日の出
「アデーレさん、そちらの準備はどうですか?」
「万全だ。いつでもやれる」
「それは良かったです。今のところ問題は無いので、このままなら予定通りになるかと」
「分かった…………なぁ、陽花、一つ聞いてもいいか?」
「はい」
「イタリアの雑魚……あいつは何者なんだ?アタシは鈍いから今まで気づいてなかったが、陽花は鋭いし、気づいていただろ?あいつがただの【賢者】じゃないってこと」
「もちろん。まぁただの【賢者】が【魔女】を欺くレベルの幻惑魔法を使えたらおかしいですし…………今はまだこちらに害意を向けていないので泳がせていますが、然るべき時に対処します」
「そうか。アタシはそういう駆け引きとかあんまり得意じゃないし、とりあえず陽花に任せるわ」
「はい、任されました」
「陽花、おかしいのはお前もだよ。アタシが知ってる陽花は、お前じゃない。」
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「総司令官……………絶対俺じゃ務まらないってのに……」
俺、安田 京史は少し前までは、ただの管理官だった。
しかし、三日前に出会ったとある高貴なお方から、[帝国の目覚め作戦]の総司令官に任命されてしまったのだ。
管理官の仕事は予算のやりくりや不正の取り締まりなど、まぁ軍事とは程遠いものだ。なので俺は、全く軍の指揮などできない。
「お飾りだから大丈夫、ドヤ顔でふんぞり返っていればいいんですよ」とか言われたが、それにしたって緊張するものはする。実戦はおろか、訓練もしたことないし。
もし銃弾が飛んで来たらどうするんだろうか。魔法で弾けって?瞬時にそんなすごい魔法を使えるのは【魔女】だけなんだよ!!
「あぁ………胃が痛い」
総司令官といったって、今の日本に軍はいないじゃないか!と昨日までは俺も思っていたが、なんとどこからともなくあの高貴なお方が連れて来たのだ。
一丁前に10000人の軍隊を。
司令官といっても多くて数十人を指揮するくらいだろうと思っていた俺は、その軍隊を見てすぐさま辞退しようとしたが、三条公爵に阻止されてしまった。
何が「陛下が任命して下さったというのに、それに逆らうの?」だよ、お前つい数日前まで「私が新たな皇帝になる」とか野心満々なこと言ってただろ!いつの間に陛下の忠犬になってるんだよ!!
「クソッ………あぁ、心配になってきたな」
決行まで少し時間があることだし、陛下手書きの作戦の手順書でも見ておこう。なんか気難しい顔で書類とか見てた方が司令官っぽいだろ?
「[帝国の目覚め作戦]…………」
[帝国の目覚め作戦]。陛下が公爵やその私兵たちとともに旧帝国中央テレビ局ビルに侵入し、設備を復旧させて生放送で全国に陛下の帰還を知らせ、各地での決起を促すというものだ。
俺に与えられた役目は、何故かやたらと厳しいビル周辺の警備をはがすために、軍隊を使ってあちこちで暴動を起こすこと。まぁ、陽動というやつだ。
と言ってもアメリカの警備隊が来た時には殺していいことになっているし、実質小さな戦争みたいなものかもしれない。
「はぁ……こちとらまともに戦ったことのない文官だってのに……」
わざわざこんなことをせずとも、俺に会いに来た時やアメリカの行政長官を殺した時と同じように陛下が潜入すればいいじゃないかと思うかもしれないが、もうそれは出来ないらしい。
というのも、あの隠密能力はイタリアの【魔女】、ビアンカ=ルッジェーロのものらしく、ビアンカはフランス制圧のためにヨーロッパで色々と布石をしているため、今は呼べないらしい。
俺も詳しくは知らされていないが、恐らくこの[帝国の目覚め作戦]も陽動なのだろう。わざわざ行政長官を殺してアメリカを警戒態勢にさせた上で、全国に【日輪の魔女】復活の通達を行うのだから。陛下の真の目的は、別のところにある。
三条公爵は陛下たちの目的が【黒鷲の魔女】の国、ドイツの奪還に違いないと言っていた。俺もその筋は捨てきれないと思う。
アメリカの注意をこちらに引き付けているうちにドイツを奪還し、その混乱に乗じて今度は逆に太平洋諸島や朝鮮を狙うとか……………陛下が思い描いているのは、そういうシナリオなんじゃないだろうか?
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「ついに、この時がやってきました。
もちろん、緊張はしていますが…………必ず成功させてみせます。
私はあなたにはなれません。あなたみたいに、人心を掌握することはできません。
ですが、私には私なりのやり方があります。
安心して見守っていて下さい。そして、決して見逃してはいけません。
一度は潰えたあなたの夢が………再び日の目を見る瞬間を。
この帝国が、世界を手に入れる瞬間を ———————




