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コロニー

9月7日付けでタイトルを変更させて頂きました。

内容等は全く変わらずに進めて参りますので、解りづらいかと思いますがこれからもご支援の程宜しくお願い致します。


それでは以下本編です。

「俺はヴィヴィアンお姉さまがオトコ側でも大丈夫です!!」

「そうです!メイもヴィヴィさまがお姉ちゃんでもお兄ちゃんでも構いません!!」


あぁ…頭がイタイ。確実に俺の言ってる男とラフィアの言ってるオトコとでは全く意味が違う。

「メイは黙ってて…あとラフィア、俺は正真正銘男だ。だから呼ぶとしたらお兄さまだ。あぁ、いや違う、そんな話はどうでも良いんだ…」

「それでは駄目だッ!…です。幾らヴィヴィアンお姉さまに頼まれても、お姉さまはお姉さまですからッ!!」

「ヴィヴィさま酷いです!メイはヴィヴィさまの味方ですのに…」


……

不毛だ…実に不毛だ。俺はもっと実りのある話をしたい。

「…わかった…もう好きなように呼べば良い…」

「本当かッ!!!!!本当にヴィヴィアンお姉さまと呼んでもいいのですかっ?!!!」

一瞬にして表情を上気させ、力の込もったこぶしがプルプルとしている。この表情を見たらもうどうでも良くなった俺は甘いんだろうな…どうもこっちに来てから自分の感情と欲望に忠実な人間が多い気がしてならないのは気の所為じゃないだろう。

俺はお前のチームメンバーくらいお前がなんとかしろという意味を込めて、先ほど刺突剣(エストック)で殺されかけていたフルグレインに目を向けた。

俺の意図を察したのであろうフルグレインが口を開いた。

このフルグレインという男もアホそうに見えて、実は周りがよく見えている。流石にチームリーダーをしているといった所だろう。きっとあのアホそうな言動も彼なりの処世術なんだろうな。


「アー…ラフィア、喜んでるトコわりぃけど、他に話す事やする事がまだまだある。それに俺たちは依頼された任務で来ている事を忘れるな。」

フルグレインの言葉にハッとしたラフィアが大慌てで俺に謝罪した。その顔は怒られている時の仔犬のようだ。


「ヴィヴィアンお姉さまっ!!さっきは俺たちを助けてくれてありがとうございます!それにお姉さまの強さも知らずに失礼な事ばっかり言いました…あの…どうか俺のこと嫌いにならないで…ください…」

「あぁラフィア、気にしなくていいよ。俺とメイの服装を見て村人だと思うのは当然だからね。むしろ逃げるように知らせてくれて感謝しているくらいだよ。そのまま俺たちを囮にする事も出来た訳だからね。だから俺は君たちを嫌いになんてならないさ。」


まあそうなっていたら逆にこいつらを囮にしていたかもしれないが。なんにしても出来るだけ友好的な人間とは良好な関係を築きたいものだ。


「ヴィヴィアンさんにそこまで言われるとオレ等も照れちまうよなー」

「そうですね。これだけ美しくて強い人に嫌いじゃないと言われるとむず痒いものがあります。」

「ヴィヴィアンお姉さまッ!!俺は一生付いて行きます!」

「ようやくヴィヴィさまの素晴らしさが理解されたようですね!メイは嬉しく思います!…ですがっ!!ヴィヴィさまはメイだけの(・・・)お姉さまですからねッ!」

「なんだと!?メイッ!お前は俺の妹だろ!言う事を聞け!!」

「なっ…!!さっきから何を勝手な事ばかり言っているんですッ!??いつメイが貴女の妹になったのですか!」


俺の懸念事項が現実味を帯びてきたな…

やっぱりこの世界は初対面の相手に対して警戒心が低すぎる。一生付いて行くとか…

この問題は俺の中で社会問題として認定されつつあった。


それにプラスしてまたヴィヴィアン教信者が増えてるじゃあないか…言っておくが俺は布教活動など一切行っていないからな。神聖皇国に目をつけられるのだけは勘弁だ。

…とまあ、現実逃避の脳内思考はこのくらいにしておこう。流石にぎゃーぎゃーと煩いメイとラフィアのやりとりも聴くに堪えなくなってきた。

俺は実りのある、そう!実りのある(・・・・・)話をする為に切り出した。


「…フルグレイン、改めて尋ねますがあなた達のパーティもあの魔物から採れる染料の素を狙って来たという事で良いですか?」

ヴィヴィアンに声を掛けられたフルグレインは僅かに緊張しながら慎重に答える。周りも空気が変わった事を感じて静かになった。


「…ああ、そうだ。オレたちのチームは街の冒険者組合(ギルド)の依頼を受けてこの森へとやって来た。でもオレたちだけじゃきっと失敗していた。それは疑いようもないしヴィヴィアンさんには命を助けられたんだ。依頼者や組合(ギルド)の信用はガタ落ちだろうがそれも命あってのモノダネだ。自分の身の丈に合わねぇ依頼を受けたオレたちがワリィ。だからヴィヴィアンさんが倒したその魔物はモチロン、ヴィヴィアンさんが持っていって貰って構わない…」


フルグレインはそう言い終えると、俺の顔色を伺うように見てきた。

ああ、フルグレインは俺が魔物の所有権の是非を問うたと思っているのか。確かにここで下手な事を言って俺の逆鱗にでも触れたらと思うと気が気でないだろう。

でも、正直俺はこの魔物の死骸をフルグレインたちにあげてもいい(・・・・・・)と思っている。

勿論、それは俺の欲しい情報が引き出せたならという話だが。なんにせよ、俺はフルグレインへと更に尋ねた。


「その魔物の所有権については話が終わってからにしましょう。此方から数点質問があるんですが良いですか?」


ヴィヴィアンが言う魔物の所有権について疑問を抱きながらも、フルグレインは首を縦に振った。勿論それ以外に選択肢は無いからだ。


「では一つ目、さっき倒した魔物ですが、力加減を間違えてバラバラにしてしまいました。それでも染料の素は採れるのでしょうか?」

「まず、赤色の染料の素になるのは魔物の体液なんだ。人間でいう所の血の様なものだからバラバラになった時点である程度は流出してしまっている。ただ本当に高価な染料になるのは、循環した体液を浄化して貯める袋の様な器官に入っている高純度の体液だから、真に貴重な素材は問題なく回収出来る筈だ。それ以外の体液はオマケに過ぎない。」


「そうですか、それは良かった。では次にあの魔物ですが、一匹だけですか?生態など詳しく分かる範囲で教えてください。」

「イヤ、あの魔物は寧ろ群れで行動している。ただ、一匹でさえ強力な魔物だから狩る時は巣から離れたはぐれ者や斥候の一匹を誘導して戦うんだ。危険過ぎて詳しい事は殆ど判っていないが、巣の中ではより上位の女王が君臨していて、一大コロニーを形成しているという噂だ。」


そうか、それは幸運だ。カブトムシやクワガタの様に個々で行動するような習性だと探し出すのも厄介極まりないと思ったが、蜂や蟻のように群体行動をしているという事なら巣の特定さえすれば、一気に集める事も容易だ。

一匹でもそこそこの染料の元は採れるらしいが、数は多いに越した事は無いからな。

此処までは想定した以上に順調。正直この情報だけでも魔物一匹やるくらいの価値はあると思うが、最後に最も大事な質問をしよう。


「ではこれで最後です。フルグレインのチームは…そのコロニーの場所を特定していますか?」


「それについては任せて欲しい。当然把握している。そうでなきゃ危険過ぎるからな。仮にコロニーを知らずに戦った先がコロニーの隣であってみろ、巣から這い出てきた何十匹という魔物に囲まれて一発で死んじまう。カネに目の眩んだ新人はロクに調べもせずにそうやって死んじまうヤツも多い。まあ、それに関しちゃ実力を見誤った時点でオレらもなんも言えねーけどな。あはははー」


「あはははー。じゃ無いですよ。本当に。ヴィヴィアン様がいらっしゃらなかったらどうなっていた事か。考えただけでもゾッとします。」


戯けてはいるがこの冒険者チームは俺の思っていた以上に優秀だな。勿論俺はこいつら以外の冒険者を知らないし、戦闘能力的には俺より遥かに弱いだろうけど、それでも魔物に対する知識、感、チームワークなどは見倣うべきものがある。俺はこのチームの評価を上昇修正した。


「ありがとうございます。フルグレイン、あなたの話はとても参考になりました。情報のお礼と言ってはなんですが、そこの魔物はあなた方のチームに差し上げます。」


「え…?いや、そんな。ヴィヴィアンさん達もこの魔物の染料の素を採りに来たんだろ?なんでだ…?」

「そうですよ。私達はヴィヴィアン様に命を助けて貰いました。そのうえ魔物まで頂いてしまってはとても釣り合いません。」

「そうだッ!ヴィヴィアンお姉さま!それはいけません!!」


俺の言葉に三人がそれぞれ否定する。

そこはやはり冒険者なのだな。うまい話には必ず思惑と裏がある。経験を通してそれを知っているのだろう。

だから俺は此方の利益と思惑を話した。


「三人が不審に思うのも尤もです。この魔物は一匹でも酷く高価な素材ですからね。でも俺は純粋にその価値に見合う情報を貰ったと思ったから差し上げると言ったんですよ。しかしそれでは不審感を払拭する事は出来ない。ですからこうしましょう。魔物は差し上げます、がそうすると俺たちの取り分が無い。だから、この魔物の死骸はこれから行ってもらう仕事に対する報酬の前払いだと思って下さい。」


「前払い…ですか?」

ローデンが聞き返してきた。フルグレインは黙って真剣な表情で考え込んでいる。ラフィアは…まあいいか。メイと同じ様な表情をしているとだけ言っておく。


「そうです。仕事は簡単。俺をこの魔物のコロニーまで案内して欲しいんです。」


「なっ!それは…つまり…」

「つまりはヴィヴィアンさんがコロニーに乗り込んで行って魔物を一網打尽にするという事でいいのか?」

「そんなッ!!無茶だ!いくらヴィヴィアンお姉さまでも危険です!」


「その認識で問題ないです。報酬はそうですね、先の一匹と合わせて、コロニー内で屠った魔物の3分の一でどうでしょう?勿論、仕事内容は俺の案内だけです。あ、いえもう一つ。俺がコロニーに侵入している間のメイの護衛をお願いしたいと思います。」


「…わかった。引き受けよう」

「フルグレイン!大丈夫なんですかっ!?ヴィヴィアン様を疑う訳では無いですが、巣を突くような真似をしたら万が一という事もあり得ます!」

「そうだっ!それにヴィヴィアンお姉さま一人にそんな無茶をさせるだなんてッ!!おい!メイもなんとか言ってくれ!」


「…メイは。ヴィヴィさまを信じています。ヴィヴィさまがあの程度の魔物に遅れを取ることなどあり得ませんっ!」


メイの一言によってそれ以上なにかを言える者は居なかった。


その後、リーダーであるフルグレインの決定もあって、俺たちは魔物のコロニーへと向かって歩きだしたのだった。


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