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修行僧

結果的に俺は余裕を持って勝つことが出来た。

但し、それは結果だ。勢い良く魔物の前に飛び出し、男を庇ったまでは良いが、その先は恐怖から咄嗟に頭の上で腕を掲げるのが精一杯だった。

幾ら狼よりかは弱いという話があった所で、実際に村の人が戦って得た情報では無いし、風の噂の又聞き程度なのだろう。そんな情報を鵜呑みにする事は出来無い。なによりその魔物の風貌は本能的な恐怖を喚起させるに充分だった。


それは村での話通り深紅の外骨格に身を包んだ虫型の魔物だ。しかし狼での例に漏れず、虫と比べたら遥かに巨大だった。いや、狼は現実のものと比べても数倍程度だったが、此方は数十倍ではきかない程もデカい。その巨体に加え、見た目は俺の世界で言うところのバンデットウデムシに酷似していた。アレを真っ赤にして醜悪さと兇悪さとが全体積の七割程を占めている感じだ。その多腕や多脚からはウデムシの様なか細さは感じられず、ゴツゴツとした悍しい棘が山脈のように連なっている。


俺はその見た目から、圧倒的な質量を伴った苛烈な一撃が来る事を覚悟した。が、しかし一向にその攻撃がやっては来なかった。いや、余りにも軽くふわりと腕に触れたのでそれが攻撃だと一瞬気付かなかったのだ。


見た目は未だ恐ろしいが、実際的な脅威が薄れたとなると魔物に感じる恐怖もまた薄らいでいた。

振り下ろされたのであろう魔物の一撃を受けた左腕で逃げられない様にしっかり掴むと、魔物は酷く暴れ出した。攻撃を放った筈の自分が捕まっているという状況が理解出来ないのだろう。

俺は能力(スキル)切り裂きジャックジャック・ザ・リッパー》を使って魔物を倒そうかと考えた。しかし生身でこの魔物の攻撃を受けても全くの無傷なのだ。それならば能力(スキル)を使わずにこの肉体がどの程度の身体能力を秘めているのか試してみよう。そう考えて、先ずは一発。軽く右拳を握り魔物目掛けて振り放った。

ほんの軽いジャブのつもりで。


その後はご覧の有り様だ。まさかあれ程脆いとは思わなかった。余りの状況についボヤキを漏らした後、ぐるぐると思考が回転する。

そう言えば、ここにはメイ以外の人間が三人も居るんだった。余りにも圧倒的に勝ち過ぎてしまったな…先の三人の反応を見ても、普通の人間にとっては強大な魔物だったんだろう。どう言い訳をすれば良いのか…


俺が思考を捏ね繰り回していると、最後に追われて逃げてきた男が口を開いた。

「助けてくれてありがとう…本当に。アナタ方が居なかったらオレたちは全滅か、良くて一人2人が命からがら逃げられたかどうかだった。こうして三人無事に居らるれた事を神の導きとアナタ方に感謝したい。本当にありがとう!」

その言葉に続き、一番大柄な男も丁寧な言葉遣いで喋り出した。

「私からも御礼を言わせてください。フルグレインを、私達を助けてくださって本当にありがとうございました。失礼でなければ御二方の御名前をお聞きしても宜しいでしょうか?」


「いえ、偶々居合わせただけですから。それに俺たちの目的も魔物でしたから気にする必要はありません。俺はヴィヴィアン、隣に居るのがメイです。」


「…あっ!助けて貰ったのにコチラの名前も告げずに申し訳ない!オレはフルグレイン。一応このチームのリーダーをしてる。んで、隣のデカいバカ真面目な男がローデン。その横に居るガサツな男女がラフィアだ。まあ、クセはあるがみんな気のいいヤツだから気を悪くしないで貰えると有難いな。そんな感じでヨロシク!」


「そうですか。宜しくお願いします。」

どうやら悪感情は持たれていなさそうだ。それならばこの人達に聞ける事は出来るだけ聞いておきたいと思う。

さて、何から切り出そうかと思っていたらフルグレインと名乗った男に先手を取られた。


「それにしてもヴィヴィアンさんはとんでも無く強いんだな…これ程美しくて強い人に会うのは初めてだ。さっきの魔物を倒した一撃もなんと言う技なんだ?良かったら教えてくれないか。」


「…」

ヤバい。どうしよう。なんと答えるのが一番疑われないだろうか…いつも通り魔法使いで誤魔化すか?

でもそれはリスクが高く無いだろうか。この人達は冒険者だと名乗った。つまりは戦いに従事している人達なのだから自分でも魔法が使える可能性がある。仮に使えないとしても、冒険者仲間で使える者を知っている可能性は高いだろう。そうなると今俺が魔物を倒した魔法はなんだと尋ねられると確実にボロが出る。冒険者と言うからにはその道のプロなのだろう。ならば村人程度なら誤魔化せても目の前の冒険者はどうだろうか。余りにも分の悪い賭けに感じる。

そう考え、俺は真実でも、ウソでも無い答えを選択した。


「え…とアレは武術というものですよ。己の肉体を武器として戦う武闘家?みたいなもんです。」

俺の答えを聞いてフルグレインとローデンの表情がみるみる変わっていく。


「なん…だと…ヴィヴィアンさんはかの有名な修行僧(モンク)だと言うのか…」

「…驚きました。あの攻撃は何らかの肉体強化系の魔法を使用しているものかと思いましたが…。魔法を使える人でさえ珍しいのにこんな場所で修行僧(モンク)に、それも美しい女性の方に出逢うなど…本当に人生とは奇なものです…」


え…なにその反応…これはヤッてしまったんじゃ無いだろうか。胃がキリキリと痛み出し、心臓が早鐘を打つ。

村で魔法使いは珍しいという情報を仕入れていたお陰で魔法を使えるなんてポロっと言わずに済んで目立たないかと思っていたのに…この反応だと明らかに魔法使いより希少なんじゃないか…なんで拳で殴るだけの職業が魔法使いより珍しいものを見た様な反応なんだよ…


俺は一人納得がいかなかった。

以下後書きです。


遂にストック分が無くなってしまいました。読まれた方はお分かりになったかと思いますが、文字数が普段の半分程度になっております。

出来るだけ毎日更新していきたいと考えていますので、そうなると今までよりすこし少ない文章量になるかと思います。

勿論、書ける日は今まで通りの量で書こうと思っておりますので、これからも宜しくお願い致します。


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