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4)成人14

10年前に書いた初作品、続きを投稿します。


アムは、”赤き星”、そして”木目の星”と旅を続ける。

 ”炉都”の空港に降り立った一同は、その空港の汚れ方に驚いた。灰色の建造物は砂埃で汚れ、滑走路も細かい埃で覆われていた。

「せっかくのおこしに際し、清掃が行き届いておらず申し訳無く思います。清掃機械を対埃仕様にする予算もなく人力で清掃を行っているのですが。嵐一つでこの有様。」

 周囲の様子に驚いている間に、一同の横にそっと神が立っていた。

「言い訳からで申し訳無いですが。私は”赤き星”を任されています、”鉱炉の神”です。この星系では一番最後に上位神名を得たくらいですから、中位神と大差ありません。護衛神の皆様もどうか気兼ね無く。」

 ”鉱炉の神”は、老人のような皺々の顔で微笑した。

 神格がどのような基準で昇格するのか人類には明かされていなかったが、それでもアムは疑問に思った。上位神になる資質がある神は、一般的には若々しいうちに中位神、上位神と昇格していく。

 しかし、この神はどう見ても年老いている。年老いてから上位神に昇格した稀な神なのだろうか?

 白き神が挨拶を返す。

「出迎えありがとう、”鉱炉の神”。しかし・・・そんなに困っているなら、星系政府に助力を請えば良いではないか?」

 両肩を小さく上げてから答える”鉱炉の神”。

「そうしたいのはやまやまですが、黒派はずっとこの星を傘下に入れたがっています。借りが増えて膨らんだあげくに、この星の中立を失うなんて御免ですよ。」

 考え込む白き神に変わって、ジョイジ神が口を挟む。

「そしたら、白派に頼んではいかがです?貸し借り無しで助けてくれます。」

 苦笑いする”鉱炉の神”。

「そりゃありがたいですな。しかし、おおっぴらにそんな事をしたら、黒派が干渉を強めてきますよ。まぁ、ここだけの話、こっそりと助けていただくなら、ね。」

 ”白き神”が笑顔で頷く。

「判った。こっそりと助力しよう。」

 にやっと笑ったあと、まじめな表情になる”鉱炉の神”。

「もっとも・・・一つだけ、切実な問題もありましてね。それは後でお話するとして。まず宿舎に行きましょう。ここは埃が多すぎる。」

 一同頷く。


 船から下した浮上式移動機で、”鉱炉の神”が乗る密閉式小型車両の後をゆっくりと追うアム達。

 移動機の中にはいつもの顔ぶれだけでなく、エンカンも居た。特殊顔料で顔が別人になっている。

「いや~すごい景色っすね。標高の高い山々が多いとは聞いていたけど。緑はほんの裾のあたりまでしか無いっす。」

 アムも感嘆しながら見上げている。

「すごいね~、エンカン。いや、今は偽名のエナフだったね。慣れとかないと。」

 浮上式移動機の大型表示版に映し出される景色をはしゃぎながら見ているアム達にジョイジ神がため息をつく。

「こんなに緊迫した状況でも景色が楽しめるとは。人類は神経が太いのか。はたまた二人が子供なだけか?」

 渋い顔をしてジョイジ神を振り返るエンカン。

「何言ってるんすか。長生きしすぎて感受性鈍ってるんじゃないっすか?」

「こ、この。」

 赤くなるジョイジ神を諌めるオンデ神。

「はっはっはっ。ジョイジの負けだな。確かに景色を楽しむ心を忘れちゃいかんな。」

 ジョイジがやれやれといった顔で肩をすくめる。

「まったく。年寄りはなんでも説教にしちまう。」

 今度はオンデ神が顔を赤くする。

「なんじゃと!」

 エンカンがあわてて止めに入る。

「はいはい、目的地についたみたいっすよ。”白き神”もあきれて物が言え無いみたいだし。その辺でやめるっす。」

 考え事から呼び出され、はっと顔を上げる”白き神”。

「む。どうした?着いたようだな。」

 ”白き神”が立ち上がり出口に向かうのを慌てて追いかける一同。


 案内された建物は巨大な円形の集合住宅だった。

 中央に向かう廊下は薄暗く、汚れていた。

 ”鉱炉の神”が、歩きながら申し訳なさそうに話す。

「いや~。星系最上位の神をお迎えするにはそぐわない、粗末で汚い宿舎で恐縮ですが。この星では一番まともな部類でして。」

 廊下の突き当たりには立派な木の扉があり、どうやらここが上級神の部屋のようだった。

「よっと。」

 ”鉱炉の神”が手で扉を開けるのを見て、一同が驚く。

「先週の事故で、整備指揮神のソレス神を始め、多くの整備士が死にまして。今も復旧に人手がかかって扉の修理は後回しなんです。」

 ソレス神を慕う黒派で唯一親しくなったヨラン神の気持ちを思うと、アムは悲しくなった。

 ”鉱炉の神”に即されて、中に入る一同。

 円形にならんだ応接間の椅子に全員で坐ると、給仕の女性が一人づつお茶の入った湯飲みを手渡していく。

 女性が礼をして部屋を出て行くと、”白き神”が口火を切った。

「先ほどの切実な問題とこの事故は、何か関係があるのではないか?」

 少し間を置いてから、”鉱炉の神”が頷く。

「説明しましょう。超高重力化で得られる希少物質は”木目の星”で採取されていますが、”火の星”ではそれを本国へ送り易いよう、加工しています。加工時に必要な材料が得やすいというのが、この星に設備がある理由です。ここまでは知っていますね。」

 同席していた神々が頷く。アムとエンカンは知らなかった話だ。”鉱炉の神”が話を続ける。

「そして、加工には”力場”を必要とします。その”力場”を作り出しているのが”6基連動高重力発生器”なのです。」

 オンデ神が怪訝な顔をする。

「”鉱炉の神”、私の記憶では・・・2基で運用していたはず。一握りの希少物質を、対になった発生器の中心にできる力場で、6カ月かけて変質させるのではなかったのでは?2基以上は制御が難しく・・・」

 ”鉱炉の神”が頷く。

「その通りです。しかし黒威神の要求を満たすには1カ月で変質させねばなりません。その為に6基同時で力場を作り出しています。」

 オンデ神が驚く。

「技術者で無い私にも判る。そんな事をしたら制御を失って・・・」

 しばし静寂が場を支配する。

 ”鉱炉の神”が静かに立ち上がって、出入り口を指示す。

「続きは、本物を見てからが良いでしょうな。」


 小型車両と移動機で宿舎から30分程移動し、渓谷の谷底に到着した一行。崖の壁面についていた大きな扉が鈍い音を立て左右に開いていく。

 一向が機体ごと入っていくと再び閉まっていく。

 機体から全員降りた時、どことなくエンカンの様子がおかしかった。目がうつろで、何かに怯えているようだった。

 アムは気になったが、仕事が終わってから聞けば良いことだと考え直し、先に進んだ。

 その時。アムが話し掛けていたなら、その後のエンカンの人生は変わっていたかもしれない。

 誰も居なくなった駐機場で、扉の保安装置に向かうエンカン。その目は何かを覚悟した者の目だった。


 遅れて入ってきたエンカンがへこへこと頭を下げながらアムの横にやってきた。

 全員揃うのを待っていた”鉱炉の神”が、説明を始める。

「これが”6基連動高重力発生器”です。」

 声の響く大きな空洞に設置された装置を壁際から見上げる一同。

「あの中心にある球体で希少物質が精製されます。」

 空洞の中央上方に、小さな透明の球体があった。黄土色の円筒で4方を囲まれており、上下を焦げ茶色の円筒で挟まれていた。周囲には重い振動音が響き、波の音のように上げ下げしていた。透明の球体の中には黒い靄のようなものがうごめいていた。どうやら動作中のようだ。

 オンデ神が心配顔で問いかける。

「ここで事故があったとの話ですが、動作中にここに入って大丈夫なのですか?」

 ”鉱炉の神”が笑顔で答える。

「大丈夫です。完全に停止するわけにはいかないが、安全な出力に落としています。」

 そう言って壁面上方にある硝子窓を見上げる。

「事故があった時は機械室もあの操作室の中も潰れた肉片だらけになってしまいましたが。」

 ”鉱炉の神”の一言にゾッとした一同。

 そんな最中、アムは気になる事があった。操作室の窓に真っ赤な何かが見えたのだ。

 ”鉱炉の神”は気付かずに話し続ける。

「この設備はもともと不安定な上に、外的要因の影響を受けやすい。なんども改良を施したが、この星にいる神々の技術者には歯が立たないようで。この分野は”蒼き星”が一番進んでいると聞いていますが・・・。」

 白き神が答える。

「確かにそう思う。しかしそれは優秀な神々を配下に持つからでは無い。新しいものを育みやすい自由闊達な環境と、人類の技術者が、重力制御分野で我々を優位に立たせる原動力だ。」

 アムは操作室の窓に見えた赤いものが服で、立っているのが女性である事に気付いた。その瞬間、背筋が凍るような思いに捕われた。

 ”鉱炉の神”が驚く。

「そうだったのですか。では、本件で助力が必要とすると・・・」

 ”白き神”が答える。

「人類の技術者達が大きな力になるだろう。ここにいるアムも教育機関を出たばかりではあるが、重力制御応用の最先端を研究していた。きっと力になってくれるだろう。」

 アムは戦慄した。あの場所にあの女性が居てはならない。居るとしたら・・・

 一同は話の渦中にいるアムの様子がおかしい事にそこで気付いた。何か激しく同様している。

 次の瞬間アムが叫んだ。

「この場所から離れてください、今すぐに!」

 叫んだ直後に後ろ向きに走り出すアム。扉が開いた瞬間、上下感覚が狂い引っ張られる感じがした。そして地面が壁に変わった。扉の中に落下した瞬間近くの装置にしがみつく。今度は装置の方向が地面に変わった。

 装置中央にある透明の球体は中身一杯に黒い靄が広がり、球体の外側には細い稲妻が走っていた。

 どうやら装置が全力稼働しており、重力が上下左右に変動していたようだ。目の前で扉が閉まり、孤立するアム。

「あら、さすがね。一瞬で危機判断と行動を済ませなければ、そこにはたどり着けないわ。」

 階段の上から艶のある女性の声が聞こえた。見上げたアムは、そこに妖艶な女神が立っているのを見た。人類高等教育機関の前期末研究開発表会で会った、黒威神随行の女神だった。重力変動など無いがごとくに階段を優雅に降りてくる。

「お久しぶり。先回会った時よりも、男らしくなったわね。食べちゃおうかしら。」

 アムの肩に両手を回しながら、語りかける女神。背中に短剣がそっと当てられる。

「残念ね。目撃者は始末しろって言われてるの。」

 首筋に赤い筋を残しながらゆっくりと引かれる短剣。

 アムは隙を伺っていたが、逃げられそうに無かった。

 諦めてはいなかったが、ここで死ぬ程度の運ならこの先

 組織を率いて行く資格もない。そんな割り切った意識が目に現れていたのだろうか?女神が興味深げに話し掛ける。

「怯えないのね・・・面白いわ。貴方には何かありそうね。」

 首筋に当てられた小刀をゆっくりと離してから微笑する女神。

「いいわ。殺さないであげる。どうせ人類の発言なんて証拠としては弱いもの。でも、一つだけ約束してくれる?」

 アムは重力の変動で自由は効かなかったが、なんとか声を出した。

「な、なんですか?」

 女神が寂しそうな顔で続ける。

「今回の事は、私の一存でした事なの。背後関係は無いわ。だから、”黒威神”の手の者が行ったなんて”白き神”に言わないでね。悲しませたく無いの。」

 アムには女神の目は嘘を言っているようには見えなかった。

「・・・信じましょう。どのみち、見覚えのある貴方のお顔も、”黒威神”に嫌疑を向ける為の偽物かもしれませんしね。」

 女神が極上の笑顔になる。

「賢い人は好きよ。・・・私の名前はエフェス。覚えていてね。」

 そう言うやいなや高重力化とは思え無い見のこなしで飛び去っていく。

 足を床から離す瞬間に粘着しているような間が有り、どうやら靴の仕掛けで重力変動に耐えているようだった。

 扉が閉まり一人になったアムは、階段のある方向に歩腹前進を始めた。

「は、早く装置を止めなくちゃ。」

 時折重力の方向が変わって無げ飛ばされそうになるなか、ようやく階段の上に到達する。

 操作室の扉を開けると、意識を失った神々が制御盤に伏していた。椅子に足が固定されている為か、上半身だけが大きく揺れていた。

「徐々に激しさが増している。急がなければ。」

 アムは自分に気合を入れると、制御盤まで中腰で走りだす。到着の寸前に窓側に引力がかかり飛ばされそうになるが、かろうじて制御盤につかまるアム。

 引力が床に向いた瞬間に制御盤を操作するアム。不正操作防止の機能はエフェス神が外した為か、なんの問題もなく操作できた。

「これで!」

 アムが緊急停止を実行すると、荒れ狂っていた重力変動が急激に減少を始めた。

「とまった・・・」

 安心したのか、そこで意識を失うアム。


 体の至る所が鈍く痛み、目が覚めるアム。

 どうやら清潔な寝台に寝かされているようだった。

「お。気がついたっすね。お~い。アムが起きましたよ!」

 どかどかと歩く音がして寝台に近づいてくるオンデ神。

「バカモノ!病室で大声を出すやつがいるか!」

 体をゆっくりと起すと、隣の寝台に寝ているエンカンとオンデ神が看護神におもいっきり睨まれているところだった。

 エンカンは足に包帯を巻かれ、オンデ神は右腕に包帯を巻かれていたが、元気そうだった。安心するアム。

「オンデ神にエン・・・エナフ。無事だったんだね。」

 エナフことエンカンが笑いながら答える。

「なんとか。神々は頑丈に出来ているみたいで、あの場にいた神々はピンピンしているっす。」

 オンデ神がアムに向かって手を差し伸べ、握手をする。

「しかし。重力波があのまま増大するに任せていたら、全員生きてはいなかった。ありがとう。」

 アムは微笑んでうなづく。オンデ神に横になるように促され、体を寝かすアム。

「アムもエンカンも、今は体を休めてな。人類にはきつかったはずだからな。」

「今回の事で益々”白き神”はアムの評価を上げたっす。人類の希望なんすから、ゆっくり寝て体を大事にっす。」

 布団を首まで引っ張りながらお礼するアム。

「オンデ、ありがとうございます。エンカンも。」

 目を閉じると何かを成し遂げた達成感がこみあげてきた。

 僅かな違和感と共に・・・。


 ”火の星”が徐々に遠ざかっていくのを窓から眺めているアム。日程の大半を寝台で過ごしたアムは、1日採掘場を見学しただけで地上を離れる事になった。しかしその1日は貴重な1日だった。

 採掘上で働く人類を”組織”に組み込む事に成功したのだ。劣悪な環境で働く彼らにとっては、今すぐにでも支援が必要だったのだ。

「アム、ここにいたっすか。」

 後ろを振り向くと、そこには笑顔のエンカンがいた。

「エンカン。最終日いなかったけど、まだ体の調子が悪いのかい?」

 笑いながら両手をぶんぶんと振り回した後、真顔になって答えるエンカン。

「もう大丈夫っす。ちと他の神々に野暮用があって。」

「そっか・・・」

 エンカンがアムの横に並んで窓の外を見る。

「”鉱炉の神”に人類の待遇改善を取り付けたのは大きかったっすね。」

 アムが頷いて答える。

「”鉱炉の神”は、これまで人類を道具として酷使してきたけど、道具を粗末にする神では無かった。良くも悪くも技術神に多い論理的な神だったから、説得も可能だったんだよ。」

 頷くエンカン。

「たしかに。でも、アムの活躍があったからアムの話に耳を傾けてくれたっすよ。」

 苦笑するアム。

「自らと部下達の命を救われた事で、人類には”高度な道具”としての可能性を感じたから。あとで他の神にそう漏らしたらしいよ。」

 手を顎にあてて考え込むエンカン。

「本当にそうなのだろうか・・・」

 伸びをしながら話すアム。

「実際はどうか判らない。だからとどめにあの装置の改良案を提供しようと思う。重力制御は得意分野だしね。」

 アムを見ないまま答えるエンカン。

「おまえって本当にすごいっすね。人類にとって、欠く事のできない希望の星っす。」

 扉に向かっていた歩みをとめ、振り返るアム。

「嫌だな、エンカンだってものすごい諜報能力があるじゃないか。人類にはエンカンのような人材も必要だよ。」

 エンカンは変わらず外を見ながら楽しげな声で答える。

「ありがと。一緒に人類を盛り上げて行こうっす!」

 アムは微笑んで手を上げると、扉から出て行った。

 エンカンの口元は笑っていた。しかし。その目は狂気をはらんで虚空を睨んでいた。


 アム達一向は、星系で一番巨大な惑星、”木目の星”に到着しようとしていた。船外でその様子を眺めていたアムとエンカンは圧倒されていた。

「これが”木目の星”・・・」

 目の前には、圧倒的な存在感を持つ橙色の巨大惑星が浮かんでいた。

「やはり肉眼で見ると違うね。」

エンカンが頷く。

「この宇宙服、頭の部分全部透き通っているから、なおさらっす。」

しばらく沈黙が場を支配する。

アムは神々を呼んだ巨大惑星に思いを馳せた。


 大気を持つ巨大惑星では、高重力により生成された様々な希少物質が、太陽より容易に採取できる。この星系には二つの巨大惑星があり、しかも二つとも大気を持っていた。これが神々の目に止まり、開拓を決定させるに至ったのだ。宇宙に巨大惑星は多くあるが、大気を伴ったものは少ない。生物が発生した惑星も希少だが、希少性はそれ以上だった。後工程の精製能力に制約を受け今は”木目の星”しか採掘されていないが、アムが”火の星”の精製設備改良に協力すれば、”土の星”の開拓も1万年は開始が早まるだろう。資源を早く取りきれば神々の撤収は早まり、人類の自立が実現するかもしれない。微笑むアム。

「お。衛星都市”木目の輝き”が見えるっすね。」

 エンカンの声で現実に引き戻されたアムは、衛星を探す。

「あれが・・・”木目の輝き”か!」

 ”木目の星”衛星軌道に浮かぶその姿は異様だった。

 他の衛星では太陽光を取り入れる巨大な窓があったが、それらしい物は無く。分厚い装甲のような板で覆われていた。さらに、最下層の下が平坦では無く中央が大きく窪み、外周は凸凹と突起が出ていた。

 エンカンが呆れた声で話す。

「アム、事前に調べなかったっす?」

 肩をすくめてからエンカンが続ける。

「”木目の星”の月には、軌道に引き寄せられる巨大な破片が飛び込んで壊滅的な地震と破壊をもたらす。だから移動可能な衛星都市以外に拠点は設けられないっす。小さな破片は避けないから、窓なんか造らないっす。」

 アムは感心した。

「なるほど~。じゃ、最下層外壁の凸凹は?」

 エンカンが答える。

「”木目の輝き”は、都市であり、資源採掘拠点でもあるっす。ほら、あの”木目の星”軌道上に浮いてる丸い玉。あれが資源採掘船で。」

 エンカンが”木目の輝き”の下層へ指をすっと指す。

 よく見ると下層外壁に大きな球が2個はまっており、穴が2個空いていた。

「あの空いている大穴に、はまる。」

 アムが手を叩いて頷く。

「なるほど。それであんな形しているんだ。」

 エンカンが笑う。

「それくらい事前に調べておくっす。」

 アムは恥ずかしそうに頭を押さえる。しかし本当は知っている事だった。エンカンの勘違いに合わせただけで、おおよその構造は”組織”経由で掴んでいた。では何に驚いたのか?それは大切な友にまもなく会える、その距離の短さに驚いたのだった。

「もうすぐ会える・・・」

 その嬉しそうな呟きは、エンカンの耳には届かなかった。


 ”木目の輝き”港は下層の外周部、円環状の盛り上がりの中にあった。中心部が巨大な資源採掘船港で占められている為だが、おかげで狭く、宇宙船を入れにくそうだった。ようやく桟橋に接絃して、降りた一向。

「誰も居ない・・・」

 途方にくれた顔でジョイジが呟く。

 と、突然近くの壁にある扉が手前に開いた。

 その中から少女が突進してくる。オンデ神とジョイジ神が警戒して銃器を向けても止まらない。アムは、その少女が自分に向かっている事に気付いた。

「え、え!」

 両手を広げて飛び上がった少女。間近に迫ったその顔は、満面の笑みを浮かべ、美しかった。

「アム~!」

「うわ~ぁ!」

 ど~んと抱き疲れて後ろに押し倒される、アム。

 銃を向けながら唖然とする護衛神。

「会いたかった~。」

 すりすりする少女。この場所で自分を知っていてこんな事をいきなりできるのは、一人しかいないはずだった。

「えっと・・・もしかして・・・イフ?」

「もしかしてじゃないわ。もぅ。」

 と言うやいなやまた抱きつくイフ。

 ジョイジ神が我にかえって問いかける。

「お嬢さん、ちょっといいかな。”平等の神”はどちらに?」

 アムから離れるイフ。

「あ、すみません。つい周りが見えなくなって・・・。」

 アムが笑う。

「この子はイフ、おない月生まれの友人です。」

 イフがキッと睨む。

「友人?」

 アムがはっとなる。

「い、いや。親友です。」

 あいかわらず睨んでいるイフ。アムは内心勘弁してくれ~と思う。その思いが通じたのか、おしとやかにお辞儀をするイフ。

「ふぅ。しょうがないな。えっと、こちらさまは?アム。」

「この方が自分の雇用主、白き神。オンデ神、ジョイジ神、エナフ。」

 紹介を受ける毎に軽くお辞儀をしていく一行。

 と、イフが怪訝な顔をする。

「あれ?星系第一位のお名前に聞こえたんですが。私聞き間違えたのかしら・・・」

 白き神が返事をする。

「イフか、大きくなったな。間違いで無いよ、私が白き神だ。」

 途端に固まるイフ。

「ひ、ひゃわわ。申し訳ありません!って、お会いしたの2度目でした?」

「1度目に会ったのは人類育成施設に視察にいった時だからな。覚えていないだろう。」

 アムは何故白き神がそんな事を覚えているのか不思議に思った。

「”白き神”、何故イフを?」

「視察にいった時、一番異彩を放っていたのがアムだった。その後ろをついて回って、甲斐甲斐しく世話をしていたのがイフだった。二人とも目立っていたからな。」

 何か苦い物を食べたような顔をしているアムと赤くなるイフ。

 エンカンがじとっとした目でアムを見る。

「そんなちっこい頃から女ったらしだったんすね。アム。」

 イフがジロッとアムを見る。

「どう言うこと?今も女ったらしって事?」

「あぅ、あぅ。」

 そこにジョイジ神が助け船を出す。

「ところで、”橙の神”はいずこに?挨拶をしておきたいのだが。」

 イフが申し訳無さそうに答える。

「搭乗中の資源採掘船、到着が遅れていまして。でも、もう到着する頃です。」

 丁度、背後で地響きが聞こえる。

「ああ、到着しました。資源採掘船の方にご案内しましょうか?」

 ”白き神”が頷く。

「よろしく頼む。」

「はい。ではこちらへどうぞ!」

 元気良くにこやかに出口を示す。

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

誤字ご指摘/感想は読ませていただきます。お返事はしませんが、ご容赦を。

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