4)成人4
10年前に書いた初作品、続きを投稿します。
衛星都市”蒼き輝き”での生活。
楽しい時間はあっと言う間に過ぎていった。ホエンも寝不足と乾燥はお肌に悪いと、別れを告げ海に戻っていった。
艀には自動運転機能があったので、見送るとのイリンの申し出は断り、艀で一人戻る事にした。
美しい夕焼けの中、すこし肌寒さを感じながら海上を飛翔するアム。
島から離れるに従って切なさがつのる。部屋に戻ったら通信文を書こうと思う。
浜辺についた頃には、すっかり暗くなっていた。買い物はあきらめるしかなさそうだ。
ようやく部屋に戻り、寝支度を整えてから今日の一日を振り返ってまた寂しくなると、ふと通信文の事が思い出された。衛星都市についてからなかなか目を通す余裕が無かったが、誰かから届いているかもしれない。
寝台から体を起こすと、お土産にもらった果実酒を開けて飲みながら情報板を起動する。この部屋には立体表示機もあったが、どうにも落着かない気がしてアムは使わなかった。
「お、何通か届いているな。」
蒼き星の仲間から何通か通信文が届いていた。イフからの通信文をみつけ、嬉しくなるアム。寂しさを引きずっていたアムは、酔いにまかせて情熱的な文を書き上げる。推敲する事も無く送信してしまうと、そのまま倒れるように寝てしまった。
翌朝、自分の送ってしまった恥ずかしい文書を思い出し、悶えまくるアムだった。
アンナ神からの詳細かつ具体的な教育も順調に進み、衛星都市”蒼き輝き”での生活も慣れた頃。
天の層、白き神の事務所にある会議室でふうと溜息をはくアム。
「今日も充実した一日でした。明日から出立準備の大詰め、教育は最終日。
ここまで長時間にわたり、丁寧かつ力の入った教育をしていただいたアンナ神には、感謝していますよ。」
壁際で飲み物を用意していたアンナ神が首だけで振り向く。
「嬉しい事を言うわね。まもなく教育時間も終るから、果実酒でもやらない?」
「ぜひお願いします。アンナ神。」
「そんな他人行儀な。私達だけでいるときは丁寧語は無しよ、アム。上司も戻ってくるのは明日。教育終了記念、いいでしょ?」
「あ、そうです・・・そうだね。飲みましょう。アンナ。」
笑顔で答えるアムに、炭酸で割った果実酒を二つ持ってくるアンナ神。
「ありがとう。あ、美味しい。これほんとにお酒入ってるの?」
「そうよ。これは白き神の友人、ホエイさんが贈ってくれた自家製の果実酒だそうよ。」
「そうですか。あの島の果物なら美味しいお酒ができそうですね。」
しばし黙り込むと、くすりと笑いながらアンナ神が続ける。」
「やはりホエイの島に行ったのね。1日中、暗くなるまで浜辺で昼寝していた日があったけど、ホエイお得意の情報操作だったのね。」
「やはり、行き先は調べていましたか。保安上の理由でしょうから文句も無いけれど。」
「ごめんなさいね。不足の事体が起きたら救出に向う意図もあったのだけれど。なんにせよ、敵に操作されたら危なかったわ。至急改良しなくちゃ。」
あれ?と思ううちに、床が傾きはじめた。とうとう床に寄りかかってしまう。
「大変、衛星都市に異変が?え、何故アンナは床に立てる・・・あ”。」
「アム、貴方が床に寝転んでるのよ。風邪をひくから、こっちにきなさい。」
アンナ神に肩を借りて隣室の寝台に横たわるアム。
「大丈夫?」心配そうに覗き込むアンナ神。
「な、なんとか・・・あれ、体が熱い。ろ、ろれつが~」
「飲みすぎたのかしら?それじゃ、最後の教育を済ませるわね。白き神にも内緒の、秘密の教育を、ね。」
「え、いったいそれは・・・」
「神と人は進化の歴史も体の内部構造も大きく異なるのに、生殖器の形状はそっくりなのよ。」
「ま、まさか・・・」
「貴方は、人類の女性と夜を過ごした事はあるかしら?でも、女神とはないわよね。貴方には、神の本質を理解してもらう為に、全て経験してもらった方がいいと思うの。」
「え、あぁ!脱がさないで~」
「私の事。嫌い?」
なんだかアンナ神が妖艶で魅力的に見えた。お酒のせいか?
「そんな事はない、決して。でも。」
「でもじゃないの。人類の権利を尊重するからには、貴方に拒否権を与えなきゃ、と思ってたの。でも、でもね。かわいすぎるの、貴方。もうがまんできない!」
「あ~~~~~っ」
翌日昼頃。ようやく起き上がる事ができた。体中が悲鳴を上げ、手足が思うように動かない。今日は買い物の付き合いを頼まれており、街にでなくてはいけない。気力で寝台をおり、這うようにして洗面台にたどりつく。鏡の中の自分は、眼にクマが出来たなんとも疲れた顔をしている。
「アンナ、激しすぎる・・・」
途中から記憶が無いが、明け方まで戯れていただろうか。神の欲求がいかに激しいか、身を持って知ってしまった気がする。いや、あれはアンナ神の個性かもしれない。神々全てがああなら、人類はたまったものではない。まあ好きな女神だったから、悔いはないけれど。
顔を洗い着替えが済んだ頃、来客を知らせる呼び鈴が聞こえた。
「もうきたのか・・・。開いてます、どうぞ入ってください!」
「おはよう~」
扉から顔を出したのは、アンナ神だった。満面の笑みには、疲れなどかけらもなかった。逆に満ち足りた顔をしている。神は、人類の生気を吸い取って生きてるのではないか?などと一瞬疑ったりもしたが、首を振ってそんな考えを捨てる。
「元気ですね。自分はこの、通りです。買い物・・・いかないとだめ?」
「だめ。」
「だめか・・・」
肩を落とすアムを背中から押して外に連れ出すアンナ神。
衛星都市一番の商店街を、あちらこちらと歩き回るアム達。膨大な荷物も配達されるのがアムには救いだったが、目的の店舗数が半端ではない。
途中自分用の服も買ったが、ほとんどは同行の必要もなさそうだった。
夕方ようやく買い物は終了し、夕食を食べてから帰る事になった。
下級神に人気と言われる簡素な石造りの食堂に入り、ようやく一息つく。
丘の突端に建っているせいか、眼下には美しい夜景が広がっていた。
狭かったが、個室がとれたのだった。
「お疲れ様。」
アンナ神がねぎらいの言葉をアムにかける。
「お疲れ様でした。窓際の席が取れて良かったですね。あ、いつ給仕が来るかわからないので敬語でいきます。」
「判ってるわ。」
眼下に広がる商店街の明かりは様々な色に輝き、美しかった。しばらく沈黙が続いたが、それも悪くは無かった。
やがて人の給仕が注文を取りに来た。情報板で済みそうな気もするが、わざわざ給仕が来るのが上級神っぽくて良いのだそうだ。神も、若いうちは意外と人間臭い。そんな事をぼんやり考えていると、アンナ神がアムの分も注文を済ませてしまった。給仕は美しく凛々しいアンナ神に心を奪われた様で、心ここにあらずといった体で出ていった。
「私にも注文させて下さいよ、アンナ神。」
弟扱いかと拗ねたふりをするアムにアンナ神が答える。
「ここは、”緑の星”から派遣されている黒派の神も来るところ。不快な白派の文化のなかで、人類をこき使えるのが受けているみたいね。そんなわけで、神と人が共に食事をする時は、下僕に同じ食事を取る事を許しているといった姿勢でないとまずいのよ。」
「なるほど。たとえ誤解でも、神と人が恋人同士のようだったと、黒派の耳に入れたくは無いですね。」
そんなアムの言葉に苦い顔をしながらアンナ神は溜息をはき、小さな声で答える。
「誤解ね。私の気持ちも知らないで。鈍い人。」
「え?何か言いましたか?」
「いえ、その通りといったのよ。そして、それは、これからアムが旅する星々でも気をつけなければいけない事。人類はもう奴隷では無いし、卑屈になる必要は無いの。でも、力をつけるまでは、出来る限り爪を隠している事が望ましい。だからここで食事をする間は、”緑の星”にいるつもりで私に接して。」
席を立って深々と礼をするアム。
「承りました、アンナ神様。なんなりとお申しつけ下さい。」
丁度そこで給仕が入ってきた。注文した食事を机に置くと、礼をしてから出て行く。ちらっとアムを見てからうなずいて、扉を閉める。
「臣下の礼をとる自分の姿を見て、何故美しい女神と人が共にこの部屋にいるのか。納得したみたいだね、給仕は。」
「そのようね。では、冷めないうちにいただきましょう。」
神々と食事を取る際の注意事項や礼儀を頭におきつつも、楽しく歓談するアム。
楽しい時間も終り、天の層に帰ってきたアンナ神とアム。
今晩も足のふらつくアムを支えるようにして寝台に寝かすアンナ神。
「お酒弱いのに、無理するから。」
「だって、まもなく自分は出発しなきゃいけない。当分会えなくなるアンナのお酌、空にできなきゃ人類の名折れ~っく。」
とたんに表情を崩すアンナ神。
「も~う可愛い~の。がまんできない!」
「え、あ、の」
「今日だって恋人同士の休日って設定を心に秘めてでかけたのに、アムってばぜんぜん気付いてくれなくて。」
「あ、だめ、あれ~~~」
「いきま~す」




