それぞれの得意なこと
「それにしても、麻田さんは本当に立ち回りがうまいですね」
「あら、あんたと変わらないわよ」
私は私の得意なことをやるのよ、とリラは言う。
「他のことはわからないけど。
男女の機微はわかるから!
あんたと一緒、得意なことをやっただけ!」
なるほど、とほくほくの焼き魚を食べながら、龍美は頷いた。
「ところで、私が得意なことって?」
「ハッタリでしょ」
とすぐさま言われる。
「あんた、どうやって雨を降らせるつもり?」
「雨は降らせませんよ。
言ったじゃないですか。
水を引いてくるんですよ」
どこから? と小器用に果物の皮を――
それ、切れるんです? と問いたくなるような石のナイフでむきながら、リラは訊いてくる。
「この世界の何処にも水がないわけじゃないじゃないですか。
水路橋とか地下水路とか作って、遠くからでも水を流してくるんですよ」
「でもうちの国には、もう何処もたいして水はありませんよ」
と神官が言う。
「だから水があるところを探して侵略すれば良いんですよ」
――危険思想!
という顔を二人がした。
「魚があるってことは、何処か水があるところから買ってきたんでしょう?
結構近くにあるのでは?」
と串にさされた、なんだかわからない長い魚を振りながら、龍美は言う。
「う、上手くその国を侵略できたとしてもですね。
そこからまた水を流すのにも他の国の土地を通らないと……」
と言う神官に、
「そこもまた侵略すれば良いのです」
と龍美は答える。
――更に危険思想!
「古代の……
この辺りの帝国の政治なんて、たぶん、何処も血なまぐさい感じじゃないですか。
心ある王様のいる国に治められた方がいいですよ」
「いや、その心ある王様はあんたを生贄にしようとしてるけど?」
「まあ、そうなんですけど」
でも、民のためになんとかしたいという悲壮な覚悟を感じた。
血に飢えた王という感じではない。
「あ、それかですね」
ようやく他の案が出そうなので、神官はホッとしたように、こちらを見た。




