4)成人編16
20年前に書いた初作品、続きを投稿します。
採取船の試験航海に参加するアム。そこで思わぬ問題に遭遇する。
翌日朝。出発前の採取船司令室には眠そうなアムがいた。
オンデ神が苦笑いしている。
「アム、休暇を楽しんだようだな。目の下に隈ができてるぞ。」
ジョイジ神が両手を頭の後ろに組んで、笑いかける。
「徹夜で連日宴会か?まさか女の子が寝かしてくれなかったとか?」
言ったジョイジ神は冗談のつもりだったが、寝不足のアムはつい本当の事を答えてしまう。
「そうなんです。結局ここ1週間はほとんどが徹夜か野宿です・・・ふあ~ぁ。」
あくびをするアム。1週間女と徹夜か?!そんな勘違いをして目が点になるジョイジ神。丁度そこへ”白き神”と”橙の神”が入ってくる。寝ぼけ眼のアムの背中をばんばん叩く”橙の神”。
「よ、”重力の卷族”。」
「は、はい?なんですか、それは。」
「できる奴は人類でも通り名をつけたらどうかってな。神々みたいに”重力の人”って名付けてもなんか締まらない。”重力の卷族”。かっこいいだろ!」
アムは困った顔をする。
「自分は目立ちたくないんですよ~。普通にアムって呼んでいただけませんか?」
アムは若い頃から目立たぬよう、目立たぬようにしていた。
目立ってしまっては”組織”の長がやりにくいからだ。その努力が、脆くも崩れ去ろうとしている。”橙の神”は両手を腰につけ、堂々とした態度で言い切る。
「だめだ。決めたんだ。がはは。」
アムは助けを求めるように”白き神”を見つける。
白き神は身ぶりでアムに答えた。拝むように。
「(すまん。)」
「そんな~。」
茫然とするアムの肩に腕を回して、”橙の神”がとどめを刺す。
「これだけの成果を出しちまったんだ、目立たないなんて無理さ。そもそも”白き神”に重用されてる時点でそんな目論見は崩れてるだろ。」
がくっとうなだれるアム。言われてみれば、確かにその通りだった。その姿を納得ととらえて、話を変える”橙の神”。
「よし。それじゃそろそろ。試験航海にしゅっぱ~つ。」
慌ただしくなる司令室。衛星の外郭からゆっくりと宇宙に漂いだすと、そこからはかなりの高速で衛星から離れていった。”白き神”一行は後ろの壁際にある椅子に坐って”木目の星”に近づいて行くさまを眺めていた。
「雲界に入ります!」
補佐役の神が注意を喚起する声で目が覚めたアム。
顔を上げると大窓のようにも見える司令室壁面表示板一杯に、ゆっくりと波打つ白いうねりが見えた。そこへまっすぐに落ちていく採取船。突入と同時に物質の密度が急激に高まり、鈍く振動する。その後もゆっくりとした周期で振動が伝わってくる。アムの対策が正しいならば、あり得ない挙動だった。アムははっとある事に気付いて空席の補助制御装置に坐る。
「”橙の神”。制御機構の比較的浅い部分を手直しします。よろしいでしょうか。」
後ろからは進行中の制御言語表層をいじるなんて危険すぎないか、といったざわめきが聞こえてくる。
「わかった。好きにいじってくれ。表層よりも深い領域は静止してからでないと危険だ、その時は声をかけてくれ。」
「判りました。」
早速、アムは制御言語を見直し始める。操作板上の鍵盤を高速に叩くと、目の前の画面が次々と変わる。制御装置前に坐る神が感嘆の声をあげる。これまでは操作板が苦手なふうを装ってゆっくりと操作していたが、アムの予想が正しければもう下手を装っている時間は無かった。そうこうしているうちにも採取船の深度は深まっていく。
「ん?」
おかしい。技術神が間違えるはずがない部分に、異状ががある。即時に修正をかけると振動が止まった。背後で技術神が驚きの声をあげる。しかし。この異状は何かがおかしい。念の為、深い領域まで精査の網を広げてみる。
「なんだこれは?!」
採取を司る部分に致命的な欠損があった。これに気付かずに希少物質の採取を行えば、重力制御が暴走しかねなかった。イフは振り返って”橙の神”を見る。
「破壊工作と思われる欠損が採取の項目で見つかりました。復旧と再起動を行うので、一旦止まっていただけませんか?」
「判った。制動開始!」
制御板の前にいた神がうろたえる。
「操作が効きません。降下が止まりません!」
「なんだと?」
アムは大急ぎで補助制御板に司令を打ち込む。受け付けない。最高権限の暗証を打ち込み、制御装置最深部を見ると、制御言語が次々と消されていた。採取の項目を発見されると同時に活動を開始する言語がしかけられていたのだろう。このままでは制御を失い破裂するか、最深部の金属層に激突するかだろう。
「は!」
アムは気合を入れると、これまで以上に打鍵の速度を上げていく。司令室の全ての制御板が赤く光って制御不能となり、アムの補助制御板だけが深い蒼色に光っている。
画面には恐ろしい速度で窓が開いては閉じていく。船体からめきめきと軋む音がして、司令室にいた一同がぎょっとする。外部の映像が一部づつ消えていき、視界の先には金属層の濃い色が見え始めていた。
「間に合わないか・・・」
誰もが諦めようとしたその時。司令室の制御装置がみるみる表示を取り戻し、船外の映像が元通りになった。
「何かに掴まってください!」
アムが大きな声で叫んだ瞬間、重力制御の限界を超えた制動がかかり、全員が床に崩れ落ちる。
ジョイジが顔だけアムに向けて声を絞りだす。
「き。つ。い。ぞ。もっと。や。さ。し。く。しろ。」
アムは声も出せずに苦笑いするしかなかった。
外壁が激しく振動した後、いっさいの音が消えた。
金属層に激突する寸前に止まることができたのだ。
重力制御も正常に働き、司令室内にいた神と人はゆるゆると立ち上がった。歓喜の叫び声が司令室に響き渡る。お互いの肩をたたくもの、泣き出すもの、怒り出すものと様々だった。
アムは床から起き上がれずに坐ったまま、壁によりかかっていた。”橙の神”がゆっくりとアムに近づき、そっと肩をかしてくれた。立ち上がって中央の司令席に坐らせられる。
「アム、ご苦労だった。しかし責任者として次の行動を決めねばならん。・・・教えてくれるかな。」
残念そうな顔で頷くアム。
「事実だけを言うならば、制御言語の一部を破壊し、自動破壊言語を仕掛けた者がいます。推論を言うならば、採取船に最近立ち入った事が有り、今この場にいない者が犯人である可能性が高い。」
ジョイジ神がつぶやく。
「エンカンのやつ、腹痛を理由に乗らなかった・・・まさか!」
オンデ神が答える。
「”火の星”で起きた事故の際も、エンカンは一人遅れてきた。確定では無いが、その可能性は高い。」
うなずく”橙の神”。
「よし。衛星に連絡し、人類の”エンカン”を拘束せよ、ただし丁重にな。さらに船内に仕掛けられた物が無いか、精査せよ。」
”白き神”は目を閉じ、何も語らなかった。しかしその表情は深い悲しみを感じさせた。
アムが賓客用の椅子で仮眠から目覚めると、採取開始に向けての準備が大詰めに入っており、司令室は慌ただしい雰囲気に包まれていた。船内にいかなる異状も見つからなかった為、そのまま改良した採取設備の稼働を始めたのだ。アムの目覚めに気付き、ジョイジが声をかけてくる。
「良く寝てたな、アム。」
「寝不足にあれだけの心労が重なったら、いかに繊細な自分でも眠れますよ、ジョイジ。」
「神経の細い奴があれだけの事をするか」
両肩を上げて身ぶりで異論を唱えるアム。
「ところで、エンカンは?」
「エンカンね。衛星内のどこにもいなかった。修理船が1隻行方不明になっていたので、おおかたそれで脱出したのだろう。」
「そうですか・・・」
背後でジョイジを呼ぶ声がする。まもなく採取装置の準備ができるそうだ。
「アム、我々も採取装置の制御室へ行くか。”白き神”と”橙の神”、オンデは先に行っているぞ。」
どきっとしてアムは完全に目が醒める。
「改造後最初の実働試験で装置の近くに行くなんて危険じゃないですか。すぐに行きましょう!」
オンデ神はにやっと笑った。
「そうこなくっちゃ。行こう!」
制御室では多くの技術神が忙しそうに制御板に向かって打鍵していた。神々の方が高重力高加速に強く緊急時の対応がしやすい為、人類はほとんどいなかった。正面の窓からは下方にある装置を見下ろす形で大きな部屋と接していた。装置は黄色い円筒に黒い立方体を5本張り付けて寝かせたような形をしており、アムからは見えない側に希少物質の採取口が開いているはずだった。ごちゃごちゃとあった周辺装置はアムの改良で不要になった為、広い空間にぽつんと置かれているようだった。窓の外を見ていたアムに気付いた”橙の神”が、アムに近づいてきた。
「お、来たな。アムはそこに坐ってくれ。」
”橙の神”が指したのは中央の主制御装置の隣にある副制御装置の椅子だった。アムは戸惑った。
「そんな重要な席には坐れません、採取そのものを補助する知識がありません。」
”橙の神”が答える。
「採取作業を隣で見て、覚えていくんだ。その方が今後開発を進める際に的確な仕様で設計できる。その上、その席なら暴走した採取作業を容易に止められる。」
「・・・わかりました。」
そう言って席に坐るアム。主制御装置に坐る技術神が”橙の神”に向かって用意は出来ていると頷く。
”橙の神”は頷いてから、自席の船内放送用操作板を起動する。
「皆、聞こえているか?我が採取船は、これより改良型採取装置を起動する。死なずに希少物質が取れたら、”重力の卷族”アムに、皆で酒でもおごってやってくれ。」
背後ではいくらでも飲ませてやるとか、失敗して死んだら殴ってやる、といった野次があがっていた。”橙の神”が話を続ける。
「分析によれば失敗の可能性は極めて低い。ただ、もし採取船が吹き飛んだら・・・俺も一緒にいってやる、だから怖がるな。では。開始せよ!」
「は!」
起動された機器の振動が僅かに操作室まで伝わってくる。しばらくして、装置正面の壁が左右に開いていき、”橙の星”地表とも言える液体金属の波面が眼前に広がった。装置の出力が徐々に上げられてくると、液体金属の波間には金属の霧が重々しく立ち昇り、やがてすり鉢状に凹み始める。装置の周囲には虹色の靄が広がり始め、その輝きは徐々に明るくなって来た。
「装置の小型化を達成しながらも、希少物質の収集能力は・・・一桁上がっています。その上まったく不安定な要素がありません!」
技術神が興奮して大声で報告してくる。
”橙の神”が満足そうに頷く。
「うん、そうなると思っていたよ。しかしまだ気を抜くな。」
その頃、アムは回りの興奮をよそに、制御板を集中して操作していた。
「・・・問題無し。緊急停止部分問題無し。船体制御・・・」
万一に備え、今一度制御言語の内容を調べて回っていた。予想外の反動が観測され改善すべき個所が見つかったが、今回は破壊活動は無さそうだった。
「ふぅ。」
一息つき正面の窓を眺めるアム。装置は順調に稼働しているようだった。その時、制御室にいる神々が、人類が、自分に注目している事に気がついた。
「?」
”橙の神”が再び船内放送で指示をだす。
「採取試験は所定の時間、問題無く稼働した。これを持って採取終了、戻って異状個所の点検と分析を行う。皆、ご苦労だった。」
装置の輝きが急速に消えていき、正面の扉が閉じていく。
操作室に歓声が響き渡る。
”橙の神”が笑いながらアムの近くにやってくると、アムの背中を叩きながら慰労の言葉を発した。
「文句なしの成功だ、お疲れさん。」
「ありがとうございます。」
「しかし、アムには一つ謝らなければならない。それは、今回の改良はアムの成果とはならず、ここの技術神の成果としなければならないからだ。」
アムは瞬時に”橙の神”の配慮を察した。
「判っています。一桁性能を上げたなんて事が知れ渡ったら、誘拐されて危険な兵器開発に回されるでしょう。」
技術神が謝る。
「”重力の卷族”、本当に申し訳無い。しかし、桁違いの能力向上を隠蔽する為に採掘量の方をごまかして、万一それが本国に伝わったら・・・。即座に懲罰艦隊が派遣され、星系ごと処分されかねない。」
アムが頷く。
「判っています。むしろ、人類に良くしてくださる神々の名誉としていただくのが最善とも考えます。私の貢献は僅かなものとして下さい。」
技術神が礼をする。
「ありがとう。惑星一つ私有できるほどの名誉を譲ってもらった事、”木目の輝き”にいる神々は決して忘れない。」
アムは笑顔で頷く。
採取後の帰路では、いかにして技術神の間で技術が飛躍したか、その理屈を考えるのに費やされた。辻褄が合わないと、アムに追及の手が伸びかねないからだ。また、アムの関与がエンカンから伝えられている危険性も考慮し、アムの失敗がきっかけになって技術神に発見された事になった。
採取船寄港直後、自室の寝台に倒れるように横になるアム。疲れきってすぐに寝てしまいたかったアムだが、どうしてもしておかなくてはならない事があった。寝転んだまま、情報端末からイフに昼食を申し込む。午後は”白き船”で出港しなければならない為、港近くの展望喫茶で待ち合わせだ。こないだの友人達に”漏れなく”声をかけて欲しいと一ひとこと添える。しばらくは何事もおこらず、うつらうつらしていると音がした。
「お。返事が戻ってきた。」
情報端末には皆で早めに展望喫茶に行ってるとの返事があった。
「よし。これで必要な事はした・・・」
アムは、そこで意識が途切れた。重要な事を一つ忘れたまま。
「アム!」「遅いぞ!」「先食べちゃうところだった。」
「ごめん~。」
展望喫茶の窓際の席に陣取ったカズヒ、キタン、イフの所に、文句を言われながら大きな旅行鞄を引っ張って駆け込んできたアム。
「目覚ましを仕掛け忘れっちゃって。申し訳無い。」
イフが不思議な顔をする。
「同行の神々は?」
「起きて応接室を見たら、この紙が机上に。」
一同が顔を近づけて覗き込み、カズヒが読み上げる。
「なになに?熟睡してたからそっとしておく。でも、出港時刻まで寝てたら置いてくからな。ジョイジより。」
「・・・」「・・・」「・・・・・・まじかぃ」
アムが苦笑いで答える。
「ジョイジ神ならやりかねない。でも”白き神”が待ってくださるよ。」
キタンがため息をつく。
「アム、上位神を待たせるような事をしたら、黒派過激派に襲撃されるぞ。」
「うわ。気をつけるよ。」
そう言いながら席に坐るアム。
気持ちの良い風が吹く中、仲間達の他愛のないおしゃべりが盛り上がる。分厚い窓越しの眼下には、出発の準備を進める”白き神”の船が見下ろせた。
「ちょっと便所に行ってくる。」
そう言ってアムは席を立ち、廊下の角を曲がると・・・。
そこには眉間をぴくぴくさせながら腰に手をあてた女給が立っていた。
ぐいっと襟をつかまれて便所に連れ込まれる。
扉が締まると低い声で女給がささやいた。
「いつまで待たせるのよ、”重力のどん底”。」
「わるい。あまり早く動くと不自然だろ、イナフ。それに呼び名が違ってるよ、”重力の卷族”だ。」
厚い化粧で別人に見えるイナフは、掴んでいた手を離して、ため息をつく。
「にたようなものでしょ。で、何?”漏れなく”なんて言うから男の子との食事を蹴って来たのに、大した話でなければ怒るわよ。」
アムは襟をただしながら頷く。
「面と向かってイナフに確認したかったんだ。自分は知っての通り目立ち始めている。エンカンの裏切りもあった。遠からず黒派の監視がつくだろう。すまないが”組織”の長をイナフに変わってもらいたい。」
イナフは腕を組んでしばし考え込む。
「判ったわ、長を引き受ける。最高指揮権を持った者がろくに指示も出せないんじゃ”組織”が機能しないしね。」
思いのほか早く結論を出したイナフに、ほっとするアム。
「ありがとう、イナフ。きみなら安心して任せられるし、皆ついて来るよ。」
イナフは目を細めて答える。
「言っておくけど、アムは”組織”の象徴からは逃れられないわよ。これで楽になるなんて思わないでね。」
頷くアム。
「判っているよ。監視に気付かれない範囲で、全面的に支援する。」
ようやく笑顔になるイナフ。
「ん。じゃ、そろそろ出ましょう。良い船旅を、アム。」
「イナフも元気で。では。」
扉を開いて先に出ていくアム。掃除道具を手に取り、気合を入れるイナフ。
「よし、綺麗にするか!」
何かで盛り上がっている仲間の席に戻ると、何食わぬ顔で会話に入っていくアム。やがて訪れる出発の時。
立ち上がるアム。
「みんな、いろいろとありがとう。もうそろそろ行くよ。」
頷く一同。カズヒが答える。
「港は出港まで厳戒体制で入れない。我々はここから見送るよ。気をつけてな、アム。」
キタンも笑顔で答える。
「”蒼き星”での活躍を願ってるぞ、アム。」
イフはどことなくこわばった笑顔で答える。
「元気でいてくれたら。それだけで。いい。」
満面の笑みのまま、涙でいっぱいになるイフ。
かがんでそっとイフを抱きしめるアム。
しばらくしてから起き上がると、笑顔で皆に手を振るアム。
「ありがとう。必ずまた会おうね!」
”木目の輝き”港は”蒼き輝き”港にそっくりだったが、桟橋から先が無重力区画になっており、海水で満たされたりはしていなかった。まれに高速移動する際、係留中の船舶や港施設に被害を及ぼす事があるからだった。初期の頃に何度か被害が出て、ようやく止めたらしい。港の係官からそんな過去の歴史を聞いて思わず笑みをこぼすアム。
「それは”橙の神”らしいですね。」
係官が横を歩きながら答える。
「あの方は時に変なこだわりを持つので。港には海水があるべきだとのこだわりは、2隻の連絡船を全壊してやっと変わりました。」
アムが微笑む。
「あれだけ立派な神が慕われる理由は、そんな性格が愛されるからかもしれませんね。」
頷く係官。
「ですね。えっと。この線から先は無重力になっているので、飛び跳ねないように注意を。それと・・・採取船の改良、ありがとうございました。貴方は我々人類の誇りですよ。」
握手を求められ、少し照れながら握手するアム。
「少し手伝っただけですよ。」
笑顔の係官。
「では、私はこでで戻ります。良い旅を!」
「ありがとうございます。」
後ろ姿で去ってゆく係官から目を離し、少し離れた居住区側の壁面を見上げるアム。
「あ、窓の所に皆いるな。」
イフ、キタン、カズヒが派手に手を振っているのが見えた。
後ろで女給が呆れた顔で立っている。
「もう子供じゃないんだから・・・。でも、ありがとう。」
満面の笑顔で大きく手を振ってから、”白き船”へ向かうアム。桟橋の外れで今一度手を振り、それから船内に入っていった。
それを待っていたかのように、船は桟橋を離れて行く。
港区画は急速に減圧され、それが終わると同時に外扉が開いて行く。ゆっくりと宇宙へせりだしていく船。
「行ってしまったね・・・」
「うん・・・」
「アム・・・」
展望喫茶から”白き船”の出港を見送る3人。その美しい白い船が、闇の中へ進んでいくのを食い入るように見つめている。外壁が閉じていき、完全に閉まってもしばらくは動かない。イフが小さな声でつぶやく。
「死なないでね、アム。」
いつもお読みいただき、ありがとうございます。
誤字ご指摘/感想は読ませていただきます。お返事はしませんが、ご容赦を。




