは聞かせて下さい。白き神は時折突拍子もない事をおっしゃいますからな。”妻の尻に敷かれる王”とかは嫌ですよ。」

「このような時に、冗談はいわぬよ。・・・”新しき王”。幼少の頃から新しき事を好む性質を持ち、新しき技術により世界を救い、新しき王として世界を導く。アムらしい名では、ないかな。」

 少し気恥ずかしいが、馴染む事ができそうな名だったので、アムは素直に名を賜る事にした。

「・・・喜んでいただきます。」

 深深と礼をするアムを慈愛の表情で見つめる”白き神”。

 この新しき王の誕生は、議会と市民に熱狂をもって受け入れられたのだった。人類初の王朝は、こうして始まった。


 そして1千年が過ぎた。


 新しき王の統治はこれ以上は望めないと言われるほどの成功を収め、”蒼き星”には生きる喜びにに溢れた市民が満ち、その活気は星系全域に溢れ出しつつあった。

 ”赤き星”を資源発掘可能な段階から、緑溢れる居住惑星に改造する取り組みも始まっていた。アムが”赤き星”に四角推の惑星調律構造を設置していた時、それは唐突に訪れた。本国の無人通信船の到来である。


 アムが休憩室に入った所で、議会から転送されてきた立体映像が投射され始めた。

 「”大なる神”である。”白き神”よ、報告書は読ませてもらった。人類へ権限委譲をしたならば、即刻本国へ帰星せよ。繰り返す、即刻本国へ帰星せよ。即刻帰星せねば、叛意あるとみなす。以上。」

 全ての神々を束ねる”大なる神”の表情は、恐ろしいまでに冷たい印象を与え、その通信内容の短さと有無を言わせぬ内容は、神々と人類に大きな衝撃を与えた。

 「これはただ事ではすまないな。」

 天を見上げ、神々の事を思いやるアム。


 通信艇に搭載を義務づけられている”基本情報”から本国の状況を確認すると、黒派と似た思想を持つ派閥が議会を占拠し、力で本国を支配している事が判明した。度重なる内乱、暴動、暗殺が支配星系に起こっていた。

 ”蒼き星”王都にある執務室で”白き神”と会談するアム。”白き神”は以前から老人といった外見だったが、最近ではアムも老いが感じられるようになっており、神と人類の寿命の違いを自覚せざるを得なかった。

 「あの賢明なる”大なる神”も、すっかり変わられてしまった。」

 白き神は肩を落としてつぶやいた。”大なる神”の愛した後継者は、奴隷層に暗殺されたとある。”白き神”が続ける。

 「本国の奴隷層にそのような力はない。恐らく他の上位神による謀略であろうが、”大なる神”は異なった結論を出したのだろう。」

 アムが顎を手で触れながら答える。

 「敵対派閥に支配された本国への帰星は、大変危険なものになります。なんとか避けられないのでしょうか。」

 白き神が首を振って答える。

 「帰星しなければ間違いなく討伐艦隊が到来する。逃げる事もできない以上、決断は一つしかない。いや、こうなる事ははあらかじめ予想していた、大丈夫だよ。」

 本国の招聘は間違い無いと予測され、帰星の準備は進められていた。しかし、本国がこれほど危険な状態になっているとは予想外だった。アムは心配をぬぐえなかったが、神々は方針を変えないだろうと解っていたので、努めて明るく返した。

「そうと決まったら、早速星間船への引っ越しですね!」

「おまえはそんなに早く神々を追い出したいのか。」

 大笑いする”白き神”に合わせて笑うアム。しかし、溢れる涙は止める事ができなかった。

 

 神々がこの星系来訪に使った”古き船”は、”灰の星”軌道に永年係留してあった。それを戦闘終結後まもなく、”蒼き星”軌道上に曳航し、修繕と武装改修を行っていたのだった。

 同時に、人類の身につけた技術のみで設計/製造された、人類初の宇宙船”最初の艇”建造も進められた。

 そして、神々出発の日を迎えた。


 神々帰還の祝賀会は、”蒼き星”最大の大陸に建造された”新しき首都”にて盛大に行われる事となった。式典広場や路上には色とりどりの服を着た人類で溢れ、騒然としていた。年若い人類は祭りのように騒ぎ、華やかな雰囲気があたりに満ちていた。

 10発の祝砲が鳴ると同時に、式典広場の大きな舞台に、戦いを生き残った全ての神々が上がっていく。その多くは年老いた神々で、若い神は僅かしかいなかった。

 人類後継者達から送辞の言葉が贈られ、締めくくりとして”新しき王”アムが舞台に上がった。その話を聞こうと静まり返る人々。

 「我々を原初の混沌から救い出し、導き、育てて下さった神々。その大恩は深宇宙よりも深く我々の心に刻み込まれています。主権を譲られ、宇宙の遥か彼方へ去って行かれても、我々の感謝の念は永遠に変わることがありません。人類は立派に自立し心配は不要ですけれど、いつか神々に我々の成長を見ていただきたい。その想いもずっと続いていくでしょう。神々がいつかお戻りになる日を、いつまでもお待ちしております。」

 短いが心のこもったその言葉に賛同し、会場には拍手が鳴り響いた。

 そして、白き神は立ち上がり、中央にいるアムに近づいていく。手に持った”蒼き星”総合制御玉が、”新しき王”アムに渡される。この時、星系の主権は名実共にアム達人類のものとなった。感極まったアムに温かい笑顔を向けた後、会場を振り返り両手を広げる”白き神”。

 「我々への永きに渡る協力、感謝する。人類に、永久の祝福を!」

 湧き起こる歓声。明るい未来を思い浮かべる民達。

 神々の帰還が大変危険なものであると気づいている少数の者だけが、複雑な表情を浮かべるのであった。


 興奮さめやらぬ民衆の頭上には、いつのまにか送迎船が飛来していた。静かに舞台直上に降りてくると、重力場を制御し神々を1神づつ引き上げていった。最後に”白き神”とアムを引き上げると、音も無く宇宙へ向かって飛び上がっていく。

送迎船が見えなくなってから、しばし後。天空に巨大な火柱と細い火柱が横切る。

 2本の火柱が彼方へ飛び去り見えなくなったと同時に、祭典の幕は閉じた。穏やかな表情で各地へ散っていく人々。

 いつまでも天空を眺め続ける”新しき王”の妻、イフ。夕暮れを過ぎ辺りが暗くなっても、いつまでも天空を眺めつづけていた・・・。


 その発進の時からさかのぼって数刻前、衛星軌道では真の山場を迎えようとしていた。人類初の、人類保有技術だけで造られた”新しき艇”が儀装されつつあった。神々の船が出発する刻限に間に合うかどうか、瀬戸際にあったのだ。

 神々からは無理して危険に陥るより、軌道上で見送って欲しいと言われており、間に合わなければ置いていかれるのは必定であった。造船技師長は技師達に激を飛ばす。飛ばしながらも自ら率先して現場を回り、手間取っている個所は的確な対策法を伝え、作業の手本も示す。”白曜月”表層近くにある工場内で基本的な構造は完成させ、衛星軌道上の発射予定地点に移動しつつ内部の儀装を取り付けていた。様々な問題を解決しながら、  奇跡的ともいえる速度で完成させた。まさに発進の直前であった。

 送迎船は宇宙に到達後、まず”新しき艇”に”新しき王”を移乗させ、その後に”古き船”の巨大な格納庫に飲み込まれていった。


 アムが艇内を見回り操舵室に戻ってすぐに、”白き神”からの通信が入った。

「さて。”新しき艇”の準備はどうかな?」

「間に合いました。いつでも発進できます。」

「・・・そうか。この短期で完成させる事ができたか。」

 白き神が微笑む。 

 技師達は船乗りと役割を変え、操作盤の座席に着座する。技師長が”白き神”とアムを見てから告げる。

「全乗組員、準備完了。いつでもどうぞ!」

 白き神は”新しき艇”の様子にうなずいた後、力強く言う。  

「では、いくぞ・・・”神々の庭”へ。」

「行きましょう、”神々の庭”へ!」

 巨大な”古き船”の船尾から巨大な火柱が走る。星系内用の補助推進機関であるにも関わらず、凄まじい推力を生じていることがみてとれた。巨体は徐々に加速を始めた。同時に、”新しき艇”の船尾からも細い火柱が走る。

 海上であれば大型船と言っても良い”新しき艇”から吹き出す火柱も、力強かった。しかし、隣にいる巨船と比較されては極細の火炎に見えてしまうのだった。

 外部の映像を見ていた”白き神”が、再びアムに向き直る。

「念の為にもう一度言うが、”神々の庭”境界までだぞ。そこまで見送ってくれるだけでも、ありがたい。」 

「わかっております。心配をおかけするわけには参りませんから。」

「そうか。」

「本当はその先も問題無く見送れるのですが。」

「・・・まだいうか。」

 白き神は苦笑する。


 人類数百年の寿命からすると、この別れが今生の別れに繋がることは間違い無かった。

 白き神が政変を乗り切り”蒼き星”に戻ってくる事が万に一つあったとしても、”新しき王”の子孫としか会えないであろう。少しでも長く、共に在りたいと思う気持ちは”白き神にもあった。ゆえに絶対防衛圏である”神々の庭”境界までの随伴を許したのであった。

「では、共に行こう。星の大海へ。」

「行きましょう、星の大海へ。」

 そして神と人類は、生きて共に過ごす最後の航海へと旅立った。


いつもお読みいただき、ありがとうございます。


誤字ご指摘/感想は読ませていただきます。お返事はしませんが、ご容赦を。

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