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4)成人編7

20年前に書いた初作品、続きを投稿します。


アムは、”白き船”で”緑の輝き”に到着する。ここで様々な事を知る事になる。

・・・週一の投稿が遅れました。すみません。

 船旅は順調で、なんの問題も生じていなかった。当初は放任されていたアムも、遊ばせておくのはもったいないと、船体整備、技術教育、武道訓練と次々日程が埋まっていった。準備の為か白き神は殆ど自室から出なかったが、毎晩の夕食は共にすごし、他の星系について様々な話を聞かせてもらえた。忙しくも充実した船旅であった。

 旅の最初の目的地”緑の星”の衛星都市、”緑の輝き”にいよいよ到着するその日。船内の騒がしさで眼がさめたアムは、急ぎ礼服に着替えると部屋を飛び出した。旅の途中で船員とすっかり親しくなったアムは、艦橋への出入りも許されるようになっていた。忙しそうに廊下を行き来する船員を避けるように進み、艦橋へ入っていくアム。

 しかし入った途端、ぴりぴりとした緊張感に驚くアム。

「軍所属船多数接近。」

「”黒曜月”の影からも新手が現れました。」

「このままでは”緑の輝き”到着直前で周囲を囲まれます。」

 どうやら、予定外の事体が発生したらしい。その事体に対し、船長が怒りを押さえつつ指示をとばす。

「よし、焦らずに主機関の出力を落としていけ。航法士、中央制御玉の処理能力を敵船と近接物体の解析に集中してくれ。」

「それでは船内の維持管理に支障が出ますが・・・」

「多数の船の方が囮で、儀装した暗殺兵器が接近してくる事もありえる。近接物体の実質を見極め、疑いあらば即時破壊せよ!」

「解りました!」

 扉が開き、白き神が到着すると好加速の神が報告を始めた。

「”緑の星”が事前通告と異なる対応をしております。当船には特殊な防御結界装置が搭載されていますが、あれだけの軍船から集中砲火を浴びれば、撃沈されます。また、航路の障害物量が規定を超えており、不足の事体に繋がる恐れも。」

「船長、了解した。おそらく予定外の軍船が多数いるのは、我々への恫喝であろう。気を取られて事故を起せば良いとの思惑も感じられる。船からの攻撃は考えずに、衛星までの航路確立に全力を上げてくれ。」

「解りました。」

「まあ私を倒したいなら、衛星に入ってからの方が簡単だろうしな。それより、”好加速の神”の恐ろしさは軍が一番解っているだろうに。こんな事を指示されて、さぞや迷惑に思っているだろうよ。」

「そうですな。」

 船長も笑顔となり、冷静さを取り戻した様だ。一目で事体を読み取り、冷静に指示を下す白き神の姿は、立派だった。そしてその姿勢は船長を始めとした艦橋の神々にも浸透したようだ。先程までとはがらりと雰囲気が変わり、まるで攻め手のようであった。

 もともと尻尾を巻いて逃げる図式を狙っていた為か、白き船が直進を続けると眼前の軍船が逆に逃げ惑う事になった。

 満足げな好加速の神に、白き神がにやりと笑って次の指示を伝える。

「このまま衛星に入ってしまっては、軍も立場がなかろう。出迎えご苦労であったと通信を送ってくれ。」

「白き神も、意外と意地が悪いですな。」

「そんな事はないぞ。」としらっと言う白き神に、艦橋の神々は笑いを我慢するので大変だった。

  船長から通信分が送られると簡潔な返礼があり、同時に艦船が散開を始めた。

「ほら、軍もこんな事は早く止めてしまいたかったらしい。物凄い速度で散っていくぞ。」と船長。

 丁度そこへ、衛星より港の案内が入る。事前の案内通り、1番港へ入れとの指示だった。

「”緑の輝き”1番港へ向え。微速前進。」

「微速前進、了解。」

 船は一段と速度を落とし、衛星に近づいていく。”緑の輝き”は”蒼き輝き”と基本設計が同じ姉妹都市であった。しかし軍の拠点を最下層に置いていた為、衛星下部には軍用の船舶出入り口がいくつか開き、武装に関係するであろう凹凸も多数みられた。

「相変わらず凶凶しい外観ですな。これだけの武装で、一体何から都市を守ろうと言うのか。ここ1万年で、神々を襲う異星人の宇宙船など一度も来ていないのに。」

 そう言った船長自身、この武装が何に対してのものか解ってはいた。

 解ってはいたが、白き神の手前言う事がはばかられた。

 衛星に気を取られていたアムは、無意識にその問いに答えていた。

「そうですね。こんな無粋な物より、下層は海と砂浜が一番だと思いますよ。」

 艦橋の乗組員が一斉にアムを見る。次の瞬間皆で笑っていた。

 恥ずかしそうにするアムに、白き神が語り掛ける。

「アムよ、皆はアムの意見を嘲笑したのではないぞ。その通りだと心から同意したから笑うのだ。そして、そのような考えがすっと出てくる健全な精神を私は羨ましく思う。」

  船長が同意する。

「白き神の言う通りだ。神々ならもっと人工的な発想になる。まだ自然と知性を両立している若き種族ならでは、だよ。微笑ましくも、羨ましくも思える。」

 人類を羨ましいと言う神々に始めて直面したアムは、どう答えていいか解らなかった。


  ”緑の輝き”1番港に到着した”白き船”は、機械的な桟橋に無重力のまま係留され機関停止した。宇宙服を着た整備員が気密通路接続を外から検査し、手振りで管制室に合図を送ると、通路への大気充填が始まった。

 船の出入り口で待っていた白き神とアムの一行は皆宇宙服を着ていた。”不慮の事故”を防ぐ為である。居住区画での減圧や有害大気など、露骨な暗殺は無いだろうが、気密通路が突然外れるような犯行を断定できない事故は起して来ると見ていた。

「大気圧に達しましたが、宇宙服はそのままで行きましょう。では。」

 オンデ神の合図で一行は歩き出す。

 最後尾をジョイジ神と並んで歩いていたアムは、周囲を警戒しつつも港の機能美に感嘆していた。海水も大気も無く、最先端の機械的な港で、”蒼き輝き”とはまるで設計思想が違っていた。”蒼き輝き”の港は、宇宙船の整備や港の保守をする者にとって最良であろう重力と大気があったが、ここには無く、全てが効率優先だった。”蒼き輝き”港の海も船体を微細機械で洗浄する機能を持っているが、景観を優先した結果に機能を付加したともの。人間味はあるが、ここの方が技術者としてより惹かれるように思えた。

 しばらく歩くと球技ができるくらいの大きな部屋についた。惑星外への物流を一時保管する巨大な倉庫のようだった。

 護衛神を従えた黒衣を着た神が、白き神に対し礼を取る。

「皆、聞こえるか?出迎えに来た神を始め、多くの作業者が制服で作業を行っている。大気を抜かれる”事故”は起きないと判断し、宇宙服の気密を解く事を許可する。」

「了解。」「ぷは~」

 白き神、好加速の神、護衛の2神、アムは次々と宇宙服の頭部気密筒をはずしていく。エンカンがいれば何か文句も言ったろうが、この一行には同行していない。別行動を取るらしい。

 微笑をたたえて静かに待った黒衣の神は、皆が顔を出したところで話しかけてきた。黒派が好む全身を黒い衣服で固めた成りをしている。

 一番外側の外套が足首近くまで有り、低重力区画へ行くと難儀しそうだった。

 外見は中肉中背で特に特徴は無く、美男ではあったが壮年の貫禄を湛えていた。

「白き神、ご多忙のなか”緑の輝き”にお寄りいただきありがとうございます、この衛星を任されている凍てる夜の神、と申します。当地に滞在いただく1週間の間、お世話いたしますので。何かありましたら、いつでもお呼び下さい。」

 オンデ神が右眉を上げて話に割り込む。

「我々の滞在予定は2週間だが。」

「申し訳ありません。警備の都合から、1週間しか滞在していただく事ができなくなりました。衛星は何かと危険ですのでご了承を。」

 微少のまま、深深と礼を取る凍てる夜の神。上位神の訪問に際して、その意志を汲まないのは大変失礼なのだが、なんら気にする様子もなく取り付くしまもなかった。

「では皆様、まいりましょう。」

 凍てる夜の神に即され、歩き始める一行。丁度その時、倉庫の外れで10名程の人類に黒衣の下級神が話をしているのが聞こえてきた。

「予定数量に達していない。本日から休憩は一切無しで期日を必達せよ。」

「しかし、1ヶ月も休憩日が無いなかで休憩時間まで仕事に回すと、事故を起こす可能性が高くなります。再考いただけませんでしょうか。」

「お前達は言われた通りにすれば良いのだ。そして事故は一切許されない。」

「・・・判りました。皆、始めるぞ」「はい」

  ”緑の星”の基本は上意下達であり、下層の効率向上は上層で消費される。

 さらに人類はこの地で長らく使い捨ての道具だった為、以前程では無いにしても、消耗品と見る神がまだ多い。アムは、港でこの衛星に魅力を感じてしまった自らの浅はかさに歯噛みした。

「こちらの部屋にお入り下さい。滞在中の諸注意を説明させていただきます。」

 部屋に入ると、そこは木製の調度品が並ぶ上級神用の応接室であった。

  神々に続いてアムも席に座ろうとすると、凍てつく夜の神にきつく睨まれた。

 着て早々波風立てる必要も無いと、座るのを止めて後ろに立つ。

 神々を見渡してから、話しはじめる凍てつく夜の神。

「滞在期間が短くなったのに合わせてこちらで作成させていただいた予定はこうです。」

 目の前に日程表が表示される。

「今晩は、よろしければ晩餐に皆様をご招待します。2日目は天の層におこしいただきますが、白き神のみでお願いします。なお、黒派の威信に賭けて、天の層で問題は生じさせませんのでご了承ください。2日目は軍の施設、3日目は軍需工場を見学いただきます。護衛神は同行可能ですが、人類は遠慮いただき

たい。」

 白き神は日程表から凍てつく夜の神に目線を移して言う。

「それは了承できない。天の層は解る。だがそれ以外の全ての場所にはこの書生を連れて行く。」

 しばらく上位神同士の睨み合いが続く。しかし格上の白き神にかなう訳も無く、凍てつく夜の神は折れ、目線を日程表に戻しながら答える。

「わかりました。書生の仕事を上級神に行わせる訳にはいかないでしょうからな。4日目は終日打ち合わせ、5日目と6日目は市内観光、7日目朝に地上へ降りていただきます。次に詳細ですが・・・」

 アムは、白き神が自らの同行を強く主張してくれた事が嬉しかった。しかし、短縮日程の上に全ての場所に連れて行くと言われてしまった事で、終日自由に使える日は1日だけになった。衛星にいる”組織”の者に果たして会えるだろうか?もし黒派に察知されたら、白き神に迷惑をかけてしまうのは必定。

 予め決めておいた方法のうち、日時と状況から一番したくはなかった方法を実行せざるを得なかった。

「はぁ」と、小さな声で溜息を吐いたとたん、ぎろりと凍てつく夜の神に睨まれる。慌てて直立不動に戻ると、神は話に戻った。

「・・・これが、滞在中の日程と諸注意です。星系各地にいる白派の無分別な行動により、黒派と白派の対立は深まり緊張状態に入っております。予定外の行動には安全を保証する事ができません。ご注意を。」

 その瞬間、オンデ神とジョイジ神の表情が変わったが、白き神に遠慮してか何も言わなかった。

「全ての説明は終りました。ここから宿舎へはこの下級神がご案内いたします。では、晩餐会でお会いしましょう。」

 丁寧な礼をした後、黒派の神と護衛達は退出していく。

 ジョイジは多少寛ぎながら白き神に話しかける。

「いや~、黒派の上級神があそこまで露骨に白派をけなすとは。余程各地の情勢に頭来てるんですね。」

「そうだな。報告では、黒派からの挑発が日増しに増えているとの事だ。自らの思い通りにならない事にいらついているのだろうな。」

 そう言うと、白き神は肩を上下させる。

「これから一体何が起こるか。事態を沈静化できるかどうかは、この旅にかかっているのかもしれませんな。」

 オンデ神が眉間に揉みながら独り言のように呟くと、その場はしんと静かになった。しばらく後、部屋の扉が開き、若い黒服の神が入ってきた。

 服が質素でいかにも下級神といった外観だが、黒派である事に誇りを感じているのか、胸を張っていかにも自信家といった風情だった。白き神の前に来ると、深々と礼をしてから名を名乗る。

「始めまして、私はヨラン神と申します。衛星都市”緑の輝き”で、案内役を仰せつかっています。どうぞよろしくお願いします。」

「こちらこそよろしく頼む。」白き神が会釈を返す。

「では、宿舎にご案内いたします。」

 オンデ神が、片手を上げて会話に入る。

「ちょっと待っていただけますかな?白き神の乗機を表に回したいので、了解いただきたい。自動で船から誘導可能です。」

 首を傾げてヨラン神が答える。

「白き神の訪問予定先では屋外に護衛神を立たせていますし、移動中もこちらで用意した乗機に常に護衛機が同行します。特にご用意いただく必要はありませんが?」

「訪問先で必要な器材もあるし、上級神ともなると乗機にはこだわりがあります。我が侭を言って申し訳ないのですが。」

 ヨラン神がなるほどと肯く。

「解りました。それではしょうがないですな。船からの経路を転送しますので端末をお見せ下さい。」

「こちらにお願いします。」

 オンデ神の差し出した小型端末に、自らの情報端末を近づけて画面を操作するヨラン神。

「これで、この端末に経路が入力されました。白き神の乗機に転送ください。」

「ありがとうございます。えっと・・・こうか。今荷物室から出たので、もうじき表に到着します。」

 オンデ神に肯くと立ち上がるヨラン神。

「では、表へ向いましょう。」

 立ち上がる一行。

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

誤字ご指摘/感想は読ませていただきます。

お返事はしませんが、ご容赦を。

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