5.集合
翌日のことであった。アサゴの5人の白魔法使いは王宮で横並びになり、王の言葉を待っていた。個々の呼び出しは普通のことであるが、5人そろっての招聘は珍しいものであった。
「さてー」ガンセン王はいつものような張りのある声で始めた。
「君たちが力を得てそう短くはない。そろそろ難易度のあるミッションを課してもよいと思ってな」と言って座りなおす。
「つまりだ。君たちの更なる力の研究およびイカゴの偵察。これを考えている。更なる力というのは知っての通り、白魔法のことで、まだまだ判明していないことばかりだ。国内に残る遺跡や資料をあたって、新たな発見を試みるわけだな。そしてイカゴの偵察だが、これは今一番余が危惧しているもの。黒魔法の術者が潜んでいる可能性がある以上は、その実状を把握しておく必要がある。それぞれにそれぞれの役割を与えるので、できる限りのことをしてほしい。まず、サニーワイドだが、いつもの通りここで待機及び連絡を任せる。兵はとどまらせておくので、城の守りは万全だろう。白魔法研究にはニラードとスニークに行ってもらう。主に国内の情報収集をニラード、郊外―北方にかけてをスニークにやってもらう。で、最後だがこれが最もリスクが高いと考えられる、イカゴ遠征だ。ユハとヲサイヤの二人を派遣する。先に言っておくが、奥地までは踏み込むな。森の入り口を少しかぎ分ける程度で良い。くれぐれも、身の危険は回避してくれ。まだ死ぬには二人とも早すぎる」
「逐一森の様子をソニーワイドに報告する、といった手順でよいか」ヲサイヤは話を聞けないとはいえ、他の魔法使いが同席している場合にのみ、その内容を伝えることが可能なため、会話が成立するのだ。
「そうだ、その情報を伝え聞いたものを、ここに記録する。分かったら、各々支度が整い次第、早速向かってほしい。驥足に期待しているぞ」
ヲサイヤ、ニラードは一度宿舎に戻り、準備をする手筈であった。サニーワイドは記録係に部屋に入るよう促しに行った。スニークは既に城を出ており、次の目的地に向かっていった。王は窓から外を見て、町を睥睨していた。ユハはそこに一人考え込むような様子で、たたずんでいた。その肩に優しく、ソランの手が乗った。「頑張ってね。無理しないで。帰りを待ってるわ」彼は頷いているかのごとく、軽く首を縦に振ったように見えたが、歩き去る際の動作の一つだったのかもしれなかった。