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5)結婚編4

20年前に書いた初作品、続きを投稿します。


激高する”黒威神”。

「それは黒派には到底受け入れられ無い。神々の神層領域を汚すおつもりか!」

そして、苦渋の選択を強いられる”白き神”。

 ”白き神”が”黒威神”に会ったのは、アム達が盛り上がっていた同時刻であった。”天の層”にある大きな空間。神の身長くらいの柱が不規則にならび、その外観は部屋の壁と同じく銀色の凸凹とした表面をしていた。そこに白服と黒服の神が、向かい合って立っている。

「”神々の秘密の間”に共に来たのは何千年ぶりでしょうか。よほどの事でしょうな、”白き神”よ。」

 頷く白き神。

「そうだ、”黒威神”よ。今日は、ある重要な話をしたいと思っている。」

 しばらく”白き神”の表情を見つめた後、”黒威神”が話しだす。

「ご執心の人類に関して、ですかな。”黒派”も彼らの有用性を鑑み、使い捨てたりしないようにしている。まだ何か不満でも?」

「それに関しては人類知性化に責任を持つ神として礼を述べたいくらいだ。今日は、お願いがあってきた。」

 ”黒威神”の片眉が上がる。”白き神”は本題を切り出すことにした。

「若い知性化種族である人類は、実子を持つ事が最大限に有用性を高めると、白派では判断した。本日をもって生殖機能を利用可能にしたので、その事を黒派として追認して欲しい。」

 その瞬間、”黒威神”の冷徹な仮面は剥がれ、怒りの表情に変わった。

「それは黒派には到底受け入れられ無い。神々の神層領域を汚すおつもりか!生殖機能を持った個体を即時破壊、廃棄するよう強く要請する!」

 手を震わせながら怒る”黒威神”に”白き神”が告げる。

 それに対し、”白き神”は静かに反論する。

「神層領域への影響、その良否は意見の判れるところだ。しかし考えて見て欲しい。そこまで人類が影響を及ぼすには莫大な時間がかかる。1万年を待たずに機能を止めればよかろう。猿人の実験では実子の為に最大の力を発揮してもいる。」

「否。星系の実質的な支配者は私だ。私の同意無くこのような暴挙、許せると思われるか!」

「だから、お願いしているのだ。”黒威神”よ。何故おまえは”人類”の事となるとむきになるのだ。私の一番大事なのは・・・」

「言うな!」

 黒威神の怒りは一向に収まる気配が無かった。

 ”白き神”は悲しげに首を振り、とどめの一言を放つ。

「今日中に人類5千人の処置が終わる。処分するとなれば5千人。その中には”重力の倦族”ら”白技”在籍の人類全てが含まれる。」

 ”黒威神”は表情が凍りつき、燃え上がった感情も一瞬で凍りついたようだった。

 重い沈黙が場を支配してどれくらいたったろうか。

 ”黒威神”はいつもの冷ややかな笑みを浮かべていた。

「判りました。”重力の倦族”を廃棄するわけには行きませんね。20年間。」

しばし溜めてから”黒威神”が続ける。

「20年間は過激派を押さえましょう。彼らにも理が有り、永久に押さえつけるわけにもいかない。その間に、人類の子らが力を示し、過激派を納得させるように。」

 ”白き神”は安堵の吐息を漏らす。

「ありがとう、”黒威神”よ。」

 ”黒威神”は壮絶な笑みを浮かべる。

「ただし、次の条件を呑めるならば、ですが。」


 ”神々の秘密の間”の出入り口で待っていた”育みの神”は、扉から出てきた”白き神”に歩み寄る。

「”白き神”、どうでしたか?」

 そこまで言ったものの、”白き神”の表情を見て絶句する。

 どんなに厳しい事態にも表面上はそれをうかがわせない”白き神”が、苦渋に満ちた表情で立っていた。

「すまない、アム・・・。」

 小さな声で呟く”白き神”に聞き直す”育みの神”。

「は?いまなんと?」

「”育みの神”よ。白派高位の神を集めなければならない。頼めるか?」

「判りました。」


 ”白き神”によって緊急召集された上位神は、告げられたその内容に絶句した。それは、生殖機能を取り戻した人類にとっては大きな苦悩を生み出すものだったからだ。

「”白き神”、そんな事を知ったら人類は子を作ろうとしないのでは。すくなくとも、真剣に教育をするでしょうか?」

 ”野の神”が疑問を呈すると、他の神々も頷いて同意する。”白き神”がそれに答える。

「この事は一切人類に話してはいけない、その時が訪れるまでは。これも”黒威神”の示した条件に含まれる。」

 子を持つ喜びを知った人類の身近で、苦悩し続ける立場になる。しかも苦悩さえも隠し通さねばならなかった。

 ”育みの神”が怒りも露わに立ち上がる。

「人類を守る為に、戦うわけにはまいりませんかの。我々神々には、異なった意見のどちらが正しいか、戦によって決する事が許されている。」

 頷く神はいなかったが、その目は同じ思いである事を物語っていた。”育みの神”が身振りで”野の神”に着席を即してから、告げる。

「戦争となれば、神々だけでなくより多くの人類が犠牲となろう。今回の条件を守れば苦悩はあるが殺されてしまう事は無い。」

 ”学び舎の神”はそれでは納得しなかった。

「条件を呑めば、我々の優位性も崩れていきます。その後に戦をしかけてくるのは間違い無いでしょう。ならば、戦いましょう!」

 この場にいる唯一の中位神、”蒼き星”の戦力の要である護衛機関の長、テハス神が立ち上がる。

「現時点の”蒼き星”戦力では”黒軍”に勝てません。20年の間に戦の準備を進め、条件を履行する直前で打って出ましょう!」

「条件を呑むか否かは、一週間以内に決めねばならん。神々ともあろう者が約束を違えると言うのか!」

「”黒派”が影で約束を違えているのを知っておろう。」

「”白派”は違う!」

 騒然となった会議室で、神々を見つめる”白き神”。

 普段は温厚な”白派”の神々が、皆戦いを前提に話し合っている。それだけ、白派の思想を持つ神にはこの条件が受け入れがたいのだ。しかし、”白き神”は即時戦端を開くとの決定を下せなかった。床をみながら静かに立ち上がる”白き神”に注目する神々。

「”黒威神”の条件は受け入れよう。今の我々では”黒派”には勝て無い。」

 その場に漂う重い沈黙。しかし、力強く正面を向く”白き神”。

「しかし、我々は戦の準備を始めよう。対等の立場で20年後を迎える為に。」

 歓声が沸き、神々が笑顔で力強く頷く。そのようななか、”野の神”が心配げな表情で問う。

「しかし、それでは”白き神”は”神々の秘密の間”で嘘をつくことになります。後に本国の査問、そして最下位神への降格は免れ無いのでは?」

 その事に気付いた神々ははっと押し黙る。”白き神”は本国でも並ぶ神の少ない最上位階。政治的な覇気があれば、辺境の地へ来ること無く、いまごろ銀河の支配神になっていたはずだ。そのような地位から追い落とそうとしていたのだ。

 ”白き神”は頷く。

「人類を守る為に位階が無くなるのはかまわない。問題は、戦を始めたら”黒派”は急使船を出発させるだろう事だ。我々は次の急使船が来るまでに圧勝しなければならない。」

 ”学び舎の神”が低い声で答える。

「”黒威神”が星系最上位になったら、”白派”は追い詰められて勢力を保てなくなるのですね。」

 それを防ぐには、”黒威神”の抹殺までを行う必要がある事に気がつき、上位神達は愕然とする。何故”白き神”が戦を避けたがっていたのか、それは・・・究極の選択だったのだ。

 ”白き神”が頷いて続ける。

「そうだ。戦をしかけるからには、圧倒せねばならない。この20年間は厳しい事になるぞ。皆、よろしく頼む。」

 頷く神々。小さく息をついた”白き神”は部屋の出口に向かい開いた扉の前で、立ちどまる。

「年のせいか少々疲れた。計画の骨子は皆で考えてくれ。」

 そう言うと扉の外に歩いていく”白き神”。その声は僅かに、僅かに、悲しみに震えていた。

いつもお読みいただき、ありがとうございます。


誤字ご指摘/感想は読ませていただきます。お返事はしませんが、ご容赦を。

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