伏せられていた真実
「麻田さん、雨女じゃなかったんですか?」
「うるさいわね! 異世界だからよ!」
牢の中で怒鳴り返したあと、リラは膝を抱え、溜息をつく。
「暑いわ。
汗で髪がくるくるしすぎる。化粧も落ちそうだし。帰りたいわ。
私、わかったの」
麻田さん……。
ここに来て、初めてリラが弱音を吐こうとしている。
龍美は寄り添うように、彼女を見つめた。
「イケメンがいても、靡かないと意味がないって
眞田くん、舞城くん、石井くん……。
チヤホヤされないと――
死ぬ」
リラは膝に顔をうずめた。
――それ、どんな病っ⁉︎
「ま、まあ、それはともかく、この国が雨が降らなくて困ってるのは間違いないんですよね」
龍美は立ち上がり、高い位置にある明かりとりの窓を見る。
「せっかく呼ばれたのだから、なにかお助けできることがあるといいんですが」
「なに綺麗事言ってんのよ」
リラは立ち上がり、鉄格子をつかむと、叫びはじめた。
「出してっ。
ここから出してよっ。
綺麗な服を着せてっ。
美味しいものを食べさせてっ。
あと、イケメンをはべらせてくれたら、雨を降らせるからっ。
私は聖女よっ!」
――すごいっ。
いっそ、清々しいくらいおのれの願望しか言ってない!
「あの、アニキと呼んでもいいですか?」
とおずおず言って、誰がアニキよっ、と怒られる。
二人の様子を見に来る若い神官に、龍美は、
「あの、この間のやり方では、雨が降っても、どちらが聖女かわからないと思うんですが」
そう進言してみた。
聖女がどちらなのかハッキリさせたいわけではなく。
ちょっとした時間稼ぎのつもりだった。
「そうだな。
我々もちょっと焦っていたようだ。
別の方法を考えよう、時期をずらすとか」
と神官は頷く。
その間、リラは何事か考えているようだった。
リラは見回りに来る貴族の小倅――
王宮には勤め出したばかりらしく、まずまず顔も良い男、と熱心に話すようになった。
ある日、リラは龍美に向かい、宣言した。
「安野。
聖女はあんたに譲るわ」
「えっ?」
「彼に聞いたの。
聖女は雨を降らせられたら王の妃になれるけど。
降らせられなかったら、神への生贄になるんですって」
――なんだってっ!?




