22.入学
私は朝目を開けると制服姿のレイがこちらを見て優しく微笑んでいた。
髪色は違うが、すぐに分かった。
それに私が前プレゼントした髪紐を使って髪を結んでいた。
「おはよう、愛しいティナ」
「……おはよう、レイ」
レイは私の額にキスをした。
そのおかげで私は完全に目が覚めるどころか、飛び起きた。
レイには一度部屋から出てもらい、代わりにエミリーが入ってくる。
私は制服を着て髪を結ってもらい、支度が整ったので食事のためにレイとダイニングルームへ向かった。
近頃、レイは人間界にある様々なものにより一層興味を持ち始めている。
食事も例外ではない。
私と初めて街に行ったときに食べた『串に刺さった肉』がきっかけで食事に興味を持ち時始めたのだ。
お父様はせっかくだから一緒に食事を、と誘いそれ以来同席している。
ダイニングルームに入り、軽く挨拶をしてから席に着いた。
「いよいよティナも学園に入学なのか…頑張りなさい」
「困ったことがあったら言うのよ?」
「はい! お父様、お母様ありがとうございます」
私は前世を思い出してからなぜ私が悪役令嬢なのかと思う時もあった。
でも今はなぜ悪役令嬢なのかというよりも、ここに生まれてこれてよかったと思う。
朝食を食べ終え、リル達のもとに向かった。
リルは風魔法が使えるようになり、私が少し大きな声を出して名前を呼べばすぐにでも傍に来ることができる。
『ティナ、もう学校っていうところに行くの?』
「えぇ、行ってくるわ」
『行ってらっしゃい!』
リル、ラルフ、リリーは尻尾を横に振りながら門のところまで見送ってくれた。
私たちは移動に転移を使っていたが、それでは目立ってしまうので登下校は馬車で通うことになったのだ。
私とレイは馬車に乗り込み、すぐに動き出した。
窓から見えるリル達に向かって手を振り、見えなくなったところで前を向いた。
目の前にいるはずのレイがいなかった。
不意に、私の手を誰かが握ったので隣を見るとレイが私の隣に座っていた。
「レイ、どうして私の隣に座っているの?」
「……ダメか?」
レイは悲しそうな顔をして見てくる。
私がこの顔に弱いことを知ってて絶対にやっている。
「うっ……ダメじゃないけど……」
「ならばこのままでいい。……それに学園にいる間、近くにいるとはいえ手をつないだりできないではないか」
レイは後半少し照れながら窓の外を見て言った。
私はそんな風に思ってくれたことに嬉しくなり、レイの手を握り返した。
そんなことをしている間に学園の入り口に着いた。歩いて登校してくる者もいれば、馬車で来る者もいる。
馬車で来る者は屋敷が学園から離れてる、または上級貴族の人たちだ。
私たちの場合はどちらにも当てはまる。
私は窓を覗き、周囲を見た。
私の視界に移ったのは、桃色の髪をした一人の少女だった。
ちょうどその時、レイは扉を開けて出ようとしていたところ慌てて止めた。
「……どうした? ティナ」
「ヒロインがすぐそこにいるの。今出たら玄関で会ってしまうわ……それに………」
たしかここで殿下とヒロインの出会いイベントがあったはずだ。
緊張して前を見ていなかったヒロインが殿下にぶつかってしまう、確かそういうシナリオだったはずだ。
しばらくヒロインを目で追った。
シナリオ通りのイベントが起こり、殿下と話した後のヒロインはいかにも『恋に落ちました』という顔をしていた。
(やはりね………ん?)
レイの方を見ると彼はとても苦々しい顔をしていた。
「……どうしたの? レイ」
「………俺あの人、嫌いだ」
「? そう……でも逆に好きと言われたら困るわ。とりあえず、行きましょう!」
珍しくレイが人に悪意を抱いていることに少し驚きながらも、そろそろ行かなければならなかったので馬車を降り、学園に入っていった。
入学式自体はそんな時間はかからず終わった。
式が終わり、私たちは自分の教室と先生を教えられた。
私のクラスの先生はやはり、リアム先生だった。
だが問題だったのはクラスでも先生でもなく、生徒だった。
私のクラスはヒロインと殿下、それと攻略対象の中の一人が同じクラスだった。
もちろんレイも同じクラスである。
「………大丈夫か?」
「えぇ……」
私が不安そうにしてたためか、レイが声をかけてくれた。
それだけでも私は安心する。
それに教室内をよく見れば何人かの生徒は私の知っている方たちだった。
教室の座席は、自由に座っていいとのことだったので私はレイの隣に座った。
この日は授業の説明等して終わったので私たちはすぐに学園を出て馬車に乗り、家に帰った。




