私が聖女ですっ!
木製の大きな杖を持った、神官のような年配の人が現れた。
「ここのところ雨が降らず、困っております。
雨を降らせてくれる聖女様をお呼びしたはずなのですが。何故か、二人も――」
その言葉にリラは喜ぶ。
「なんだ、雨を降らせればいいのねっ。
それなら、私が聖女よっ。
私、雨女だからっ。
ちなみに、その女は晴れ女よ!」
リラはいきなり龍美を指差し、言い出した。
「私は雨女っ。
雨を降らせることができるわっ」
わっ、とみんなが盛り上がる。
『雨を降らせることができる』という言葉は、今のこの世界ではかなりのインパクトがあるようだった。
聖女さまっ!
聖女さまだ!
と騒ぎ出す。
あの、私、帰ってもよろしいでしょうか……?
そこへ、
「神官たちよ、どうなった?」
とよく通る声が響き、凛々しい王が現れた。
立派な体躯の彼は、黒髪で長髪だ。
現代日本なら妙な感じだろうが。
ここは古代エジプトのような扮装の人ばかりなので、その髪型も違和感なく美しかった。
「やだっ、超イケメンッ!」
とリラのテンションが上がる。
そういえば、麻田リラは、あんまり学校来ないけど、来たら男子とチャラチャラしていると、まあちゃんが言ってたな、
と龍美は思い出す。
「申し訳ございません、王よ。
何故か聖女が二人も現れまして」
「この国の聖女は常に一人だ。
どちらかが偽物に違いない」
「はいっ、偽物と言えば、彼女ですっ」
とリラが両手で龍美を指し示す。
龍美は、そこはスルーし、
「はい」
と手を挙げて質問した。
「あの、何故、聖女は一人と決まっているのですか?」
神官ではなく、わざわざ王が答えてくれる。
「聖女とは王の妃となる者だ。
二人も現れて揉めた記録などない。
側女ならともかく、妃は我が国では一人だ。
間違いない」
「えっ?
聖女だったら、あなたの妻になれるのですか?
この国の妃にっ!?」
とリラのテンションが上がる。
「麻田さん、妃って言っても、なんか時代が古いですよ。
たぶん、現代で平民の方が贅沢に暮らせますよ」
「なに言ってんのよっ。
王様の奥さんよ。お姫様だわっ」
……お妃様では?
「そんなの滅多になれるもんじゃないわよっ」
リラは希少性に価値を見出す人種らしかった。
「それで、どちらが聖女なのだ?」
石造りの神殿に響く声で王が問うてくる。
「はいはいっ、私ですっ、王様っ」
とリラが飛び跳ねるように手を挙げた。




