7)戦闘編1
20年前に書いた初作品、続きを投稿します。
とうとう艦隊戦が始まってしまう。
神々の決闘は、その指揮系統全てを使って行うものだった。それゆえ力関係に差があれば決闘に至らず、多くの決闘は最下位の神同士で行う、1神と1神の喧嘩と言えた。しかし今回の決闘は、派閥の、長と長の戦い。指揮系統は星系人口を2分しており、その規模はまさに星間戦争だった。
開戦予定時刻、”蒼き星”と”緑の星”はまもなく最接近軌道に達しようとする位置で、お互いの艦隊が光学観測できる位置だった。
黒軍艦隊の旗艦司令室では”黒武神”が腕を組んで立ち、”蒼き星”至近に展開し黒軍を待ち受ける白派艦隊を眺めている。”黒威神”も同じ旗艦の貴賓室にいるが、指揮は”黒武神”に一任されていた。
「白派も頑張ったようだが、我が艦隊と決するには数が足らんな。その上、半分は警備艇か?武装の質でも比較にならんな。」
参謀神が横でにやりと笑う。
「あの程度で決闘を挑むとは、最初から勝てるとは思って無かったのかもしれませんな。ある程度戦う事で威信を取り戻し、次は示談とか。」
「そうかもしれんが。”黒威神”は有利な戦の途中で和平を結ぶなど、許さんだろう。服従か、死か。それしか白派には残されんよ。」
そこまで言って、”黒武神”は何か違和感を感じた。腰抜けではあるが、聡明な”白き神”がその程度の事を読めない訳が無い。黒軍に戦いを挑むにしては、やつらは脆弱すぎる。”黒武神”は直感が警告を発してはいる事に気づいたが、過信で曇った眼には、何も見つける事ができなかった。
「まもなく、主砲の射程距離に達します。」
”黒部神”は副操舵神に肯くと、立ち上がる。司令室中央に立体映像の”黒威神”が表示されると、全員が敬礼をする。
「栄誉ある黒派の諸君。軟弱なる白派を叩き潰す時が、来た。ここに、戦闘開始を宣言する!」
言葉が終わると同時に、”黒武神”は片手を挙げて指示を発する。
「主砲発射せよ!」
到達と同時に発射の指示をするべく、立ったまま部下の一言を待ったが、いつまで待ってもその気配が無い。”黒武神”は痺れをきらして大声を出す。
「いったいどうしたのか?」
副操舵神が振り返る。
「敵軍は・・・じりじりと射程外に後退しております!」
”黒武神”がぎりりと歯がみする。
「何?白派は上が臆病なら艦隊も臆病なのか?加速して射程にいれよ!」
その頃、旗艦中心の安全な球殻内にいた”黒威神”はいらだっていた。
「絶対勝利すると言うなら、何故私をこんな所に閉じ込めるのだ。立体映像ではなく実体で指揮しなければ、臆病者ではないか!」
司令室への音声は切ってあるが、広い球殻内には不満気な声が響き渡った。その声の大きさに、世話係の女神がびくりと震える。
”蒼き星”の衛星軌道に沿って後ずさるする白派艦隊。
黒派艦隊が”白曜月”を背に、今まさに白派艦隊に襲いかかろうとしている。表面上は威厳を保った”黒威神”が、再度の号令をかけようとしていた。
「撃て!」
「撃て!」
膨大な数の赤みを帯びた棒状の光が、黒派艦隊から白派艦隊へ発射されていく。強力な光線兵器に焼かれ何隻か爆散するのと同時に、白派艦隊からも青みを帯びた光が発射されるが、その本数は明らかに黒派艦隊よりも少なかった。
”黒武神”はにやりと笑う。
「白派艦隊は艦数だけでなく、主砲の数も劣っているようだな。このまま圧倒せよ!」
「は!」
こもままでは大差で勝利しそうだ、そう”黒武神”が確信した時。部下達がどよめきだした。
「月の背後から、大艦隊が出現しました!もの凄い数です!」
「何?!」
”黒武神”と立体映像の”黒威神”は動揺を隠せずに茫然と映像を見つめる。
白派の旗艦には、総指揮官として”白き神”その人が搭乗していた。
上位神達からは”白曜月”の司令所に残るよう何度も諌められたが、これは私の戦だと一歩も譲らなかった。自ら指揮官を務め、具体的な指示はテハス神を副指揮官とし、任せているのだった。
「”白き神”、黒派艦隊は動揺して艦列を崩し始めました。ただ今より、包囲撰滅戦を開始します。」
肯く”白き神”。
「黒軍の力と士気を一気に削がなくては、戦後の安定はあり得ない。黒派の神々には申し訳無いが、徹底的に叩け。」
肯くテハス神。それを見て白き神は続ける。
「但し、数が半減したところで”緑の星”方面に退路を1カ所用意するのを忘れないように。」
テハス神は首をかしげる。
「事前の作戦会議でもおっしゃっていましたが、それは何故でしょうか?戦意喪失した神は見逃す慈愛なのですか?」
”白き神”は目を細めて静かに言う。
「黒派の戦闘艦は後方へ撃てる武装が無い。また、黒派艦隊も、追い詰めれば死を恐れぬ戦士となろう。
生へと逃げる艦隊の背中を狙えば、撰滅はた易いよ。」
テハス神は、温厚の極みと言われた”白き神”の別の一面を知り、驚愕した。完璧な勝利の方程式を見出し、目的の為ならば冷徹に同胞を殺す事ができる。最上位神は伊達ではない、そうテハス神は思った。
恐慌をきたした黒軍は、その強力な武装を活かせず個別撃破されていき、みるまに規模を縮小していった。
怒りに顔を赤黒くしながら”黒武神”が激を飛ばしている。
「左翼の減り方はなんだ、もっと各艦で連携せんか。左翼”美術神”はどうした!」
通信神は渋い顔をしている。
「戦死されました!」
「ぐ。ではカシワ神を左翼指揮神にして、体制を整えさせよ!」
「は!」
しかし白軍の緻密な包囲網の中では立て直しは叶わず、艦隊の損耗率は半数を超えてしまった。生き残っている艦は皆練度が高く、損耗の速度は落ちつつあったが、それでも全滅は時間の問題と思われた。
「”緑の星”方面に包囲網の穴が空きました。右翼”天候神”から脱出許可を求める連絡が来ております!」
通信神が報告すると、”黒武神”はそれが何を意味するかに気付き、声を発しようとした。その時。
旗艦の艦橋付近に攻撃が命中した。凄まじい振動に、司令室の神々は転げまわった。立体映像は消え、辺りには煙と血の匂いが立ちこめる。
右腕の出血を左腕で押さえながらなんとか立ち上がろうとした”黒武神”は、すぐ近くに若い神が静かに立っているのに気付いた。
「おい、何をつったっている。手をかさんか。」
しかしその神は黙って”黒武神”をみつめている。漆黒で体に張り付くような服と手に持った棒状の剣山。その神は、司令室にいるはずの無い、黒軍暗殺組織の装備をしていた。”黒武神”がその神が誰なのか、何故ここにいるのか思い当たった時には、背後から首筋に剣山を押し付けられていた。
振りほどいて睨みつけた時は、すでに体が自由にならなかった。低くかすれた声を辛うじて絞りだす。
「カザン神・・・何故!」
カザン神は冷酷な笑みを浮かべる。
「おまえは、私と命をかけた部下を侮辱した。報告を聞く耳があれば、黒軍も負けなかっただろうに。」
”黒武神”は即効性の毒に苦しみながらも言葉を発する。
「わしは艦隊を・・・脱出させ、立て直さねば・・・ならぬ。今死ぬわけには・・・。」
「おまえは、黒軍艦隊を全滅させた最悪の指揮官として歴史に名を残すのだ。屈辱の中で、死ね。」
”黒武神”は床に崩れながら、思った。若い神の話を聞いてやれば良かった、寛容であれば良かった、と。しかし命は尽き、初めての反省は闇に消えた。
一向に返事が無いなかで時間だけは無為に過ぎ、残存数は3割を切ってしまった。撤退許可どころか旗艦からの通信は完全に途絶え、司令室壊滅を右翼”天候神”が覚悟したとき。ふいに旗艦からの通信が入った。映像には第2司令所らしき狭い部屋と”黒威神”が部下と共に映っている。
「生きているか、”天候神”よ。」
”天候神”は驚きを隠して敬礼する。
「は。右翼艦隊は7割が生き残り、今も戦闘を継続中です。」
肯く”黒威神”。
「遅くなってすまなかった。連絡不能な球殻内から出たはいいが、旗艦の主要部署は消し飛び、体制を整えるのに時間がかかってしまってな。さて。左翼はすでに全滅し、中央主力艦隊もこのままでは消えて無くなろう。旗艦含め中央主力を右翼指揮下に組み込む。”天候神”、脱出の指揮を頼む。」
驚く”天候神”。
「我が敬愛する”黒威神”、貴方が指揮を取らないのですか?」
「黒派の流儀からすればそうすべきだがな。これだけ追い詰められれば、建前より実質を取るのにやぶさかではない。」
そう言って笑った”黒威神”は、何故か”白き神”を思い出させた。”天候神”は、この一皮剥けた上司なら白派との融和もあり得るのでは無いかと感じた。しかしそうなるには、白派に追い詰められる必要があったとはなんと皮肉な事か。そして、ここまで部下が死んではいまさら鉾を収める事も不可能であろう。そんな事を考えていると、”黒威神”が言葉を続けた。
「旗艦は”天候神”の指揮下に入れるが、その前に一つだけ心に止め置いて欲しい事がある。」
「黒軍艦隊が一斉に脱出を開始しました。」
テハス神の報告に”白き神”が肯く。
「背後から徐々に包囲網を狭めよ、ただし”袋の穴”は現状維持せよ。」
「は!」
黒軍艦隊が我先に脱出を始め、すでに司令系統が存在しない様子であった。白軍に接している大型艦に集中放火を浴びせると動きが止まり、しばし耐えてから外壁をまき散らしていった。テハス神は明るい表情をする。
「脆いですね。ろくな反撃もできないとは。」
「脆すぎる。」
「は?」
”白き神”は眉間に皺を寄せて言葉を続ける。
「中央部中型艦の突出が見込みより早い。一見混乱してみえるが、大型艦を外郭に配して火力を引き付け、中型艦の防御力を加速に回している。」
テハス神は怪訝な顔をする。
「黒軍自慢の統制がもはや失われ、足の早い中型艦が突出しているのでは?」
”白き神”は首を振った。
「・・・来るぞ!」
次の瞬間黒軍の中型艦は噴水のように広がり、今度は黒軍大型艦にまとわりつく白軍の背後から襲いかかる。今度は白軍が逃げまどう番だった。
テハス神が”白き神”を振り返る。
「”袋の口”部隊の損耗率が急速に上がっています!」
”白き神”が肯く。
「やむをえん、”袋の口”部隊は撤退させ、”盾”を前進させよ。」
「は!」
”袋の口”部隊が撤退を始めると、入れ違いに皮の無い太鼓のような大型艦が最前線に並んでいく。
操舵神は最前線に出てきた怪しい大型艦を見つめ、眉間に皺を寄せる。
「あれは・・・一体なんですか?」
”天候神”はにやりと笑う。
「美のかけらも無い外観は、白軍らしい。中型艦を下げ、旗艦を始め全ての大型艦を前面へ出し、砲撃開始せよ。」
「は!」
黒軍大型艦の戦列はやがて砲撃を開始する。赤みを帯びた太い光線が白軍に吸い込まれていく。今度は3隻の火線を1隻に集中しており、白軍の大型艦が耐えられるはずは無かった。しかし、何も起こらない。太鼓の内側は星が見えないので空洞では無いようだが、砲撃を受け止めるだけで爆発する気配は無かった。そうやって防ぐ大型艦の影から様々な種類の艦艇が飛び出し、黒派艦隊を砲撃しては引っ込む、その繰り返しを行った。その砲撃の種類も光線、電磁投射砲、粘液腐食弾、高加速隕石弾と様々で、最適な防御装備を切り替えているうちに着弾、兵器は無力化していった。
その頃、”天候神”は情報処理に特化した中型旗艦に座上して指揮していた。意表をつく攻撃に屈し、次々爆散していく黒軍大型艦。あり得ない光景に”天候神”は唖然としたが、我に帰ると通信装置を作動させた。正面に”黒威神”の立体映像が表示されると、ひざまずく”天候神”。
「”黒威神”よ。艦隊脱出の妙技をさづけていただきながら、その後の判断を誤りました。命をもってお詫びさせていただきたく。」
そう言ってから素早く短剣を構え、両手で引き寄せる”天候神”。
立体映像の”黒威神”が憤怒の表情で叫ぶ。
「逃げるか!」
服に切っ先が触れたところで手を止める”天候神”。私は卑怯者ではない、責任を取るのです。そう言おうと顔を上げると目の前に膝をついた”黒威神”がいた。
「どのような酷い失敗をしようと、死んではいけない。残りの生涯でその経験を活かすのだ。損失を上回る成果を手にしようと努力するのだ。」
”天候神”は堪えきれずに叫んでしまう。
「これだけ多くの神を死に追いやった責任をどうやって償えましょうか。」
”黒威信”は優しげな口調で語りかける。
「死ねばそれまでだが、生きれば真摯に役目を果たす立派な神を世界が得るのだ。また、この損失を超える成果を出せないと決めつける事はできない。何より、このような事態を招いた全責任は私にあるのだ。部下にその責を負わせた愚かな神との烙印を、負わせないでくれぬか。」
「”黒威神”よ・・・。」
「艦隊を”緑の星”衛星軌道へ導け。決選は我らが本拠地の近くで行う。あそこならまだ挽回できるかもしれぬ。」
”天候神”がはっと何かに気付き、”黒威神”がそれに肯く。
まもなく、黒派艦隊の後退が始まった。
白派艦隊は全軍で追跡を開始したが追いつかず、”緑の星”衛星軌道にて体制を整えた黒派と対峙する事になった。主砲射程距離に比して3倍の距離でにらみ合う艦隊は、最後の決戦に備えて一息入れているのだった。
しかし、黒都上空に展開する傷だらけの中型艦、小型艦は、どう見ても残存艦隊で、体制を整える効果は無きにっ等しかった。円環状に密集した形で布陣し、中央部は僅かな艦艇しか配置できていない。
それに対し白派艦隊は、守性の大型艦だけでなく、攻性の中型艦郡もさほど損耗しておらず、もはや勝敗を決するまでもなく見えた。
白派旗艦艦橋に通信が入ったのは、両艦隊が布陣を終わろうとしていたその時だった。”白き神”の前面に広がる大型表示版に”黒威神”の姿が映り、艦橋には緊張が走る。腕を曲げ、上位者への礼をする”黒威神”。
「ご機嫌いかがですか?”白き神”。」
”白き神”が静かに答える。
「ひさしぶりの艦隊戦、老体には厳しいものがあるよ。この辺で手打ちにせんか。」
わずかに間をおいてから、”白き神”が続ける。
「多くの犠牲を出したが、二つの派閥を統合すればより多くの実りも期待できるだろう。なるべくお前の希望に沿うようにもしよう。」
しばし流れる静寂。”黒威神”が再び口を開く。
「”白き神”よ。貴方がこれまで意思を曲げなかった理由、ごく最近解ってきたのですよ。自らが同じ段階に到達した故にね。」
”白き神”は首を振る。
「では何故、戦う前に・・・。」
「それもお判りでしょう。黒派は私が導いてきた組織。いまさら宗旨替えする訳にはいかないし、するつもりも無い。どちらかが倒れるまで辞める訳にはいかない。」
再び訪れる沈黙。穏やかな表情から精悍な顔つきに戻る”白き神”。
「では、闘おう。手加減はせぬぞ。」
同じく冷徹な表情に戻る”黒威神”。
「もしすでに勝ったつもりでいるなら、己の浅はかさに絶望いただこう。では、参る!」
映像が切れた後、そのはったりではない”黒威神”の自信に、言いようの無い不安を感じる艦橋の神々。”白き神”は無線で整備指揮中のアムを呼び出し、何事か伝えると正面の黒派艦隊に視線を戻す。
次の瞬間、その不安は現実のものとなった。策敵神が報告する。
「敵艦隊中央の高速艇が円環部に移動し、中央を避けるようにしています。あ、地上で強力な”力場”が観測されました!」
同時に扉から駆け込んで空席だった副官席に坐ったアムが、猛烈な勢いで制御版の操作を始める。
地上の映像が表示されると神々は息を飲んだ。”黒都”を取り囲むように100近くの巨大な穴ができていた。その穴が赤黒くなり、見る間に真紅になった。
”白き神”は我に帰るとすぐに無線機の指示を発した。
「中小型艦は大型艦の背後に退避!急げ!」
黒都中央部は荷電した様子で、激しい稲光を放ち始めた。中小型艦は射程外との油断から最前列に並んでおり、迅速に退避を始めるも逃げ切れるものでは無かった。そしてとうとう、”緑の星”地上から、赤い光の巨柱が舞い上がる。もう一刻の猶予も無いなか、副官席のアムが操作版を押し込み、何かを”白き神”に告げる。
肯いた”白き神”は大声で指示を与える。
「大型艦、力場の出力を危険域まで全開!すぐにだ!」
指示が届くや否や大型艦も巨大な穴が青白く光り、すぐに注視できない程の輝きへと変わる。船体の周囲へと染み出していった輝きはやがて繋がっていく。
黒派艦隊の元旗艦第二司令室では、”黒威神”がその光景を注視していた。
「惑星の自転により生み出された、強大な力”黒都砲”。これに耐える事は不可能だ。」
映像に映っている”天候神”がそれに答える。
「間違い無く。それにしても、いつのまにこのような準備を。」
”黒威神”が誇らしげに答えようとしたその時。背後で大声が発せられた。
「白派艦隊に砲撃届きます!」
逃げ切れずに消滅していく艦艇を見てにやりとした”黒威神”の表情が、ふいに氷つく。白派艦隊の大型艦が巨大な輝く円盤を出現させており、そこに達した光が反射されが見えた。次の瞬間、全てが閃光に包まれる。
衝撃で瓦解した白派艦隊旗艦の艦橋。アムの腕の中、血だらけの腹を抑え横たわる”白き神”。
その目は正面の大型表示板に映る驚愕の風景をみつめていた。黒派の対空迎撃を見抜いた”白き神”は、大型艦の力場を広げ味方艦を守ろうととっさに発案、アムに出力の安全装置を切る指示を与えた。
しかし予想は良い意味で裏切られ、遮蔽にとどまらない、巨大な力場の反射鏡が構成されてしまった。
巨大な力の奔流は見事に反射され、その矛先は”緑の星”にむかっていった。やがて地表に到達した力は、 惑星の表層を見る間に削っていく。不意に染み出るように溶岩が噴き出し始める。
「いかん!”鏡”を傾け”緑の星”への直撃を防ぐのだ!」
”白き神”の指示にアムが答える。
「”鏡”は力場が連結されたものと推察されます。角度調整をするには、一旦力場の結合を解く必要が。」
今力場を解いたら、個々の艦がこの巨大な奔流を支えきれる保証は無い。星を失うか白派艦隊を失うか。その究極の選択は一瞬の躊躇によって選択の余地を失った。
誰かがうめくように呟いた。
「”緑の星”が崩れてゆく・・・。」
地表の崩壊を加速するように”黒都砲”が拡散放射され、やがて星全体に亀裂が入っていく。いくつかの巨大な塊に分裂し、押されるように動き出す。移動を始めたその努力もむなしく、塊の一つに激突され分解する”黒き輝き”。
巨大隕石が吹き荒れる軌道から離れつつ、その出来事を見つめ”白き神”が涙を流す。
黒派艦隊の捜索は続けられたが、惑星破壊直前の拡散した”黒都砲”の射界に入った為、策敵範囲に生きた艦船は見当たらなかった。
アムは”白き神”に声をかける。
「敵は全て消え去りました。”緑の星”があった場所は不規則な挙動の岩石が多く、救助どころか近づく事さえできません。」
「そうか・・・。」
「あと、出来る事は帰路につくだけです。指揮権を委譲し、治療を受けて下さい。」
「うむ。」
救護神の浮上寝台に乗せられて艦橋を出て行く”白き神”。その姿は、戦闘前よりも明らかに老いて見えた。
全てが終わった、そう安堵し喜ぶ艦橋の神々。”緑の星”破壊は”黒都砲”を撃った黒派にあると考えているのか、”惑星破壊”に責任を感じている様子は無かった。自らの技術が結果的に惑星の未来を奪った、そんな思いをぬぐえないアムは、喜びの環に入っていく事ができなかった。
いつもお読みいただき、ありがとうございます。
誤字ご指摘/感想は読ませていただきます。お返事はしませんが、ご容赦を。




