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となりの拡ちゃん☆【なろうVer.】  作者: yutaka
☆ 番外編・そのあとのふたり
6/15

颯子のお願い

久しぶりの更新です。


「待ち合わせしたい」

「待ち合わせ?」


私のそんな申し出に、(ひろむ)ちゃんはなんで? って顔をする。

ここは拡ちゃんの部屋。

ベッドを背に、床に足を伸ばして座ってる拡ちゃんの足の間に向かい合って正座してる私。

ついさっきまでは、足の間で体育座りをして拡ちゃんの胸に背中をあずけてたんだけど、今はお願いのために向き合ってる。


「隣に住んでるのに?」

「隣に住んでるのに」

「…………なんで?」


しばらくの間があって、理由に思い当たらないからか拡ちゃんが聞いてくる。


「だって、まだ一度も待ち合わせデートしたことないんだよ!」


10年の片想いが実って、やっと恋人同士になった拡ちゃんと私。

私が生まれたときからお隣さんだった拡ちゃんは、一度仕事の都合で家を出たんだけど、半年ほど前に戻ってきた。

もう当分職場は動くことはないから大丈夫だって言ってた。


10年間待たせたからと、私が勝手に未練タラタラの諦めが悪かっただけなんだけど。

拡ちゃんは今までの10年間が嘘だったみたいに、私に優しくしてくれる。

もともと優しかったけど、お付きあいが始まってからそこになんともいえない甘さが加わった気がする。

付き合えたことが嬉しくて忘れちゃうけど、私達のお付きあいは両家族全員公認で結婚を前提なんだよね。


ちょっと前までの毎日が本当に嘘みたい。


拡ちゃんの仕事が忙しくて、なかなか遠くに出かけたりできないけど、たまのお休みの日はふたりで色々なところに行っている。

そんなデートはいつも拡ちゃんが私の家に迎えに来てくれて、そのまま歩きで出かけるか拡ちゃんの車で出かけるかしかしたことないから。


「待ち合わせに憧れてるの!」

「どうしても?」

「どうしても」

「ふーん」

「え? 拡ちゃんダメなの」


どうしてだか拡ちゃんが『いいよ』って言ってくれない。

なんで? そんなに引っかかること?


「そんなに承諾しかねるコトかな?」


どこの恋人同士だってやってることだと思うんだけどな……待ち合わせくらい。


「別にそういうワケじゃない」

「じゃあ、なぁに?」

「え?」

「?」


クスクスと笑ってる拡ちゃん。

なんで?


「いや……返事を渋ると、颯子(そうこ)の困った顔が見れるから」

「へ?」


それって。


「颯子の困った顔が可愛いし……そそられる」


そんなことを私の耳に囁くと、私の前髪をクシャリと撫でた。


「もう……拡ちゃんの意地悪!」


前髪を撫でる拡ちゃんの手を、両手で掴んで睨んだ。


「そうやって上目遣いで睨むなよ。煽ってんのか」


クスクス笑いながら、私の掴んでる両手をもろともせず、またクシャクシャと撫でまわす。


「ひゃあ~あ、煽ってなんかないでしょ! それに、なに? 煽るって?」

「なんだ天然か? 尚更質が悪いな。オレ以外の男にはやるなよ颯子」

「ええ!? なにが? よくわかんないよ」

「オレ以外の男と、ふたりっきりは禁止ってコト」

「え? あ……うん、わかったよ拡ちゃん」

「約束だぞ、颯子」

「じゃ、じゃあ待ち合わせでいい?」

「ああ」

「やったあ~♪」

「おっと」


がばっと拡ちゃんに抱きついた。

拡ちゃんは咄嗟に私の身体に腕を回して抱きとめてくれた。

私は拡ちゃんの首に両腕を回して、エヘヘって笑う。


「颯子」

「拡ちゃん」


お互いのオデコをコツンと合わせてウフフと笑う。


ああ……小さなころを思い出すな~

よくこうやって拡ちゃんに引っ付いてたっけ。


「ん……拡ちゃ……」


ちゅっちゅっと軽いキスを何度かされて、いつもの舌を絡める恋人同士のキスになる。


私はまだ慣れてなくてすぐクラクラしちゃうけど、それは息継ぎがうまくできないせいだけじゃないと思うんだよね。

拡ちゃんはこういうことに慣れてるから……って納得するのはちょっと辛いけど、それは拡ちゃんが年上で健康な成人男性だから仕方ないことなんだと、無理矢理納得するしかなかった。

彼女もいたし……ね。


「拡ちゃん……好き……誰よりも好き……拡ちゃんだけがずっと好き……ん…」


キスの角度が変わったときに、湧き上がってきた自分の気持ちをさらけ出してた。

だって……ずっと言いたくてでも言えなくて、自分の心の中にくすぶってた言葉だから。


「好きなの……拡ちゃん……好き」


嬉しいのに……幸せなのに……拡ちゃんに好きと言うと涙がでちゃうのはなんでなんだろう。


「わかってる……颯子」

「拡……ちゃん……」

「大丈夫だから。ちゃんと颯子の好きをオレは受けとめるから」


拡ちゃんが私の頬にそっと両手をそえると、いつの間にか涙で濡れてた私の頬を両方の親指で拭ってくれた。


「うん……」

「好きだよ……颯子」


そう言って拡ちゃんのあったかくて柔らかな唇が、私の瞼にそっと触れた。






「あと10分♪」


待ち合わせのショッピングモールの正面ロビー。

室内なのに大きな噴水があって、できた当時は話題になった。

今日はこのショッピングモールに入ってる映画館で映画を見て食事して、ちょっとブラッとする予定。

ありきたりなごくごく普通のデートだけど、私と拡ちゃんにとってはそんなデートも今までしたことがなかったからすごく楽しみだ。


約束の時間の10分前だけど、私は20分前に来ていた。

だって、拡ちゃんを待たせるわけにはいかないから。

待たせたら悪いというのもあるけど、先に拡ちゃんひとりで待たせて逆ナンなんてされたら嫌だから。

私なんてナンパなんてされたことないから大丈夫だけど、拡ちゃんはわからない。

ものすごいイケメンってわけじゃないけど、拡ちゃんはカッコイイ。

自分レンズとか贔屓めに見てもとかじゃなくて、拡ちゃんは誰が見ても好青年なのだ。

仕事が接客業だから、いつも身なりには気をつけてるからかもしれないけど。



それに昔から拡ちゃんはモテてたし。

拡ちゃんが高校生のときにしか見たことがないけど、彼女がつねにいたみたいだし。

ああーーく、暗い過去を思い出しちゃった。

拡ちゃんが知らない女の人と一緒にいるのを、どうすることもできずにただ黙って耐えていた日々。


「うぅ…」


ダメダメ! せっかくの初めての待ち合わせデートなのに、そんなマイナス思考でどうする自分!

そう、昔のことよ! 昔の!

今は晴れて、拡ちゃんと私は恋人同士なんだから!


「よし!」


「颯子」


なんてひとり盛り下がっては自分で盛り上げていると、私を呼ぶ拡ちゃんの声がした。



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