お父さんが会っちゃダメなんて言わないようにー七夕話ー<婚約破棄・・・しますか?しませんか? ノーラ&カイ>
七夕話。ノーラとカイの場合。
「七夕・・・」
そういえば今日は七夕だった。この世界は日本の乙女ゲーと似ているだから、クリスマスやバレンタインなんてイベントはあるのよね。名前は違ったりしてるけど。七夕は無かったなあ。
「それ、誰?」
「っ!ビックリしたわ。いつ来てたの?カイ。」
私の方が先に授業が終わっていたので、お昼を一緒に食べるカイを中庭で待っていたのだ。
「今。タナバタって誰?」
グッと顔を近づけてくるカイに、ちょっと後ずさりしながら返す。
「えっと、人じゃないのよ。遠い国のおとぎ話みたいな物の題名?」
「どんな話?僕、ノーラのしてくれる話、好き。」
先程の表情から一転、カイはわくわくした顔で私に物語をねだる。
「ええと、ちょっとうろ覚えなんだけれど。」
私の日本の記憶も所々曖昧で、七夕に至ってはほんとに簡単な事しか思い出せない。
「『働き者の織姫という女性がいました。その女性も結婚を考える年になり、織姫のお父さんは織姫と同じくらい働き者の男性、彦星を会わせました。二人はお互い、とても好きになりました。ところが、二人はお互いに夢中になるあまり、仕事をしなくなってしまいました。怒った織姫のお父さんは二人を引き離してしまいます。天の川という大きな川に阻まれ、二人は会うことができません。泣いてばかりの織姫を可哀想に思ったお父さんは一年に一度だけ、織姫と彦星が会うのを許してくれました。』」
確か、こんな話だったはず。
「一年に一度・・・酷い。」
「うーん、確かにね。でも、働かなかった二人も悪いとは思うのよ。」
「だって、結婚を薦めたのお父さんでしょ?」
「うん。そうね。ただ、働き者だった二人が働かなくなっちゃったのは、お父さんも予測がつかなかったんじゃないかしら?」
カイの不満げな顔が直らない。織姫と彦星のことを考えてあげてるんだろうか、優しいな。
「ノーラは一年に一度なんて嫌だよね?」
「え?ああ、織姫と彦星を私とカイに当てはめちゃったの?」
「うん。」
「そうね、一年に一度なんて嫌よ。もっと会いたいわ。」
「せっかく結婚するんだもん、毎日会えなきゃ嫌だ。」
「そうね、同じ家で暮らすんですもの、毎日会えるわ。」
「それには、何があってもノーラのお父さんが会っちゃダメなんて言わないようにしなきゃ。」
ぐっとこぶしを握るカイ。そんなに気合を入れなくても、うちの父はカイと私の縁談をとても喜んでいるから、何も心配することはないのだけど。
「じゃあ、私も、カイのお父様に良い嫁だと思ってもらえるように、頑張らなくちゃ。」
「僕の父さん?」
「そうよ。夫婦になるんだもの、二人で努力しなければいけないわ。」
「そっか!頑張ろうね!ノーラ!!」
そう言うと、カイは私をぎゅっと抱きしめた。
「ただいま帰りました・・・あら?お父様?」
「お帰り、ノーラ。」
「どうなさったの?とても顔色が悪いけれど。」
「ああ。なぜか急に、お昼頃かな?寒気がしてね。それ以来まだ治まらないんだよ。」
ということは、5時間くらい続いてるということね。大丈夫なのかしら。
「横になった方がいいわ。明日、カイがうちに来るの、日を変えましょうか?」
「いや、大丈夫さ。明日を逃すと随分先になってしまうからね。だから大事を取って、今日は仕事を早退させてもらったんだ。私は大切な娘のノーラをよろしく頼むと、カイ君に直に頼みたいのだよ。婚約破棄なんて、驚いたがね。ノーラに誠意を示すために婚約し直すだなんて、とても良い青年だよ。」
私は必要ないと言ったのだけれど、結局父に婚約をし直したいとカイは伝えたのよね。マリアのことも包み隠さず話して。それで父はさらにカイを気に入ったみたい。
「例え何があろうと、カイくんなら、ノーラを一番に考えてくれるだろう。私はカイ君以外、ノーラの夫になるものはいないと思っているよ。たまには喧嘩もいいけれど、二人、仲良くするんだよ。」
カイのことをべた褒めしていた父の顔色がだんだんと良くなってきている。
「お父様?ご気分はどう?だんだんと顔色が良くなってるように思うのだけれど。」
「おや?そう言えば、寒気がどこかに消え失せたね。うん、大丈夫だ。明日で全く問題ないよ。」
良かった、カイは父に気合を入れて会いに来るようだったから、駄目だったらがっかりするだろうなって思ってたの。明日が楽しみだわ。
『お父さんに会っちゃダメなんて言われないように』ではありません。『お父さんが会っちゃダメなんて言わないように』です。
・・・何をするつもりだったんですかねえ、カイは。




